リオ・リチャード第19話
くそ、ティルめ。
「まあ、そう怒らないであげてよ。今に始まったことではないでしょ。」
ルヴェルがティルをかばう。
「しかし、今は状況が良くない。あとたった一日だぞ。それが待てないのか。」
「そういう問題ではないだろう。リオ王が危ないのであれば、それを助けるのが臣下の役目。彼は悪くないと思うがね。」
レオンは頭を抱えた。
確かに二人が言っていることは正しい。
しかし、それが状況によってはおかしい時もある。
いつも正論が正しいということは絶対にないのだ。
「さて、話を戻す。今、4000人の武器、兵糧が準備できた。これからの作戦は彼らを迅速に回収し、城を奪還すること。それが第一優先だ。」
タミルはレオンの表情を無視していった。
「確かにそれが先決だと思う。しかし、城をたとえ奪還できたとしても籠城はできないわ。確実に市街戦になる。そうすれば多くの一般市民が犠牲になる。」
しかし、現状ではあまり打つ手がない。
今回の作戦では留守部隊が1000人しかいない。少なくとも10000人は必要だと思われる。
その場合、撃退ではなく脱出という作戦になる。
「だが、彼らにはミランダ、シーリーそしてティルが先行している。確かに戦力としては不足しているが脱出することは造作ないはずだ。」
タミルが続けて言った。
「しかし、彼らは脱出してはいない。脱出していれば、我々の偵察の目に入っているはずだ。」
レオンが不思議に思っていることはそこだった。
彼らには脱出できるだけの能力がある。
それなのに彼らは脱出しようとはしない。
確かに脱出するためにはそれなりのリスクがあるのは当然だ。
「レオンの言うとおりだわ。私たちの部隊もそこまで無能ではないだろうし、今はタミルさんの部隊も援護してくれている。」
さて、どうしたものか…。
コンコン
「失礼します。」
入ってきたのは若い兵だ。
おそらくリオの部隊のものだろう。
経験を積んでない分、額には汗がにじんでいる。
「出陣の準備が整いました。あと、タミル様宛に書状が届いています。」
「「「?」」」
この時期に書状とは…?
「すまない。受け取ろう。」
タミルはその書状を開くと表情が一変した。
「なるほど、だから城下町の人間を逃がしていたのか…。」
一人ただ納得している。
レオンとルヴェルはわからない。
「テミール将軍は城を戦場にするらしい。」
なかなか前に進みません…