赤眼のレリク 第2話
メラル帝国では武器の質がいい。これは兵器を作るために新技術を試しているのに過ぎないが、その中にはかなり高度なものも含まれる。それは宝石を武器の中に調和させるということだ。これは簡単そうで難しい。材質によりうまくいくかいかないかというのもあるが、何より武器全体に同じ純度にしないといけないということだ。純度が均一になっていなければ、術自体がうまく発動しないという危険性もある。たいていは術もしくは武器などと分けるために指輪などの装飾品に加工して使用する。実際には、宝石自体はかなり沢山採れる。ダイヤモンドは少し量が少ないが、他はだいたい同じだ。なんでこんなにもこの技術が重要かというと、それは術に関係してくる。術を術で使う場合であれば、変換するのは術エネルギーだけでいい。しかし、これを武器や盾に付与させて使うとなると、先ほど述べたように材質との関係や武器の耐久度、それらを考えたうえで術をさらにそれにあわせて変換しなくてはならない。それにはエネルギーも要るが、咄嗟の判断とセンスが必要となる。こういった武器が少ないのもその一つだ。俺にはその才能があるらしく、今回始めて術器(宝石を加工して武器として使用できるもの)を作ってもらうことにしたのだ。術器があれば、自分の術のバリエーションがかなり増えると思っている。その技術がこのメラル帝国にあると聞いてやってきたのだ。しかし、かなり難しい上に、作れる人も限られてくる。その上、たくさんの宝石を使う。普通の武器ではあまりないが、使い物にならないことがあるのも術器だ。ほとんどの鍛冶屋はこれを作りたがらない。今回は父の叔父が術器を作っているというのを聞いたことがあり、そこでお世話になることにした。その前に下準備として、できるだけ純度が高く、純度が大体同じものを掘りに行った。これが思ったよりも時間がかかり、2週間がかかった。俺はギルドの中でも高い地位にいるためにその間にさまざまな任務が舞い込んでしまったため、その分時間を使ってしまった。その代わり、かなり任務を絞って受けさしてもらったが…。しかし、術器を作るために1ヶ月はかかるということを聞き、かなりいらいらしている。その間、叔父の鍛冶屋から比較的近い町へ滞在しなくてはいけなくなり、雑務的な任務をこなしていた。草むしりとか、田植えとか、猪狩りとか…。まあ、俺的には緊張感に欠けるものが多かったが、暇つぶしにはなった。とはいっても、本来の目的は術器を作ってもらうことなので、それができるまでは待っていなくてはならないが、頼んでから、もうそろそろ2ヶ月になる。さすがにもうできているだろうと思い、鍛冶屋に向かっている。
実際のところ、あまり家族の中がいい雰囲気ではないため、さすがに少し頼みづらかったが、それは愚痴を言ってもしょうがない。あの戦争からわずか2年しかたっていないのだ。簡単に遺恨が消えるなんてことはない。血縁関係にあるものはたいてい、同じ国に住んでいるのに、俺は別の国に住んでいるし、叔父はここ、メラル国。親父はメジス国。ある意味変わっているのかもしれない。
叔父の鍛冶屋は近くと入ってもかなり離れている。ここら辺は都会からずいぶんと離れている。そういう風な言い方をするよりも「仙人」みたいな暮らしをしているといったほうがいいのかもしれない。叔父は人見知りが激しくおまけに無口なため、どちらかといえばみんな近づかなかったように思う。親父とは全く正反対だ。社会性に乏しい叔父にとってはそういう暮らしが楽なのかもしれない。当然ながら、ここを訪れる者は少ない。都会にも十分いい鍛冶屋がある上、叔父の鍛冶屋は都会から100キロ以上はなれた所にある。さすがによい武器や術器を作るといっても、ここまで来る物好きは少ない。道中、盗賊やモンスターを警戒しながら進まなければならないので、普通の人は立ち寄るなんてことはできない。時たま、道に迷ってきてしまうものもいるらしいが、帰る道が分からなくなっているため、叔父に送ってもらった人もいるようだ。今回は前回と違い、馬を買っているので、そこまでの日数はかからないだろうと思われる。
しかし、道中何もないなんてことはありえないわけで…。
町から二日ぐらい馬で走らせたところで、湖があるので、そこで馬を休ませていた。俺も鞄から水筒を取り出し、中身を捨て、湖の水と入れ替えていた。できれば新鮮な水のほうが好ましい。作業を終え、馬と一緒にまどろんでいると、
「こんにちは、お兄ちゃん。悪いことはしねえから、そこの鞄を置いていきな。」
すでに悪いことをしているように思うのは俺だけだろうか…。
「すまないが、それはできない。そこの鞄の中には大事なものが入っているのでね。用はそれだけかい?それなら帰ってくれないか?疲れている。」
「さっさと渡せって。俺は気が短いんだ。」
「へえ、後ろの大勢の人たちもかい?」
「!!」
「気がつかないと思っているのか?あんなに殺気を出していたら、普通の人間でも気がつくぞ。それにモンスターがここら周辺だけ、やけに少なかったしな。まさかとは思っていたが、こんな辺境の地にも盗賊がいるとはね。」
「腕に覚えがあるようだな。小僧。しかし、こちらの方が人数はかなり多い。おとなしくしたほうが身のためだぞ。お前ら、出て来い。」
おお、かなりいかつい男ばっかり。男にだけはよくもてる俺。
人数はざっと20人ぐらいか…。これなら術は使わなくてよさそうだな。
出てきて早々に剣を抜いた。
「すまないが、死んで…。」
ザッシュ!!
プッシャアアアアア。
一番最後に出てきた二人組みの足を切ってやった。片足ずつ。
「痛えええ。」
「ぐっ。」
「いつの間に…。お前ら、気を引き締めろ。こいつ、只者じゃねえ。」
俺は二人に止めを刺さずに
「どうする?おとなしく帰るなら、お前らは助けてやってもいいぞ。」
「調子に乗ってじゃねえ。」
俺にはじめに話しかけてきた奴が頭らしい。彼がそういうがすぐに全員が剣を構えて走ってくる。
やっぱりこうじゃないとな。緊張が足らねえ。
数分後…
キィン。ザシュ。
これで終わりか…。そんなにたいしたことなかったな。
「くそ、この人数を殺さずに…。お前、一体誰だ。」
「俺はレリク。聞いたことないか?」
「…お前がか?ずいぶんと若いな。さっさと止めをさせ。覚悟はできている。腕も1本なくなったしな。」
「興味ない。さっさと帰れ。」
「何?」
「死にたいのか。さっさとうせろ。」
「くそっ。」
そういうと彼は仲間を起こし、ぞろぞろと帰っていった。
あたりは血まみれだ。俺自身もかなり返り血を浴びてしまっている。沐浴しないと。
なぜか馬は俺を怖がっているようだ。
ここら辺一体を中心に生活していた奴等だったのか、道中、モンスターはほとんど出なかった。馬が怖がらないので非常に助かったが…。しかし、こうも何もないとつまらなくてしょうがない。
それから二日後、ようやく叔父の家に着いた。