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デビル・ジュエリー  作者: かかと
クレオール第2章
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第3話

クレオールは自室で少し考えていたが、マーサの言ったことは理解できるものの心に残ることはない。彼自身、家族というものを持っていないからというのもあるだろうが実際には「冒険者」、その職業のあこがれが強いからと思っている。もし、冒険者になるのであればダンジョンにも出入りすることになるだろう。その時のことを考えてクレオール人身、家族は出来るだけいないほうがいいと思った。


次の日、ソフィーとともに改めてギルドへ向かう。と簡単に言うがクレオールが住んでいる村は普通の村とは違う。見た目にあまり変わりはないが住んでいる人たちはほとんどが傭兵、もしくは前科のあるものやその親類など多岐に渡る。亡命者も実際に住んでおり、結局のところ清潔感があふれるスラム街と言っても過言ではない。そこで育っているのだから多少は口が悪くなったり、素行が悪くなるのは当然のことだと思っている。しかし、ここにすむほとんどの者が生活に満足している。それはひとえに町が安全だと言うことだ。レリクの名前は全世界に響きわたっている。


今回の面会で詳しい説明やメンバーの補充などもあることだろう。それよりも気になっているのはリオ・リチャードの争いが耳に入ってくる。ここ最近、ギルドに所属することになってからというもの近所の人からも少し聞いたが、本当に生臭いような親子関係で隣国まで戦争に参加しそうだということを聴いているらしい。だから、村ではモンスター討伐任務を多くする傾向になっている。そのお金でよい武具や防具を買い、戦争に参加するつもりだろう。リオの軍勢は少なく、傭兵を当てにすることは分かっている。劣勢ではあるが、リオ・リチャードが旗揚げをするならばここから近い都市にあたるアリストである可能性が高い。報奨狙いというところ、もしくは士官をするつもりだろうが、一門の人物でなければ登用されないだろうと言うのがみんなの見解である。


なんていう、世間話をソフィーとしながらギルドに向かう。相変わらずあまり良い建物ではないが、最近の情勢を見て任務受注の関係もあり、改装を視野に入れているらしい。とらぬ狸の皮算用みたくならなければよいが。そうはいっても、さすがにこのようなところには王国の要人を呼ぶことは出来ないだろう。実際には村に1つあればよいギルドあるだけでも十分にありがたいことなのだ。


「アリスト本部」と殴り書きで書かれた看板の下でテディーが待っているのが分かった。ソフィーは幾分緊張した面持ちだ。これからのことを考えると不安にもなるだろうことは分かってはいる。しかし、緊張しすぎではないかと思っている。


 テディーは俺たちの方を見て手をあげる。

「来たな。時間通りだ。だが、もう少し早く来るようにしろ。だいたい5分前には場所についておけ。冒険者にはそういうふうに時間を守らないやつも多いが、実際には守ったほうがよい。たとえばだが、ここに10分後に集合をかけたとする。それで来ないやつがいれば、その人に何らかのアクシデントが発生していると考えるからな。」


 クレオールはその話を聞いてなるほどと思った。ダンジョン内だと夜か昼かの区別が出来ず、自分たちの持っている時計が唯一の時を知る道具になる。それを考えるならテディーが言った方法をとるほうがはるかに合理的であるだろう。生死の分かれ目がそこできまることも十分にあり得る。


 さて、今の状況はというと待っている訳だ。

 10分ぐらい経っているから死んでいると考えてもいいのだろうか。いや、始めからそういった考え方はよくないだろう。もしかしたら、単純に寝坊かもしれないし。テディーは目を瞑ったまま、石に腰かけている。こんなことには慣れきっているのだろう。

 

 すると、遠くから何か声が聞こえた。

 俺は声をする方に目をやった。髪は金髪。目の色は黒でくぼんだ形をしている。身長は180くらいか。彼の年齢が分からないので判断しづらいところではあるが。細身の体にレザーアーマーを装着し、下はズボンではなくレギンスのようなものを着ている。甲冑などの装備をしていないところを見ると彼はさほど力が強くないのかもしれない。


「遅い!!!」


 テディーは怒る。鬼の形相だ。これでは近くの子供たちは逃げることだろう。「鬼の

テディー」という異名はここからきたのだろう。


「すみません。少し所用で遅れてしまいました。」


 彼は腰を折り、こちらにも頭を下げた。礼儀正しい人間であるなと思う。謝らないやつも多い傭兵のなかではかなり好印象のはずだ。


「まあ、いいさ。一応、エムスマスターから聞いている。だが、見逃すのは今回だけだお前は彼らよりも先輩だろう。もう少し、自覚を持たなくてはいけないな。」


 テディーはそう言葉を発し、俺たちに目線を向ける。


「これで全員だな。各自、自己紹介としようか。任務については自己紹介が終わった後に説明をする。だが、最近は少し情勢がよくないからな。少しばかりきつい任務になってしまうかもしれないが…、すまん、中断してしまったな。始めてくれ。」


 テディーは再度、石に腰をかけ直した。段取りはこっちで決めろということだろう。それもそうか。あくまでテディーは指南役に過ぎない。実質、3人で任務を受けると考えたほうがいい。俺はあまりしゃべる方でもないから間が持ちにくい。

どう話そうか考えていると遅れてきた金髪がしゃべり始める。


「遅れてきてすみませんでした。このなりですけど以前は傭兵をやっておりまして、その引継ぎに時間がかかってしまいました。私の名前はラスと言います。経験ではおそらくあなた方よりも上になりますね。しかし、モンスターと戦ったのは数えるくらいなので初心者として考えていただきたい。」


 ここで俺は傭兵と冒険者との間に差があると感じた。モンスターは結構出るものだと思っていたが、そうでもないのか?

続いて、ソフィーが話す。


「次は私ね。名前はソフィーよ。時間に関しては気にしていないわ。もちろん、ちゃんと理由がないとだめだけどね。隣にいる彼とは義弟になるわね。お互い、それなりに修業はしたけど、ラスみたいに傭兵になっていたわけでもない。だから全くの初心者ね。よろしく。」


さて、次は俺か。


「俺の名前はクレオール。一番若いけど、ソフィーと一緒に修業をしてきた。足を引っ張らないように頑張る。」



俺たちは互いに自己紹介を行った。ラスの素性は全く分からないが、彼が強いとはとても思えなかった。しかし、俺がそこまで強いわけではない。ラスは常に俺の方を笑顔で見ていたが、気にしないことにした。

 


テディーを含めた4人はダンジョンの目の前にいた。しかし、通常のダンジョンと異なることはすぐにわかった。普通、ダンジョンというのは普通の人ではわからないことが多く、トンネルのような空洞をしている。それがダンジョンの入り口のはずだ。入ってみたらダンジョンで一般人が犠牲がなることも少なくない。ギルドにはそういった情報も集約される。さすがにこの手の任務であれば国が手を出すには難しい案件になる。ダンジョンは冗長化しているものもあれば自然発生するものもある。

ただ、このダンジョンはおかしい。そもそも門がしっかりと作られているのが異常だ。

テディーは門を見て目を細めた。テディーを知らない人だと普段の顔が怖いから、より怖く感じてしまうだろう。テディー自身は思考を止めないようにしていた。そうでなければ、冷静な判断が瞬時にできなくなってしまう恐れがあるうえ、仲間を危険な状態に追い込んでしまう可能性もあるのだ。

テディーは口を開く。その声にはわずかな動揺が見える。


「見た通り、このダンジョンは異常だ。今回の任務は進化した可能性のあるモンスターの調査だった。俺の判断で申し訳ないが、お前たちが予想外の事態ですぐに動けるとは思わなかったから、殿は俺が勤め、お前たちには調査だけをさせるように考えていた。だが、今回は嫌な予感がしてならない。本来なら増援を呼ぶことが可能だが、今回ばかりはそれをすることが出来ない。」


クレオールがそのテディーの言葉に驚く。普通であれば、ギルドマスターとなれば増援を呼ぶことは可能なはず。そう考えていた。


「どうして、呼ぶことが出来ないので。」


同じ疑問を持ったようでラスが質問をする。


「俺がギルドマスターだからだ。」


確かにギルドマスターには間違いないが、だからと言って援助が受けなくなることはないはずだ。特に緊急時場合にはそれは適用外になる。


「みんな、不思議そうに見ているが、実際にはこの決定にはおかしい部分はない。個別で見ればおかしな部分があるだろうけどな。その理由は国外にある。」


国外では戦争の兆しが見える。それはアリストという新興国にある。アリストは普通の国のように見えるが実態は全く違う。以前はスラム街だったところをリオ・リチャードがまとめ上げ一から作り直した国だ。その上、彼はアウス帝国の国王の嫡男であったことはわかっている。他の国でもきな臭い話が出ており、一国の王はすでに派兵を決めている。それは家族のトラブルがあるとも噂されているが、戦争することには変わりはない。


「ギルドがいかなる政治の圧力に屈しないのは事実だが、影響を受けることはある。お前達みたいに全員が冒険者ではない。今では冒険者のほうが少ないぐらいだ。そんな状況で援助を求めるのは不可能に近い。だが、今回は特例だ。あまりにもおかしな部分があればすぐに撤退をする。」


通常の任務では途中放棄の場合には違約金が発生してしまう。もちろん、ギルドにも信頼があるため、あまりにも無謀な場合には任務を受けさせることはないが、想定以上の事態も考えられるため、実際には多く発生しているのも事実だ。ただし、発生した時点で死んでいる可能性があるため、ほとんど違約金は発生をしていない。

その答えにはラスが納得できなかったらしい。無理もない。さすがに今回のようなことはあまり起こらないはずだ。


「しかし、特例とはいえ今回の任務で違約金が発生することがないとはいいきれないのでは?仮にですが、強い魔物が出た場合などは対象になりそうな気もします。」


テディーは少し顔をしかめながらも頷く。


「ラスが言っていることも正しいな。だが、まだギルドの方針が出ていない以上は有事の際にはギルドマスターには強制的に徴兵がかかる。それを逆手にとることも十分にできる。そもそも今回はマスター長の許可が出ているからな。すぐに申請は受理される。今回は本当の意味で様子見だな。」


これでラスは納得したようだ。ただ、今回の任務には嫌な予感がするのは事実で少し雰囲気が暗い。それも初めてにしては相当な盛り上がりに欠ける。

仕方なく俺たちはダンジョンに入ること決めた。


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