赤眼のレリク 第102話
~アクア視点~
後ろの黒い物体が迫ってくる。
「くそっ!どうやら力を増してきているようだ…。このままでは…。」
彼は薄っすら汗をかいているようだ。状況はよくないほうになっているようだ。
「でも、打つ手がないわよね。」
私は彼に叫んだ。
「そうだ。今のところ、打つ手がない。あの物質は消しても消しても決して減ることはない。」
どうすればいいの?私は考えていると自然にレリクの顔を思い浮かべていた…。
「先に行ってください。」
「待て…。」
私は犬から飛び降りた。あなたならこうするようね。悔いはないよ。
「間に合ったようだな。アクア…。」
グオオオオオオオ
その声に呼応するように黒い物体が止まった。
「君はレリクか…。どうやった?」
「はじめまして、といったほうがいいですか?“初代”さん…。一人でここまでがんばっているのはすごいですね…。」
彼が敬語を使うのをはじめて聞いた。でも、これは彼の術エネルギーで間違いない。
「レリク!」
私は思わず抱きついてしまった。
「よしよし。」
彼が私の頭をなでた。
彼はいつも間にか背も伸びていたようだ。
「ここは大丈夫だ。」
パアアアアアアアア
彼の体から光が溢れ出した。
「レリク!」
私は彼に強く抱きついた。これはどうなっているの?
「大丈夫だ…。心配するな。アクア。」
「君に話をしなくてはならないようだな。」
「ええ、私の仮説が正しければ、あなたはもうすぐ消える運命にある…。」
彼が消える?いったいどうなっているの?
「彼女への説明はどうする?」
「いえ、それは先の話になるとも思います。」
そういっている間に黒い物体は姿を消していた。
「収まったようだ。君には感謝しなくてはならない。」
そういってレリクに“初代”といわれた彼は頭を下げた。
レリクは彼に向かって言う。
「あなたの選択は間違ってなかったかもしれないですね。」
そういってレリクは上を見た。
~草原の広場にて アクア視点~
「君はどうやってこの“世界”に入ってきた?本来なら無理なところだ。」
レリクは少し考えて、答えた。
「それは今、話すことでもないでしょう。しかし、俺は対になる物を見つけました。」
彼は驚いたようだ。
「君はそこまで知っていたか…、伊達に諸国を回ったわけではないようだ。」
レリクは彼に対して微笑んだ。
「俺は好き勝手にやってきただけですよ。アクアすら助けることはできなかった…。」
レリクは顔を伏せた。
「私はここにいるよ?」
そういって、レリクの手を握った。
しかし、彼は悲しそうに私を見た。
「そうだな…。」
少しの間、沈黙が続いた。