表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デビル・ジュエリー  作者: かかと
赤眼のレリク篇
115/194

赤眼のレリク 第105話

~断末の谷 第3戦~


「だいぶ、歩いたわね。」

「そうですね。」


俺たちはさらに奥に行くために前へ進んでいた。谷というだけあってここは一本道だ。しかし、普通の人間では防ぐことなんてとてもできないだろう…。

もうここには太陽の光は届いていない。しかも、砂漠からは100キロは離れているだろう。


俺は言った。


「生態探査」


どうやら、ここにはモンスターはいないらしい。


「とりあえず、今日はここで休もう。先を急ぎすぎて、負けてしまったら意味がない。それに、アクアがしんどそうだ。」


二人がアクアを見た。顔色がよくないことがわかったらしい。


ラリアがアクアのそばによる。


「大丈夫?」


彼女の体に異常は特に見られないらしい。


「うん。少し、体が疲れただけだから…。」


そういって彼女は地面に座った。それと同時に目を閉じてしまった。

きついだろう。彼女の元へ向かっているのだから…。


「アクアはここまで体力がなかったようには思えませんでしたが…。」


ロスが心配そうにアクアを見つめる。


「そうね。ここ最近調子がよくないみたい…。」

「何か体に異常はなかったか?」


俺はあえて少し疑問を変えた。


「う~ん…。見た限りは何も問題ないように見えた。もちろん、女の子の日が近いのかもしれないけど…。それは私にはわからないから…。」


そこで、ロスが余計なことを言った。


「ラリアにもそういう日があるのですね。初めて知りました。」


ラリアの顔が般若へと変貌を遂げた。俺はもう知らないぞ。




「さて、そろそろ行こう。あっちの出方が気になる。」


正直、アクアの体力は回復しきっていないだろう。しかし、急がないと先手を打たれるかもしれない。


「アクア、いけそう?」


なんだかんだ言って、しっかりと面倒を見ているな、ラリアは。

それに比べてこいつは…。

俺は砂の天辺を見た。

そこにはロスがいる。

もうお馴染みの光景だ。


「だから、僕はいけないことを言いましたか?」

「?」


アクアは寝てたから、わからないだろう。いや、わからないほうがいい。


「行くぞ。」


俺の言葉と同時にラリアが術を解いた。ロスでも砂にはあまり勝てないらしい。


「ひどい目に会いました。」


それはお前のせいだろう?

俺はそう思った。

だが、その思考もすぐにさえぎれられた。


「生態探査」


「どうしたの?何かいた?」

「この先だ。」


俺は木が茂っているところを指差した。


「どうやら、只者ではないですね。モンスターですか?」


ロスが聞いてくる。フィールドにまで影響を与えるようなモンスターはあまりいない。いるとすれば、ドラゴンぐらいだ。


「まあ、俺は一度だけお目にしたことがあるのはドラゴンだけだ。ほかのモンスターは見たことがない。」


「そうか~。また、変なやつが出なければいいけどね。」


アクアがそういう。しかし、そんなにうまくはいかないだろう…。



俺たちは脚を進めた。




「さて、これはいったいなんです?」

「「さあ?」」

「まあ、木の系統であることは確かだな。」



俺たちはまたまた、モンスターを見上げた。


「しかし、1体とは僕たちもなめられたものですね。」

「気をつけろ。めちゃくちゃ、強いということも考えられる。」


俺が見る限り、人のような木が動いている。もちろん、人間の背丈の5倍はあるが…。それに十分に幹や枝にも栄養が行き渡っているらしく、堂々としたものだ。


「あれは何?」


アクアが言った。


「あれは人?」


ラリアが言った。


幹に誰かの顔がある…。いや、沈んでいるのか、体が…。しかし、顔色は青紫に変わっている。


「もし、あれが人なら助けなくてはいけませんが…。」


そういって、ロスは俺のほうをみた。


「もちろん、ひとつしか生体反応は感じられないぞ。」


あの人は死んでいると見て間違いないだろう。


「しかし、木の系統をぶつけるとはなかなか、根性がありますね。こっちにはレリクさんがいるのに…。」


そういってロスが俺のほうをまた見た。

確かに、それは思っていたが、あの顔におそらくカラクリがあると見て間違いないだろう。


「それにしても、気色悪いね。少なくともいい趣味とはいえない。」


アクアが言う。


「だが、あの顔、どっかで見たような気がしないか?」


俺は二人に尋ねた。

二人は必死に思い出そうとしているようだ。


「まあ、お前らに頭のほうは期待していないからな。」


俺ははっきりそういった。


「何ですって!」


アクアがそういったとき、モンスターがしゃべった。


「お前ら、少し緊張感が足りないような気がするな…。」


俺たちは一斉に距離をとった。


「モンスターがしゃべるなんて…。」

「俺はモンスターじゃない…。」


モンスターではない?どう見てもそれは人の形をしていないだろう。


モンスターはいきなり、木の葉を振りまいてきた。


「炎上網」



これぐらいなら、たいしたことはない。



「今回の敵は楽勝ですね。」


しかし、モンスターの術エネルギーはどうやら、木ばかりではないらしい。


「くるぞ。こいつはほかにも何か使えそうだ。」

「そうね。これは少しまずいかもしれない。」


そういってラリアは上を見ていた。


バリバリ


閃光のように稲妻が走る。



俺の術に当たっていたが、それも一瞬だった。



それぞれ違う方向に散ってしまった。それと同時に周りの木々が一斉に動き始める。


「これが相手の狙いか…。俺やロスはともかく、アクアには少しばかり、骨のある相手だな。」



俺は回りの木を燃え散らした。



「さて、さすがにこの状況でもまだ、余裕で要られるか?」


俺はモンスターに話しかけた。


「心配は無用だ。もともと俺はお前が狙いだ。」

「何?」


彼は何か詠唱を唱え始めた。それにあわせて、光が徐々に俺の周りへと集まってくる。


「これは?」


「食らえ。」



俺の体は吹き飛んでいった。



「レリクさん。」

「くそ、助けに行きたいけど…。」

「厄介ね。この木は。」


3人は普通とは違う木に悪戦苦闘していた。



俺は壁に叩きつけられた。



「ぐっ。」


あらかじめに俺が来る方向を読んでいたらしい。いや、それとも察知していたのか…。しかし、これで、相手の正体がはっきりした。


少し、体が軋む。しかし、少し動かしてみたが、目だった外傷はないみたいだ。



「お前をやれる日が来るとは思わなかった。レリク。」

「そうだな。ルイ。」



彼は確かにルイだった。



「だが、落ちたな。」

「何?」

「お前が俺に負けたらしいが、正直お前のことは1つも覚えていないぞ。カスになんか興味はない。」



彼は表情を変えた。どうやら、逆鱗に触れたらしい。



だがな、俺はお前が気にくわない。



「お前の行いはギルドで知っている。かなりあくどい所までやってきたらしいな。」

「それがどうした?俺は力を手に入れるためにここまできたのだ。そしてお前を倒すためにな。」



こいつは俺が作り出してしまったものらしい。だったら、俺が処理しないといけないよな。



「力に溺れたな。」


俺は槍を振るった。


「フレイムバーニング」


木々が徐々に焼け始め、ジャングルはなくなっていく…。何もフィールドに与えられる技を持っているのはお前だけではない。それに木系統では俺には勝ち目はない。


「ぐっ。」


彼は木から分離した。



ザッ


3人が俺の隣へ来た。



「助かりました。あの木は普通とは違いまして…。切ったら切った分だけ増えていきました。」


まあ、“H”がこいつに力を与えたのだろう。到底、こいつだけではできないはずだ。


「ルイだったの…?」


ラリアが不思議な表情で見ている。


「これはとんでもないことですね…。」


ロスは軽蔑の眼差しで見ている。


「うるせえよ。」


彼は俺に切りかかってきた。



ギィィィィン



ラリア、ロス、アクアがその剣をとめる。



「何、お前らごときに俺の剣が止められはずはない。」

「でも、とめているな。」


俺はルイを見ていった。


「お前には大事なものが欠けている。」


まあ、それは知る必要もないし、知ることもできないだろうがな…。


「さよならだ…。ルイ。」


俺はルイの腹に槍を刺した。








「案外、楽に勝てたわね…。」


俺たちはルイの死体を見下ろしていた。


「そうだな…。まあ、こいつは時間稼ぎだったのだろうな。」

「それにしても、ルイがここまで力に執着しているとは思わなかったですけどね…。」


ロスはルイを見ていった。


「普通の人間はそうだ。俺たちみたいに特殊な強いものを持っているわけではない。俺たちは俺たちで苦労してきたがな。この強い力のせいで…。」


全員が黙った。


「そうね…。こいつは戦場にも呼ばれなかったみたいだし、」

「もういい。それより、先を急ごう。あの木、どうやら普通ではなかった。“H”の力は徐々に増してきているのかもしれない。」


俺はラリアの言葉を遮った。


それはアクアの影響だろう。そろそろ、本来の力を取り戻すはずだ。しかし、なぜ、彼女が直接来ないのか気になる。


「そうですね。わざわざ、時間を与える必要もないですね。行きましょうか?」


ロスは歩き出した。

ラリアはどうやら、アクアを治療しているらしい。


「どうした?どこか怪我をしたのか?」


俺はラリアに尋ねた。

ロスもこっちを振り返った。


「いや、違うのだけど…。」

「ここに痣ができちゃって…。」


アクアは腕まくりをした。このマークは…。


「どうしました?レリクさん?」


ロスはこっちをしっかり見ている。


俺は平静を装い、言った。


「いや、なんでもない。アクア、その痣は痛むか?」

「ううん…。痛まないけど…、少し気になって…。」


まあ、それは当然か…。


彼女の目の下に月のマークができていた。


「それなら、気にする必要はないだろう。先を急ごう。」



あのマークが出たって事は…。もう時間がないか…。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ