リオ・リチャード第11話
男は去って行った。
「あいつが俺の名を語るのは好かない。」
「では、あなたが有名なテミール将軍で?」
「ああ、有名かどうかは分からないがね。」
「貧民街でも有名でしたよ。わざわざ援助したりしてくださったとか…。」
貧民街では統治者がいないためにどうしても公共的な機関を作る時や有事の際はお金に余裕のある人が中心となって会合を開く。その日の食事もままならない人もいる中で、資金を工面するのは大変だった。
「しかし、どうしてあんな街を攻めようとするのか全く分からない。大した資源があるわけではないし、金ばっかりかかる街のような感じだ。おそらく復興費用なんてものは出ないだろうから、あの街は廃墟となってしまう。」
ここで身分を明かさなくてはならないだろう。
彼は戦争が必ずしも好きではないらしい。しかし、いざというときには自分の中にある正義を貫く信念を持っているとの情報を得ている。
彼は状況判断能力に優れており戦場では必ず一定の戦果をあげていた。
年は32歳。
僕たちにはない経験を豊富に持っているはずだ。
彼が協力してくれるかは未知数だが、ともかく話だけでも聞いてもらえば、今回だけでも協力してくれるかもしれない。
「ところで君はどうして、ここに?あまりこの部屋は使われないようになっているはずだが…。」
「それはどういうことですか?」
「俺には鎖が繋がれている。」
そう言って彼は鎖を鳴らした。
「これには特殊な素材が使われていてね。我々のような強力な術者はこの鎖で術を使えなくする。」
技術的には不可能ではないはずだが、そんな話は聞いたことがない。
「驚いた顔をするのも無理もない。この技術は最近、作られたものだ。昔の技術の応用だとは聞いているが…。」
「そうですか、しかし、僕には不毛なものです。」
「はい?」
僕はこれまでの経緯を話し始めた。