表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デビル・ジュエリー  作者: かかと
赤眼のレリク篇
13/194

赤眼のレリク 第3話

いかにも仙人がすみそうな不思議な家だ。今時、木だけを使った木造の家は珍しい。術が使われるようになって家の構造もかなり変化した。最近は石を使って立てられる家が多い。理由は災害から身を守れるからだとか。洪水からはどうやってとも思うが、災害は急に起こるものだから完全に防ぐことはできないように思う。一部の富裕層の人たちは宝石を使っていろいろと機能をつけている。あまりよい趣味といえないものもあるが…。構造はあまり詳しくないが、昔とは違いずいぶんと長い間住めるようになった。発明された当時、感動されたに違いない。今では普通になってしまっているが…。


城などはちゃんと石で造られている。そこが要塞になるようにうまく構造を考えている。宝石なども無駄に使わずに守ることだけに特化したものになっている。城に潜入する場合や城で戦闘する場合には城内部の見取り図が必要となる。


近くの木に馬を結び、叔父さんの家のドアに立った。

ドア一面につるのようなものがついていて、いかにも古そうな雰囲気を漂わせている。


俺はドアを開けた。

中はちゃんと整理整頓されており、家の概観からは想像もつかないほどきれいだ。

大きな居間には叔父がどっかりと石の上に座り、剣を鑢で削っていた。



「叔父さん、できたかい?」

「ああ、レリクお前か…。」


目のほりは深く、額には横に三本しわがある。一般的な顔といっていいと思う。髪は生まれたときから白い。しかし、ひげなどはあまり好きではないらしくしっかり毎日剃っているらしい。相変わらず凄く疲れた目をしている。いい武器を作るためにすごい数の試作品をこしらえる人だ。値段も高いが彼の武器には名作といわれるものが数多くある。親父とあまり違わないから結構年なはずだけど、若ぶりだ。俺が子供時とあまり変わっていないような気さえする。親父は現役を退いてはいるが、まだまだ後輩の指導にあたっているらしい。元気な家族だと思う。しかしながら、母は俺を産んで他界したし、祖母や祖父は戦争に巻き込まれてなくなった。今では、3人だけとなってしまった。祖父は鍛冶屋でかなりいい腕だったらしい。親父はそういうのがあまり好きではなかったらしく、15歳になって、すぐに軍隊に入隊した。叔父は前にも述べたように人と関わるのがあまり好きではなく、鍛冶屋のほうをずっと手伝っていたらしい。それにしても、叔父は結婚しないのかな。いや、できないか。こんな感じだったら。顔も悪くないし、スタイルもいいんだが、とっつきにくいし、仕事熱心すぎる。俺と親父と似て。


単純に広いといっても、ここの鍛冶場は普通の鍛冶場の2倍はある。叔父さんいわく、精製や宝石を砕いたり、武器に組み込んだりするのにはそれなりの広さが必要らしい。あんまり、こじんまりとしていたら、宝石などは砕いたりできない。普通は鍛冶屋とは別に宝石加工所というところがあって、そこで加工してもらうようになっている。だからこそ、ここは普通のところよりも大きく設計したのだろう。仕事は始めて頼むので、出来はよいかどうかわからないが…。


「できたよ。よりによってエメラルドとは思わなかったよ。危うく木の槍になりかけたけどな。それにしても、第2系統がまさか木とは思わなかったよ。レリク。普通は優劣のつきやすい系統は同じにならないはずなんだが…。まあ、しょうがないのか…。」


宝石はだいたい色で術系統は分けられる。エメラルドは緑色が濃く出ているから木の術に適している。それぞれ武器には組み込みやすいものから難しいものまで、それぞれの材質にも特徴があるらしい。その上、エメラルドはあまり使用されないため難しかったのかもしれない。でも、俺は他の系統が伸びるとは思えなかったので、叔父さんに無理を言って作ってもらっていた。他の系統も出来ることは出来るが、気休め程度にしかならない。あくまで、実践ということなので、消去法で木しか残らなかった。


「ありがとう。早速試してみる。」


この槍ははっきりいって、いい出来のように思う。彫刻みたいにきれいだ。

手に持った感触、術の適合具合もよさそうだ。

しかし、でかすぎるように思う。2メートルはある槍になっている。これじゃ、ダンジョンではあまり使えないかもしれない。それに真緑で、宝石の塊のような感じの槍になっている。盗賊には気をつけないとどこかで盗まれそうだ。


「ああ。でもここではやるなよ。後、術の合成がうまくいくかどうかは分からんぞ。未知の部分でもある。普通は1つの系統だけをここまで使うことはなかったからな。皆、バランスを重視することが多い。しかも、お前ほどの火となるとどうなるかは定かではない。」


二つの系統の術をあわせるにはバランスが必要なのだ。理由はバランスによって術自体が変わってくる可能性がある。そして、どちらかが優越のつくような系統を組み合わせてしまうと失敗することが多い。特にどちらかに偏っている場合は起き易い。たとえば、木と火をあわせると、木が燃えて強い火の術になってしまうとか…。それだったら、無理に二つの系統をあわせなくても、一つの系統を使ったほうがはるかに使いやすい。


しかしながら、系統の中でも攻撃的な側面の他に怪我や体力の回復に応用することの出来る系統がある。それは水系統だ。だからこそ、ダンジョンに入るときに水系統の術は必須だ。俺は使えないからかばんの中に治癒薬を入れている。治療が出来ないので、そのために金を払って、治療薬で治療している。水系統はたくさんの人が使うことができるが、人を治癒するということになるとできない人が多い。薬草の調合、薬草の効果、それを合わせる術のレベルと応用力。これらがすべて揃ったところでようやく治癒薬を作ることができる。バランスといっても水系統を使える人が多いのはこのためだ。しかし、自分を治癒する場合にはこれらはすべて必要ない。術エネルギーを自分にあてるだけで回復することができる。だからこそ、水系統の宝石はかなり値段が高い。例外として。


「任務を受けたそうだな。」

「うん。テディーが行くからな。彼にはお世話になったから。」


相変わらず、仙人みたいな暮らしをしている割には情報が早い。どっから仕入れてくるのかわからないが、俺が任務を受けたのは1週間ほど前。あらかたの準備をしてから出発したが、そんなに時間はかかっていないはずだ。そんなに早く情報を集めることが出来るのなら、俺に教えてほしい。教えてはくれないだろうけど。


「レリク、受けてしまったものはしょうがないが、あそこは最近、あまりいいうわさを聞かないぞ。これは俺の勘だが、何かが隠されているような気がする。国が依頼するぐらいだからな。お前の親父も心配していたぞ。無茶をしていないかと。」

「余計なお世話だ。自分のことぐらい自分で守れる。」

「この任務が終わったら、親父さんのあいさつに行けよ。戦場では互いに敵だったかもしれないが、親子であることは皆知っている。そこまでとがめることはしないだろう。それに話したいことがあると言っていた。彼が冒険者のときの話だろうが。」

「親父が冒険者?そんな話は一度も聞いたことがない。」

「そりゃあ、奴から口止めされていたからな。お前が冒険者になると言って家を出たとき、やっぱり俺の息子だと言っていたよ。まあ、お前がどう思うかは自由だ。あいつだって、お前のことをいえないくらい無茶をしていたからな。何かを追っているみたいだったが…。そんなことはまあ、どうでもいい。」

「親父が追っていた?それは何の話だ。まったく聞いてないぞ。親父はそれなりに強かったはずだ。親父が追っていたものってのはいったい何だ?」

「さあ、俺はよく知らないな。とにかくあいつは、冒険者の時代のことを話したがらなかった。俺に危険が及ぶかもしれないと思っていたのかもしれない。あいつはあいつなりの考え方がある。お前とは少し違うようだが…。本質はお前と一緒だ。」

「見解の相違だな。俺は親父に似ているとは思ってはいないよ。」

「俺は似ていると思う。まあ、いい。そのことについてかは知らんが、とりあえずお前に話したいことがあるそうだ。」

「……。」

「お前が行きにくいのはあいつもわかっているだろう。そこまで、切羽詰っての話だから、よっぽどのことなんだろう。今回の任務が終わってからでもいい。ちゃんと挨拶にいって話を聞いて来い。また、火種がくすぶっているから、いつ、戦争が起きるかわからん。今のうちに行っておけ。」

「……わかった。任務が終わったら行くことにする。この槍、ありがとう。見た感じかなりいい出来だ。大切に使わしてもらうよ。」

「ああ。気をつけて行ってこい。」


と言いながら、今受け取った槍を見ていた。槍を見ているとよくあいつのことを思い出す。親父と一緒に鍛錬していたあのときのことを…。それと同時に血が滾る。早く使いたくてしょうがない。俺にとって、戦場やダンジョンは心地よい空間だ。


そう考えながらも、ここら辺で試すのはよくないだろう。叔父に迷惑がかかりそうだ。もう少しちゃんとした施設に行って練習することにしよう。あまり時間はないかもしれないが…。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ