リオ・リチャード第3話
~2年後~
「これで完成だ。」
「ようやくですね。」
僕は剣を見ていた。
白い剣は僕には似合わないけど、綺麗だ。
「この剣は君の能力が吹きこまれているようだ。リオ君。」
「知っていたのですか?」
「まあ、少ないがここにも客が来る。君のような有名人が来ればすぐに分かるさ。」
僕の予想では…。
「師匠、僕は…。」
「何も言わなくていいさ。レリクの奴もそうだった。君は救いたいものがあるのだろう。しかし、これだけは覚えておいてくれ。」
「はい?」
「戦うことだけが正義とは限らないぞ。」
そこまで知っていて…。
「ありがとうございました。」
僕は家を出て行った。
~リオ宅~
「さて、皆、集まってくれたようだ。」
僕はそういった。
こういう言葉づかいは正直好きにはなれないが、会議ではこのほうがいい。
ここに集まっているのはルヴェル、ティル、レオン、そして
「久しぶりの方もいますね。まあ、お互い自己紹介など不要かと思いますが、お願いします。」
「リオ君、すまないけどこの人たちとは組むことができないよ。」
「私もだよ。」
「お互い、昔のことは水に流してもいいんじゃないですかね。時間はかなり経過しています。」
口を開いたのはレオン。
「この人たちが何したか知っていて雇ったの?レオン君。」
「もちろん、知っています。というよりも僕たちは被害者ですから。」
「なら、どうして?」
「ミランダは結局のところ、私たちを裏切った。傭兵の中では当たり前だけど、任務中の裏切り行為はギルドでさえも禁じている。この女は金で私たちを売った。」
「あんたたちもそんなにいいことをしていたわけ?特にシーリー、あなたはリーダーでありながら…。」
2人の口論を遮った。
「口をはさむわよ。」
そういって、ルヴェルは紙を袋から出して、机の上に置いた。
「これを見てもらえるかしら。」
彼女らは半信半疑で資料を捲る。
僕は腕組みをしていた。
少なくともここで仲間割れは起こしたくはない。
僕たちの仲間は多くないのでこの会議が御破算になれば、大きく後れを取ってしまう。
「これは本当?」
「ええ、残念ながら…。」
「じゃあ…。」
「あんた達は仕組まれていた。ギルドにも国にも裏切られていた。」
僕はいった。
「僕たちはこの国を変えようと思っている。僕の父であるアウスは確かに王にふさわしかったかもしれないが、それは戦でのことであり、結局は群雄の一人であったに過ぎない。次の某はかなりの浪費家で、しかも政治には関心がないことは分かっている。」
父が病気になり、この国は変わってしまった。
官僚は私利私欲を求め、皇太子は完全に遊び呆けている。
警察や軍も好き放題やっているのが現状だ。
「あんた達は私、たちをどうするつもり?」
“たち”の部分が少し遅れたのはしょうがないことだ。
「それは後に決めることになる。僕たちは何一つ持ってはいない。」
「策はあるのだろうね。」
「もちろん。」
レオンが力強く頷く。
「犯罪が他に比べて極端に少ない個所がある。」
彼は地図を広げ、ある場所をさした。
「なるほど。だが、彼は…。」
「説得役には僕が行く。」
これはまだ誰にも話してはいない。
「リオ、お前…。」
「ここは賭けに出なくてはならない。俺たちの町は搾取されていて余裕など残ってはいない。」
リオの住んでいた街も同じく変わってしまった。
警備隊はいつの間にかいなくなり、僕が警備隊長を務めていると言っておかしくない。
治安は多少、よくなってはいるが、所詮はスラム街。
悪くなる一方だ。
「そうか…。いや、お前しかいないか…。」
レオンは心配そうな顔で僕を見た。
彼も家のことで忙しいだろうに。
「なるほど、じゃあ、私たちは警備をあんたの代わりに任せてもらうということか。まあ、ギルドには忠誠なんて尽くしたこともないから別にいいけど、金はかかるよ。」
「それは私が工面します。両親は皇太子には期待していません。暴動で被害がでるのは…。」
「あなたみたいな大きな財を抱えたところが対象になるか。あんたも苦労するね。」
「僕のつきそいにはティルを連れていく。ミランダさんは情報収集を頼む。レオンはどうするつもりだ?」
レオンは腕を組んだままだ。
レオン…