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デビル・ジュエリー  作者: かかと
リオ・リチャード篇~第Ⅱ章~
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第12話

「この戦は負けられん。」



フォンテーヌに首都を構えるロードス王国。その国王である。ロードスが声を上げた。彼は世襲に従い、この王国を継いだ2代目の君主となるが彼は先代よりも国を豊かにした。今までは戦争での戦果を立て、この国を大きくしていたが彼は経済の面に力を入れた。

まず、商人の流動化を促した。これは専売制をやめさせると同時に彼は関税の引き下げを行った。その関税率は10%とどの国よりも破格に安くしている。他の国では30%で国内の技術力の保持と鍛冶職人など専門性の高い人たちが他の国へ流れないようにするための措置だった。先代はこの流動化を防ぐまではよかったのだが、この国では他の国に技術では劣っていると認めざるをえないぐらい品質に差があった。そこをロードスは見直し、新たな技術が入ったほうが利益になると考えたのだ。

その試みの結果、国には商人が集まり品質の良いものが集まるようになり結果的に関税を下げても税収がよくなったのだ。これにより、ロードスは商王と呼ばれるようになった。


「しかし、この戦は我が国にメリットがあるのですか。国王、今回の遠征は意味がないものだと思います。今一度、考え直していただけませんか。」



その言葉を言ったのは総帥のエラムスという男だ。彼はロードスが国王になる前からの友人であり、勇猛果敢な武将として各国には知れ渡っている。しかし、戦争ではないときには戦争を国益になるかどうかの見極めを常にしているという変わった軍人であった。


「どうしてそう思うかは聞かん。しかし、この戦いは大きな意味がある。俺にとってもだが、今、勢いを増すアリストを打ち取ればアリストの権益、もしくはアウス帝国からのさらなる国境の見直しも検討されるかもしれん。それはメリットがあるとは思わないのか。」


ロードスは挑戦的な目で彼を見た。彼のほうが幾分年上のはずだが若干彼の中に狼狽している様子が感じ取れた。


その様子を必死に隠しながら彼は進言を続ける。

円卓に座っている将軍たちは成り行きを静かに見守っている。

ロードス王は軍事のことに口出しをしたことは今までに一度もなかったのだ。彼は勝つか負けるかに焦点を当て、その作戦を練っている節があった。

だからこそ、将軍たちは王が言った「リオ王を生け捕りにしろ」などという具体的な命令には従ったことがない。その上、彼は自ら軍を率いるという大胆なことも言っているので、軍部の間ではかなりの噂が立っている。

アウス帝国やアリストではすぐに分かることだし、情報を集めていたら真実は簡単に手に入るのだが、今は戦時中につき、真実を信じられないのだ。


エラムスは必死に説得を試みる。


「国王、僭越ながらやはりこの作戦には無理があると思われます。リオ王はかつてのアウス王を彷彿させるような力の持ち主であるとの情報が入っています。その力はすでに各国に知られているほど武勇です。そのような方を生け捕りにするとは現実的に不可能かと思われます。」


ロードスはある言葉に少し腹が立ったのだが、エラムスはロードスの椅子の隣にきて頭を下げた状態で進言をしているため、彼の表情に気づくことはない。

さらにエラムスは続ける。


「リオ王も注意すべきですが、レオン、ティル、テミールなど特筆するべき武将もおります。此度はバーナードも加わったことにより、彼らは一層強くなっていると考えるべきです。今、叩くのではなくもう少し期を見て叩くのがよろしいかと思います。」


円卓に座っている将軍たちはロードスの表情を見ながら背中に汗がにじみ出るのを感じた。彼らはロードスがどんな性格かは知っている。彼には武勇がないが、将軍たちにはない知性を持っていると考えている。特に人事の面で彼は力を発揮していた。それは悪いほうでという意味だが。

次の標的には誰になるのか、彼らには何となくわかっていた。しかし、この状況で総帥になるにはリスクが大きい。戦争に勝てなかった場合のことを考えると今やるのは得策ではないと思っていた。彼らもまた打算的になっていた。

彼らは黙って、そのやり取りを見守るしかなかった。





「ようやく皆が集まったな。これが2回目にして戦争の会議とは実に好ましい。」


いかにも好ましくないような言い方でリオは言った。こんな会議正直なところ、やりたくはないと思っている。それよりも先に国の事業を進めたいというのが本音だ。しかも、勝手に攻めてきて、土地を侵略する奴らからは戦争に勝ったとしても、その見返りがあるとは到底思えない。

レオンは眉間に皺を寄せた。


「そう言うな。誰だってこんな戦争はやりたくはないさ。リオ。しかし、この戦争は我が国の軍事力の誇示にはもってこいの話ではないかと思う。もちろん、身内がここに攻めてくことの愚かさを考えれば正直、やりたくない気持ちも分からなくはない。」


これにはバーナードが意見を言う。


「王、そして宰相よ。この度の席は戦争の話をしに来たのではないと思うが。それとも、俺の勘違いだっただろうか。」


タミルがこの発言に焦りながら言う。


「おい、バーナード、王の前だぞ。もう少し丁寧な言い方は出来ないのか。」


資料を見ていたテミール将軍も少し顔を上げ、王に進言する。


「リオ王、バーナードはこういう言い方ですが、」



俺は手を挙げた。


「言われなくても分かっている。それに資料を見る限りでは奇襲のほかにこちらが有利になるような戦略はないだろう。その点についてはバーナードの意見は説得力がある。」


レオンが続けた。


「間諜の情報によると今のところ、相手側は足並みが揃っていない。しかも、国内でも出兵の合議で荒れているとも聞いた。相手の士気を挫くのが策としては上策。」


バーナードがレオンの説明を補てんした。


「足並みが揃わなくともロードス軍は強い。そこを何とか崩すこと出来れば勝機が見える。この際、アンテ軍は最後に回してもよい。ともかく、ロードス軍に士気を上げさせないようにするのがよい。」


ルヴェルが言う。


「今回の戦いではかなりの金額が動くことになる。タミルは事前に手を打ってくれたけど、正直こちらの軍が不利なのは否めない。しかも、うちの練度が低いせいで脱走する兆しも見えているのが現状。」



リオは纏めた。


「だからこそ、今回の初戦は負けたら、戦わずして負けるということもあるということだな。では、この資料の通りに進めるのはよくないだろう。今回は空城の計なんてものを使う必要もない。そうだな。バーナード。」


バーナードは頭を下げた。


「御意。もちろん、策は用います。しかし、今回は少し変わった趣向になるかもしれません。我々だけの奇策で行きます。」



バーナード以外の家臣はその作戦に異を唱えたが、リオはそれを採択した。


彼らは13か国連合にあらがうべく、会議を進めた。




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