リオ・リチャード第28話
「さあ、やるぞ。」
オオオオオ
そういった部隊は全員がスコップを持っている。
作戦には必要とはいえ、剣や弓のほかに道具を持っていくのは面倒だ。
「まさか、術を使わずにとは…、なかなか無茶を言う。」
「そうはいっても、術を行使してしまえば後が残る。」
術の行使は確かに簡単だが、それ以上に相手にわかってしまうというリスクが伴う。
それは確実に残っている。それは跡、とかいうものではなく本能的にわかってしまうのだ。
「ああ、それはわかっているが、せいぜいレミールの到着を遅らせたとしても1日だぞ。」
実は別働隊としてルヴェル、シーリーを派遣している。実際には霧を作り出す作業をしているだけだが…。しかし、これは確実に術として認識されるために危険があるが、相手も慎重にならざるを得ないのだ。
タミルがしみじみといった。
「すごく大変な仕事を楽にこなしているような人もいますがね。」
僕たちはある男を見た。
王となる人とは思わないほど、泥まみれになりながら穴を掘っていた。
レオンは言った。
「ま、まあ、彼は特別だから。」
そう言っているそばから、どんどん穴が深くなり、掘った土の山が大きくなる。
「王にはふさわしくないかもな。」
テミール将軍は言った。
「さて、俺たちはここで作業を止めなくてはいけないな。」
「そうですね。」
作戦を練り直さなくてはいけない可能性もある。
「それは別働隊の成功にかかっているとは思うがな。しかし、俺たちが状況を判断できなくては兵がうろたえることになる。」
レオンはリオを呼ぶことにした。
「リオー、いくぞ。作戦についての最終打ち合わせがある。」
「わかったーーーー。」
大きな穴に入っているリオが言った。
それに同調して、反対の声が上がる。
リオの作業のスピードを見れば、一目瞭然だが…。
「まあ、そんなに怒らないでよ。別に遊びに行くわけではないのだからさ~。それに本来は君たちの仕事だよ?」
そういうと彼は各地に掘られている穴を簡単に飛び越えながら、こっちに来る。
「ありえないほどの身体能力だな。」
テミール将軍が言った。
レオンもあいまいに頷きながら、テントの中に入って行った。