第1話
久々の投稿です。
円卓に各国の首脳が並ぶ。
本来なら各国の総司令は強制的に召集されるが、今は有事のため、そこをとがめることはない。
今回の議題は時代に合わない、そして各国を揺るがすであろうある国の議題である。
アリスト
この国の発足そのものが今回の議題だが、会議は荒れに荒れていた。ここ最近では各国が協定を結んでいることもあり、比較的情勢は安定している。アウス帝国を除いては…。
議長が苦虫を噛んだ顔で言う。
「アウスとあろうものが、どうしてこのような事態を招いたのだ?彼は今では賢王と言われ、昔では剣王と言われた。2つの渾名を持っている人はそうはいまい。彼は情に厚いところはあるが、そこまで甘い人間ではあるまい。少なくとも自分の子よりは国政を是とする考え方のはずだ。」
各国の王は頷く。
少し前まではイクト、メジス、アクト帝国の3つに分かれていたが、その均衡は破られ、今では各国豪族が独立し、その国同士が牽制している状態が続いている。今ではイジス大陸と呼ばれる大きな領土に14の国がある。筆頭はもちろん、アウスが率いるアウス王国。他の13か国は拮抗しており、反アウス王国同盟を結成したことで双方のバランスがうまく取れていた。しかし、新たに15番目となるアリストが出来た。今は、大陸の南でも最南端に位置しており、国土はそれほど大きくはないが、問題なのはアウス国王の嫡男というところだ。アウス国王よりも聡明でまた力も申し分なく部下の信頼も厚い。貧民街と言われていたスラムの街の治安の強化や自警団を使うことによって、数々の戦功をあげている。側近には貴族の中でも有力なナイネル家、リヴァイア家また、元アウス国王将軍のテミール将軍が新たに加わった。自警団も将軍の軍勢、またレミール将軍の敗残兵も加わったことで軍事規模では10000人は軽く超えるだろうと思われている。
これを加味したうえで、13か国は危機感を募らせていた。
「所詮は人の子であったということだろうか。しかしながら、今回の会議では秘密裡ではあったが、アウス王国にも招待をしている。これに簡単に応じるとは思えなかったが、今回の件に関してはあちらにも有利な点があったはずだが…。最近では姿が見た方が少ない。噂では病で臥せっていると聞いてはいたがこの会議に参加できないほど弱っているとは思わなかった。」
議長がそういった。それに合わせて各国の首脳がそれぞれ頷く。
今回の件はアウス王国で起きた革命といったほうが正しい。本来ならアウス帝国国内で起きたことは静観する。しかし、善後策を13か国で話し合う必要がでてきた。それはアウス王自身の病気。そして今ではアウス王国も一枚岩ではないという噂が真実味を帯びてくる。噂では宰相などの側近が国を食い物にしているということだ。テミール将軍のような有能な人間が離れているのもその大きな要因だろう。
「噂通りといったところかな。アウス王は正常な判断ができにくいと考えたほうが妥当だろう。」
ロードス王国、国王ロードスが言った。
彼はリチャードと異母兄弟にあたる。彼には特別な感情を抱いているとしか思えなかった。顔の眉間に皺を寄せており、他の国の王とは違った雰囲気がある。アウス王の元養子であることからも出で立ちには少しばかり問題が浮上していた。しかし、今ではしっかりと国の治安の維持、また経済状況は安定している。感情を抑えきれていないところはまだ、幼いとも言える。
「ロードス王、今は会議の場。リオに隔意を持っているのは理解できるが、少しは場の空気に合わせることも必要だ。それにアリストは強い国となった。我々が協力しなくては瞬く間に敗戦を迎えるかもしれぬ。それぐらい勢いが強い。真っ向からの戦は下策だぞ。」
議長は珍しく厳しい口調で言った。
リオ王は素質で言えば、アウス王を超える。ただ妙な術を使うと言う変な噂もあるが。今回の会議ではどういった制裁や今後の同盟国での対応の仕方の検討に入るつもりである。そこに私情を挟むのはあまり好ましくない。ましては元養子と嫡男。こじれないわけがない構図である。アウス帝国が揺れている今、同盟の不和は起こしたくはない。それこそ、戦の世の中に戻ってしまうのが目に見えて分かる。
「すまない。議長。続けてくれ。」
ロードスは素直に謝った。そこが若さであり、また表情に出してしまうところもまだ蒼いというべきか。議長は何かしらの流れを感じずにはいられなかった。
だが、無情にも会議はなお黒い影落としながらも続いていく。
「13か国会談が行われている。」
初めて行われるアリストの議会はここから始まった。議会と言っても部屋はせいぜい15畳ぐらい。広間といったほうが似合いそうな部屋だ。場所はもともと貴族が使っていた古い物件を紛争の際にたまたま入手することができたというだけである。まったくもって自慢にもならない話である。それだけ、国として土台がしっかりとしていないことがうかがえる。
「そもそも初めての議会がこんな形で行われるとは思わなかったわ。」
ルヴェルがそう言う。1年ばかりの月日を経て、ルヴェルは一層可憐さが目立つようになった。顔は幼いが、頭の回転は速く次期当主としても才能を認められている。その彼女が険しい顔を隠すことなく参加している。髪は紫色に染まっており、ナイネル家の血筋を引いていることがわかる。
アリストが国として発足して以降、彼らは貴族のご機嫌取りにいくのではなく、本格的な取り壊しを行った。犯罪しているものには牢獄に入ることとなったが、その粛清が少しばかり強すぎたせいか貴族は委縮している。悪いことではないのだが、そのためか経済の停滞が続いているのが気になることだ。今ではこうして議会を開けるほどにまで国として発達した。
しかし、ここ最近治安が回復してきたとはいえ、実際には普通の町よりも治安が悪い。あくまで貧民街は大陸中でも例を見ないほど特殊な街であるのだ。
レオンが重い口を開く。レオンも長い銀髪をかき分けながら言う。リヴァイア家は実質上、分離している状態となっている。レオンのほうが分家という形に見られているようだが、生後間もない名ばかりの当主では不安視している人も多い。
「予想は十分にできたことだが、ここまで早くに13か国の国王が会談を開くとは想定外だ。これにはアウス王のこれまでの武功や戦功、そして今ある治世が関係しているだろう。なかなか侮ることは出来ない。さすがはリオの父だな。」
レオンは少しばかりリオのほうを向いていたが、リオの表情は依然として変わることはない。彼は赤い短髪にしていた。昔は長い髪だったが、戦闘の際に邪魔になるため切ってしまった。その赤い髪とリチャード家特有の黄色の目がこちらを見る。そこに動揺している感じは受けることができなかった。今までにはたくさんの顔を持っていたはずだが、それも落としてきてしまったのだろうか。少し、レオンは不安になる。前の表情や感情こそがリオの特性であり、支持された理由でもあったからだ。確かに、王になるためには冷徹になる決断も必要になってくるが、今はその時ではない。
「アウス王は昔から聡明であったわけではない。段階を踏んで彼は今の地位まで上り詰めたのだ。だが、今回の13か国会談は妙だ。少なくともこのアリストへの経済制裁を行うとなれば、隣国のアウス帝国の支持を仰ぐ必要がある。それを帝国が拒否したのか、もしくは13か国が何かしらの思惑があるのかはっきりさせる必要がある。」
テミール将軍は腕を組みながら言った。彼はアウスに長く仕えていたので内部事情には詳しい。アウス王が危篤かもしれないという情報も実はテミールが伝えたものだった。彼は術にも精通しており、ルヴェルなどは水系統を中心に指導を受けている。レオンは内政のことで忙しく、リオは剣術の稽古を行っているが、技量がリオのほうが上であるためテミールのほうが指導を受ける形になっている。
ここでリオが口を開く。
「相手がどのように攻撃や制裁を加えるにしても我が国は大打撃を被ることになる。俺たちも13か国の王みたく一枚岩とは言えん。それに10000を超える軍勢を要する割にはテミール将軍、レオン、ルヴェル、ティル、そして俺の5人が国を動かしているとも言える。しかし、テミール将軍以外は年が若いうえに実践経験に乏しい。それと軍略、指揮を執るにはそれぞれの資質があるかもしれないが、残念ながら俺たちには政治力、また外交力に優れた人材がいないのが厳しい。今は、領土よりも国を盤石にするほうが先だ。だからこそ、外交を任せることができる人材がほしいところだ。また、内政に関しても有事の際に任せることができるからなお一層よい。」
リオの言葉に全員が頷く。
レオンは実際に内政を行っていたのでこの言葉が心に響く。
内政は経済、国際情勢、国内、また今では貴族の力をかんがみて動かなくてはならず、経験していないレオンには大きな負担がかかっている。それに、今の内政が正しいかどうかも判断できないほどに知識不足であると感じている。
「リオ様の言うとおりだね。ここには学者とか先生と呼べるような人がいないし…。でも、少し変わった人がいるって噂を聞いた。」
ティルが今回の議会の要である発言をした。ティルには軍の統率には一目置かれている。しかし、それ以外にはあまり秀でた部分は見られなかったが、情報収集能力については誰よりも優れていた。一年ほどで身長は伸びていないが体つきが太くなったように思える。髪は栗色でリオと同じく短髪にしている。彼は純粋にリオを真似ているようだ。
「ふむ、ティル、それは本当か。」
テミール将軍が興味を惹かれたようだ。少なくとも、今のアウス帝国にそんな能力がある人材がいるとは思えなかったのだろう。表情からも少し戸惑いのようなもしくは期待をしているのかどちらとも取れる表情をしている。
ティルはそんなことは微塵も感じることなく続けた。
「うん。今回はテミール将軍みたいに確固たる証拠があるわけではないけど。でも、帝国に離反して逃げてきた人みたいだし、巷では先生とも呼ばれているらしいよ。それにある意味学術者で術の研究に関してはかなりすごいとの情報も聞いた。」
すごいというのはティルが言っているのであって、普通の人にはどうすごいのかはわかるはずだ。術が使えるものと使えないものが区別されてくる。リオにはわかりにくい話であると考えられる。テミール将軍は主君であるリオの表情に何かを感じたのか慎重に言葉を選びながら発言をするようにする。しかし、相手がティルなのでそれが伝わるのかと言われれば難しいだろう。
「確かに少し前に能力があるものがいるとも聞いた。これはあたりかもしれん。」
「だが、その人物をよく見なくては。今の国の状態を見て加担してくれるのかも重要だが、信用できるかどうかにかかってくる。学者とも言われているのであれば他の国の財政や政治体制についても詳しいに違いない。」
テミール将軍とレオンが顔を寄せ合い議論をしている。人事に関していえばリオが実質的に最高責任者ではあるのだが、まず、判断するのはこの2人である。内政に関してはレオンの意見が反映されることだろう。しかし、宰相として任命を可能性がある以上、将軍の意見を参考にしたいというのも一理ある。ある程度軍の統制を行うことが出来なければ、対処できない案件も出てくるからだ。
ルヴェルが地図を広げながら言った。
「そのティルが言っている町はおそらく、郊外の町だと思うわ。リオ、ここは犯罪者、地域から隔離されたもの、そして現状に満足できない者たちが独自に切り開いた街。タキーという町よ、リオ。おそらく、ここにはレリクも住んでいたとも言われるいわくつきの街。」
リオは彼らが出している情報を冷静に分析していた。今必要なのは政治力を持った人間、そして自分の右腕になりうる護衛兼副官。後者は難しいにしても、政治力を持った人間は今すぐにでも必要だ。今回の情報では確かに心もとないが自分が気になった部分も多くある。
「タキーの街には圧倒的にアリストに移住して移り住んだものがほとんど。時の権力者、犯罪者も多くいる。中でも多いのは傭兵、また冒険者といわれる人たちだ。ある意味ではここの国は海にも近く、山もあり、食文化では進んだ国であるといえる。そして、貧民街がある影響で部外者をそこまで敵視しないといった特性も持っている。一時、話題になったレリクもその一人。少なくとも一回はタキーに行ってみたいと思う。」
リオは顔を紅潮させていた。
それだけ、行きたいという気持ちの表れだろう。
レオンはその意見には賛成できるが安心できない部分もあった。
それにはアクアの存在が大きい。タキーの出身であるとも言われているが、実際には今も生死不明のまま指名手配をされている。死体でも発見されれば指名手配も解除される。ただ、レリクとは違い、危険な思想を持っているためギルドでも危険視されている。それこそ、いまだにアクアの名前を聞いただけで気分を悪くする人もいる。
テミール将軍は主君の表情を見て腹をくくったようだ。だが、レオンは慎重に動くべきではないかと思ってはいた。
「護衛の人数を考えなくてはなりません。リオ王。今までは多少、強引な行動もできたでしょうが、今では1国の王です。あなたの身はいつも狙われていると仮定して行動したほうがよろしいかと思います。」
将軍はあえて意見を言った。それだけでは足りない。レオンは貧民街で危険な場所を見てきた。闇討ちが一番に警戒しなくてはならない。どこの国の者が潜伏しているかわからない。
レオンもリオの発言に焦る将軍を見て、賛成の意を伝える。
「そうだ。将軍の言う通り、今までとは重みが違うはずだ。もう少し慎重に行動しろ。しかもタキーでは現在も事件が多発しているとの陳情が住民から来ている。一度、治安部隊を…」
リオが怒気を含んだ声で言った。
「それでタキーの街がよくなるとは思えん。あそこは癖のあるものが多い。その中で治安部隊を派遣したところでまとまるものもまとまらないだろう。少なくともティルの話ではタキー独自の自警団があるようだ。俺たちが住んでいた貧民街と共通する点も多い。俺が直に行くのがよいかと思う。護衛はレオンと将軍の2人で何とかしてもらいたい。留守にはルヴェルとティルに任せる。シーリー、ミランダが我が国でギルドに従事しているのが、ここにきて堪える。」
シーリーとミランダは本来、ギルドの構成員だったため、前回の革命の折に強い指摘を受けることになった。今ではギルドに所属している。
「何か得ることがあればそれで良しとしよう。護衛は将軍と私で。ルヴェルとティルは留守を頼む。これでいいかな。リオ。」
リオは満足そうに頷いた。
これから、少しずつですが、書いていきます。ラストまではかなりありますが、読んでいただけたら幸いです。