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デビル・ジュエリー  作者: かかと
リオ・リチャード篇~第Ⅱ章~
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第17話

「なかなか良い動きをするな。」


リオは思わずつぶやいた。そもそも、王が先陣を切った時点で負けのような気がする。まあ、俺たちには俺たちの戦い方がある。しかし、敵ながら身を挺して隊長を守るとは…。俺が反対の立場だったら、とは思うが。

 

「あれで敵将が取れればいうことはなかったが、今の白旗を上げている状況で攻めるのはまずいだろう。」


バーナードが冷静に言う。然し、彼が身に着けているレザーアーマーに真っ赤に染まっていた。ただの軍師ではないことは聞いていたが、見てみると歪なものだ。

テミール将軍が軍馬を寄せてくる。


「王、少なくとも馬にぐらい乗っていただけませんと締りがないです。まあ、戦の中でそこまで気にしているのは私ぐらいかもしれませんが。」


リオはテミール将軍が言っていることを無視した。

確かに体は血で染まっており、王らしくないかもしれないが俺にとってはそんなものは関係ないのだ。


「さて、誰か来たようだ。あの様子ではおそらく、一騎打ちでもするのかな。」


ティルが不安そうな顔をしてこっちを見ている。


「心配するな。こっちの死者は。」

「おそらく、500は下らないかと。しかし、2000人近く相手は損害を追っています。」


遠くから声が聞こえる。


「リオ王、こちらの負けは濃厚である。ひいてはこの首を差し出す。その代り、追手を出すのを中止していただきたい。勝敗はもう決まっているのに無理に犠牲を出す必要はないはずだ。」


「ふむ、道理は通っている。しかし、こちらがどうするかは貴君に決めることは出来ないはずだな。」


エラムスの声に対して、バーナードは答える。


「まあ、待て。これで手打ちにしよう。それよりもアンテ軍の動きが気になるな。ロードス軍はもういい。」


テミール将軍も頷く。


「もうこれ以上戦ったとしても反撃にあうに違いない。ここはエラムスの首で納得すべきだ。」


だが、あちらの思い通りになってしまってはよくないだろう。


「王!!」

「リオ様!!」


家臣から声が聞こえた。

すぐにこの損害は補てんできない。そうするとロードス軍からこちらに寝返ってもらう必要がある。そう考えるなら、ここで多少の無理は必要になる。


俺は整列している兵を片手で合図した。それに合わせて俺の目の前に通路が出来る。


「よくここまで成長したな。」


リオは手を挙げて兵に答える。

その瞬間に爆発するような歓声が聞こえる。

彼らはリオの勝利を疑っていない。


「あなたが」


エラムスが驚いたように見ている。


「そうだな。俺がリオだ。どうした。意外か。」

「そうですな。少し意外でした。何を考えているのですかな。」

「はは。貴様が思っている通りだと思うぞ。ロードス王はいないのか。」


俺は思わず笑みがこぼれる。

この場にロードスがいないのはこちらにはわかっている。退路までに兵を割いていたのはそれを確認するためでもあった。


「そうか。分かっていたか。」


エラムスはそうつぶやいてしまった。この事実はすぐに伝わる。今後の影響を考えると不安で仕方ない。だが、エラムスには関係のないことだ。もうすぐ死ぬのだから。


「さて、貴様が抵抗しないのは分かっている。だが、先ほど言った条件は飲むことが出来ない。」

「なぜ。」

「当り前だろう。貴様の首をもらったところで俺たちが失った兵が戻ってくるわけではない。我らは侵略者を許しはしない。」


その声に合わせて俺らの兵が声を上げる。


「しかし、ここまでさせておいて全てに答えないわけにはいかないな。貴様が庇って倒れた副官の為にも。」

「というと。」

「俺たちが出した条件に合格した場合は無条件に撤退することを認めよう。もちろん、貴様も含めて。」


エラムスはここまで聞いて、嫌な予感がした。おそらくは…。


「だが、合格しなかった場合には貴様の身柄の拘束をさせてもらう。その後の撤退は認めるが、貴様が自害せずに賠償を払ってのみ外交的に開放することを求める。自害されたらこちらの旨みがなくなってしまうからな。」


これは非常にまずい。外交的にというと国同士の外交を求めるということになる。それは悪くない条件のように見えるが、13か国はアリストを国として認めていない。もし、外交するとどうなるか。各国の戦争が目に見えている。


「いろいろな考えが浮かんでいるようだな。エラムス“総帥”。上に行けば行くほどこの状況では難しいな。だからといって俺も一国を預かっている王だ。条件は簡単だ。俺を倒せ。今、一番に人気がある首だぞ。面白いと思わないか。ここで打ち取らなければこの後とる機会があるかな。」


確かにリオ王が言っているのは本当だ。しかし、俺がリオ王に敵うかはわからない。

受ける以外には選択肢はないのだが。



リオはエラムスの顔の変化を楽しんでいた。額には汗がにじんでいる。彼の立場になれば普通か。しかし、ここで引くわけにもいかない。


「分かった。引き受けよう。」

「いい返事だ。」


2つの全員がこちらを見るように固まっていた。


2人の間に風が通る。

エラムスは初めて兵として出陣した時のことを思い出していた。あの時もこんな感じだった。確かにたくさんの兵がおり、戦っている。しかし、一人の兵士として戦っているときには軍隊とは別に自分だけが戦っているような息吹を感じていた。

これが一騎打ちだからかはわからないが。

エラムスはリオに対してまっすぐと切っ先を向けていた。


リオは反対に違う感情を思っていた。

この男は強い。今は純粋にそう思っている。ここにいる胆力、そして今の集中力。おそらく周りなどは見えていない。俺を倒す。そのためだけに立っていることが分かった。


不意にエラムスの姿が消える。

リオはすぐに剣を両手に持ち替え、左足を後ろに引き剣を下げた。

エラムスの姿が目に映り、その瞬間に剣を右下から掬い上げる。


しかし、その剣戟は空を切る。次の瞬間にはエラムスが右から剣を伸ばしてくる。


これをリオは剣で受けるため、剣を止め、軌跡を変え右に変えるため、左足を前に踏み込む。


ギィィン


剣から火花が散る。

リオはこの剣を受けてエラムスの剣を飛ばすつもりだったが、エラムスの力もかなり強い。両者ともに態勢を変えるために後ろに飛んで、距離を取る。


エラムスはその間に簡単な詠唱を行い、術を行使する。


エラムスの左手からは炎の球が数個飛来する。

リオは二つを剣で両方切り裂く。剣には白い光に帯びている。

もう一つはリオ自身の手で掴み、炎を消してしまう。


エラムスはリオの奇行ともいえる離れ業に驚嘆した。

術には無効化を完全にすることは出来ない。あくまで弱点のものであれば相殺することが出来る。それが唯一、術を防ぐ手段なのだが…。

噂は本当らしい。彼は想像以上に強く、突然変異ともいえる術の無効化をすることが出来る技を身に着けている。


リオはその動揺を隙とみてすぐに距離を詰める。

白い光を剣に込めながら。


エラムスは直観的に身を後ろに投げる。

白く輝きを放つ剣が服の腹部に触れた。普段エラムスは反応が遅いのを自覚しているため、服は常に軽装となっている。それが何度か危ない目にはあっているが、今回の場合などには有効だ。


リオは力を込めて剣を“振り切った”。

剣の光が半月の形でエラムスに飛んでいく。


エラムスはその半月の光が術の行使のものだと確信し、土の壁を瞬間的に創る。

しかし、その壁を半月の刃が両断し、速度もそのままで向かってくる。

エラムスはその斬撃から半身を翻してよける。しかし、よけきれず肩の上から血が噴き出る。不思議と痛みは感じない。アドレナリンが分泌しているのだろうか。

しかし、彼はまだ本気ではない。遠距離からの攻撃を増やさなくては…。あの白い光の剣は相当な切れ味のはず。だとすると接近戦は無理だ。


エラムスがそう考えていると、後ろから声が聞こえる。


「戦闘中に考え事か。暢気なものだ。」


エラムスは咄嗟に雷の術を行使する。それをリオはめんどうくさいように左手で振り払う。

エラムスは岩を宙に浮かせ、砕く。


「ほう。そんなことも術は出来るのか。」


感心したようにリオは呟く。

しかし、訓練を受けているリオにとってそれは簡単にかわすことが出来る。その砕いた岩がどんなに大きくても。


「随分と余裕を見せているな。リオ王、あなたには術は全く聞かないらしいな。しかし、これはよけきれなくては怪我もするだろう。」


リオはエラムスを見て頷く。


「もちろんだ。完璧な人間はこの世には存在しない。」


リオは迫りゆく石を体捌きで避けていく。


エラムスは次の準備をしていた。かなりの術エネルギーを使ってしまうが、彼にダメージを与えるにはこれしかないだろう。これが効かなかったら、俺の負けだろうな。


リオはすぐに石をよけきった。


「エラムス、次の術で最後か、エネルギーが体中から感じられるぞ。」

「そうですな。」

「勘違いしてほしくないのだが、エラムスに死んでほしいわけではないのだよ。」


エラムスはその言葉に反応した。


「確かに馬鹿と思われるだろう。だが、ロードス王国に仕えるものとして捕虜になるわけにはいかんのだ。」


彼からエネルギーが胡散する。


リオは思わず目を細くした。少なくとも、術エネルギーを…

下を見る。その眼には光がともっていた。


半径50メートルになろうかという火柱が起こる。

咄嗟に兵たちは後ろに下がってしまう。100メートルのところから眺めてはいたが、こちらにも来るような気がしたのだ。


「はあ、はあ、これで何とか倒せたか。」


全力ではあったが、リオ王は強いこの程度で死ぬことはないだろう。しかし、気絶くらいはするはずだ。火柱はまだ続いている。


だが、その考えは甘かった。火柱が不意に爆発する。その衝撃波から逃げることは出来ず、後ろに飛ばされた。


一体、どうなった。


火柱の起こった場所からは煙が舞い分からない。剣がエラムスの首に突き付けられた。


「お前の負けだ。」


リオはエラムスに宣言した。


リオ軍からは歓声が上がった。ここにヘッセの戦いはリオ軍の勝利で幕を閉じた。



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