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デビル・ジュエリー  作者: かかと
赤眼のレリク篇
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赤眼のレリク 第1話

今まで読んでくださった方、申し訳ありません。


こちらに新しく投稿させていただきます。


これからもよろしくお願いします。

「よう、こんなところにいたのか?レリク。」



 俺の名はレリク。最近では名をよく呼ばれるようになった。術が宝石を媒体にして具象化するという方法が編み出されて、もう200年も経っていた。そのころから冒険者が増え始め、多くの古代遺跡ダンジョンが発見された。古代の王や王族は宝石で着飾っていることが多く、それをこぞって人間は求めたのだ。掘って宝石をとろうとしているのは貴族だけで実際に掘って得られることは少ない。そのため庶民では手が出せないほどに高値となっている。

 今では冒険者がダンジョンからとってきた宝石が市場に回ってはいるが、そのうちのほとんど純度が低く、とても宝石とは言われないものだ。しかし、発掘では稀にしか発見できない分、純度がかなり高い宝石がある。純度が高い宝石はマラリスと呼ばれ、市場に出ればかなりの高額になるがほとんど市場に出回ることはない。理由はもちろん、その冒険者が使用することが多いからだ。

 宝石を使った術というのは本来、個人の力量によるところが多い。力量も遺伝によるところが大きい。現在、政治に君臨する貴族には昔武功をたてた武将などが祖先にいるため、未だに術の強い貴族が乱立している地域もある。

 術というのは体内にある術エネルギーというものを使うことによって、特定の種類の術を使うことができる。術エネルギーというのは体力とは別に区分されているため、術エネルギーを完全に使ったことによって、死ぬことはないが空っぽになってしまえば、歩くのがやっと言う状態になる。それは精神的なものに影響されることによる三半規管の麻痺が原因ではないかといわれているが、実際のところは解明されていない。例えば、危機的な状況で動けなくなってしまえば当然ながら、それは死を意味することになる。

 相対的な術エネルギーの量は生来あまり変わることはない。上限は遺伝よるものが多いため、貴族の圧政が続いているのも仕方ないとも言える。ただ、純度の高い宝石、すなわちマラリスを常にもっていれば、術エネルギーの量を底上げすることができる。だからこそ、世界上の人たちがマラリスを求めているのだ。


 俺自身の血統は不明だが親父が騎士ということもあって槍を使う。ダンジョン内では不向きなことも多いが遺跡のように地下にあるものもあれば、森自体がダンジョンになっているようなものがある。槍が使えるところでは槍を使っているが、それ以外のときには短剣を使っている。普通の短剣ではなく真ん中が異常に太くなっている両手剣を使っている。

 基本的に2つを使う人は多いが、2つを使いこなせる人はそう多くないので、ダンジョンだけでなく戦場でもよく役に立つ。武器はさまざまな物があり、最近では火薬を使った武器も台頭してきている。火薬を使った武器は高額だが、術エネルギーを使わないという点では非常に役に立つ。まだ、術には敵うレベルの武器は存在していない。過去の遺物には大量破壊兵器が存在したらしいが、初代のこの大陸の覇者のショウという人間がすべて無くしたと伝わっている。

 術には系統がある。火、水、土、雷、風、木、光、闇の8の系統にわけることができる。少数の人は1つの系統しか使うことができないが、ほとんどの人は2つの系統を持っていて、それを組み合わせて術として使うことが多い。もし、1つの系統だけで対決したら、血統や術エネルギーの量によって、勝負がついてしまう。たいていは自分で試行錯誤して、自分に合った術を見つける。たまに、何一つの術も使えない「旧人類」と言われる人たちもいるらしい。俺はあったことがないのだが…。その人たちはよく差別の対象となるが、今のところ何の対策も練られていないのが現状だ。もちろん、術は武器にもまとわせることができる。それにはかなりの集中力が必要なので一部の者だ。


 俺ももう25歳になった。世間的には若い。このところ戦争が多いので平均は出しにくいが、だいたい60歳ぐらいだ。まだまだやれると思うかもしれないが、冒険者は30代に入ると激減する。あるものは怪我で、女を作って止めてしまうものもいる。そして死ぬものも多い。運命の年といわれているのが20歳。この世界では16歳で成人とみなされるのでだいたい4年から5年。その間に運命がわかれる。死ぬのが多いのもこの年。冒険者にとっては厄年となっている。個人的にはなんか死んでもおかしくないような体験をしてきたが…。


 30歳を過ぎたら体力的にしんどくなってしまう。それは戦うものである限り、当然のことなのかもしれない。しかしながら、30歳まで続けられる人があまりいないので、そう言った人たちは騎士や傭兵として登用される。そこまで生きているもののほとんどは数々の修羅場を潜ってきているため、また人材を育成すまでには時間もかかる上に、最近は主だった戦争もおきていないため、一般の兵士と傭兵や冒険者の間では大きな壁がある。経験値として力量のある傭兵や冒険者を国家が彼らを登用したいのは無理もない。よく紛争や小競り合いが起きているが、起きないときのほうが圧倒的に多い。拠点の前線を維持し、新しい人材を育成しようにもやはり経験不足は補うことができない。前線では今も戦争の準備のために登用を開始している。いつ戦争が起きてもいいように。それほどまで国家の間で緊張が走っている。




「おい、話を聞いているのか?レリク。」

「すまん。もう一回言ってくれないか?」

「全く…。」

「すまない。テディー。少し考え事していてな。」

「まあ、いい。今、ダンジョンに入るメンバーを募集している。噂ではマラリスがあるということだ。だいたいマラリスがある場所には強いモンスターがすみついていることが多い。今回もかなりのモンスターがいるのではないかということらしい。」




 そうなのだ。マラリスあるところに強いモンスターあり。これはダンジョンでは当たり前の話だ。マラリスの強い力にモンスターは反応する。要するにマラリスがモンスターを引き付けている。しかし、冒険者が危険だというところにはそこは入っていない。冒険者の役割は必ずしもモンスターを倒すことではない。地形や形状、モンスターの有無や宝石の可能性など調べることを主体として活躍する冒険者も多く。そこにいかなければいいことだから必ずしも強いとは限らない。

 普通のダンジョンでも生活には困らない程度の鉱山があったりする。しかし、ダンジョンというのは入り方でずいぶんと違ったことになる。たとえば、季節によっても死亡率がかなり違う。たとえば夏と冬は死亡率が高いとか。もう1つはモンスターの種類が変わることがある。弱いモンスターは気候によって強弱がつくことが多く、比較的入りやすいダンジョンでもそれなりの準備と知識が必要となってくる。だからこそ、冒険者というのは意外と知識があったりするのだ。モンスターの襲撃の際に傭兵を雇うのもこの辺が関係してくる。騎士にも1人、冒険者上りがいればある程度知識を共有できるから、そういった面では冒険者も役に立っているわけだ。今は春だから過ごしやすい気候といえるが反対にモンスターも夏と冬に活動を活発にするのが多い季節だ。一年中、同じ季節だったら楽なのにと思うのはここだけの話だ。




「さて、どうしたものかねぇ。今はそんなに金に困っているというわけではないし…。それはテディー、お前もじゃないか?」

「そうだな…。俺ももう29歳だからな。お金がどうこうというわけじゃないんだ。今回が最後というつもりで行く。まあ、最後ぐらいはマラリスぐらい手に入れたいと思ってな。」




 そう言って俺の腕輪に視線を向けた。

 俺のしている腕輪はマラリスで間違いない。激闘の末に手に入れた品だ。マラリスというのはかなり特殊な宝石だ。先ほど説明したように術のレベルが上がるだけでなく、それ以外の付与術といわれるものがついてくることがある。有名なものだと毒の無効化とかだ。その中でも俺が持っているこのマラリアは変わっていて、火のレベルが6段階ほど上がるというものだった。俺は運よく火が特に得意だから、火の能力で右に出るものはいないと思っている。しかし、激闘の末に右目を失ってしまった。縦に1本だけ。この傷が深かったわけではないが、モンスターが最後の攻撃の際に毒属性を使ったらしく、それ以来右目は見えないままだ。あれから時間もかなりたったが、開けることすらできない。だから俺には二つの名がある。「炎帝」・「赤片目のレリク」。この二つの名はここ最近よく知られるようになり、最近では傭兵の話や騎士への志願の話が来るようになった。引退してからそっちの道に進むのも悪くないと思っている。しかし、今はそういう段階はないと思っている。各国の動静がわからない限りはまだ、動くべきではないと思っているのだ。

 俺はそのほかには木を使えるのだが、今でも術を組み合わせることができないでいる。火のレベルが高すぎるために木との組み合わせがうまくいかないのだ。やはり、火だけでは相殺されるような術や攻撃をされるとかなり苦戦を強いられたが、最近発見したマラリスのおかげで、それも解消してきている。火属性のマラリスのせいでの髪と目の色が赤くなってしまったのは不本意だったが…。医者は問題ないと言っているけど…。医者はかなり適当なことも多く、奇病のひとつではないかと思っているだが…。




「どうする?お前がいるとずいぶん楽になる。来てくれないか?」

「テディー。お前が行く必要もないだろう?メラル帝国から勧誘が来ているそうじゃないか。今さら危険を冒すこともないだろう?お金にも困っていないと言っていたし。」

「そう言われればそうなんだがな…。」




 現在、大きく分けて四つの国がある。その前にこの世界には大きな大陸は二つしかない。1つはメラル大陸。もう1つはクトル大陸。メラル大陸はクトル大陸の半分しかない。メラル大陸にはメラル帝国がある。クトル大陸にはメジス国とイクト共和国がある。メジス国が北半分を支配し、反対にイクト共和国は南半分を支配している。後島国からなるガジス連邦がある。だいたいの戦争はメジス国とイクト共和国の戦争が主だ。この二つの国は考え方が大きく違うし、発展の仕方も違う。ガジス連邦は静観していることが多い。そしてメラル帝国はここ数年、戦争の準備をしていると噂されている。この3つの国々はそれぞれ得意分野があるために一進一退を繰り返している。イクト共和国は術にすぐれ、メジス国は騎士のレベルが高く、機動力に優れる。そしてメラル帝国は火薬兵器をたくさん持っている。しかし、この3国はガジス連邦には攻め入ることはない。内々の密約が交わされているということもあるが、それだけではなく鉱山なども少ないとみられるためにあまり注目されていないからだ。利益がないところにはさすがに国も手は出さない。他にも小国家があるがこれが主な国だ。この世界の変わっているところは季節が大きく分けて四つあり、時期によって多少の違いはあるが、大まかに言えば春夏秋冬で季節は流れている。もちろん、一部、砂漠地帯になっているところや熱帯雨林が茂っているようなところもある。そういったところにダンジョンが多いので困っているのだが…。



「マラリスを持っていると有利だろ。さすがに騎士になったからと言って、すぐに突撃して死ぬのはごめんだからな。モンスターは単純だからいいが、人間が相手だと何考えているか分からないから怖い。」

「大局を見据えた策略はそんなにないだろうと思うのだが…。言われればそうかもしれない。あることに越したことはないよな。」

「レリク。お前は前の大戦に参加しただろう。その時にはどう思ったかは知らないが、ずいぶんと沢山の人が死んだ。お前の親父さんも戦っていたそうじゃないか。」




 今から2年前、俺が大砂漠のダンジョンでマラリスを手に入れてから、少し療養している間に傭兵として雇われることになった。ここ100年ぐらい起きていない大きな戦争だった。メジス国が10万、イクト共和国が8万。凄い戦いだった。いたるところで術が放たれ、弓矢が降ってくる。まるで雨のように…。互いに一歩も引かなかったが、あまりに消耗が激しくメラル帝国が介入しそうなので、講和が行われた。双方合わせて戦死者4万人、重傷者3万人を超える最大といえる戦いになった。俺はイクト側に就いて、騎士防衛の作戦に参加した。騎士は機動力を生かして他方から攻めてくる。イクトにも騎士がいるがそれだけでは全く歯が立たないため、傭兵を配備し対抗した。相手側の大将を討てば軍が瓦解し、簡単に終わる。特に騎士は指揮系統が統制されているため、そういうところが大きな欠点としてあげられるが…。




「違う違う。お前が戦ったんだよな…。まさか親子だと思わなかった。知った時はびっくりしたもんだ。」

「そうか?あまり似てないからな。しょうがないのかもしれない。」




 俺は初めて親父と対峙して分かったが、すべてを背負う覚悟ができている顔だった。俺を殺せばおそらく騎士としては権限が剥奪されるかもしれないと分かっていて、俺に剣を向けた。対して俺は槍。まさに逆のような感じだった。普通、騎士は槍、冒険者や傭兵は剣を使う。俺たちの戦いは死闘だった。俺が傭兵の中で大将となっていて、親父は突撃部隊の大将だった。お互いに引くに引けない状態だった。俺たちは結局3時間戦い続けた。次の戦闘に備えることができないほどに体力を消耗し、双方の作戦は失敗となった。それが皮肉にも戦争を停滞化させ、長引く要因にもなった。




「今でもあの戦いは伝説になっている。俺も見たかった。」

「そんなにたいしたものじゃなかった。お互いの嫌がることばかりやっていただけさ。結局引き分けに終わったし。まさかメラルが介入してこようとは思わなかった。それでよかったのかもしれないが。」

「そうだな。あのまま続けば、今よりも傷痕は深かっただろうな。それももう間もなく講和期間が切れようとしている。あれから2年。どうなるかね…。おっと話が脱線したな。明日までに返事をもらいたい。人数は30人ぐらいいるから大丈夫だと思うが。」

「30人?そんな大がかりなダンジョンなのか?」




 普通、ダンジョンに入る時でも4人ぐらいで編成していくのが常識だ。あまり多すぎたら、指揮系統が混乱して統率をとるのが難しくなる。そのうちの一人は水属性を中心に扱うものを入れている。それは誰かが負傷したときに簡易的な治療をその場で行うことができるからだ。俺も目を失ったときに1人で入ったのを後悔したものだ。しかし、メンバーは思ったほど集まらない。冒険者は一人で行動することが多く、社会性に乏しいというほかない。そういう風な状況から作られたのがギルドと呼ばれるものだ。ギルド自体は酒屋のような感じをかもし出して入るが、その奥に入ると殺気に包まれるような雰囲気になる。一人でできないから集団で行くのであり、本当は一人で自由に行動したいのだ。たいていの場合は成功した配分をどう分けるかで問題になる。そういった面では協力するような感じではあるが、出し抜いてやろうという狡いやつがいるものだ。それがその雰囲気をかもし出しているということができる。ギルドはそういう仲間の紹介の他にもさまざまな仕事を斡旋している。たとえば、鉄を持ってきてほしいとか、金を掘ってほしい。モンスターの一部が利用したいなど。採取から討伐、ひどいのでは暗殺というのもあるが、それは闇ギルドというのが主流なので一般の人たちには関係ないものばかりだ。だが、今回の任務ではそれを確実に逸脱している。やばい線かもしくは大規模な討伐か。




「国からの依頼か?ここはメラル帝国だからあんまりこういうのはないはずなのだが…。」

「実はそうだ。大規模なモンスターが出現したらしい。先遣隊が全滅したらしい。」

「全滅?編成はどうなっていた?」

「騎士が200人。2大国には劣るかもしれないが、それでもこれはただ事ではない。表向きには討伐ということになっているが、今回は討伐ではなく…。」

「調査ということか…。」




 騎士200人では全く歯が立たないので、調査である程度調べてもらって改めて軍を派遣するということなのだろう。ようは今回の調査では死人が出る可能性が高いということになる。先遣隊のことを考えると30人では全く足りない。騎士200人のことを考慮すると、最低でもベテランの傭兵や冒険者が50人はいないと話にすらならない。おそらくテディーが最年長だろうから、俺に誘いにきたということになる。彼はこれから軍に所属するため、簡単にはこの要求を返すことはできなかったのだろう。彼自身もこの人数では足らないことをわかっているはず。あくまで、実際の内容は調査になるわけだから、この人数で俺を加えれば、全滅ということは最低でも免れると踏んでいるようだ。個人的に彼には何度か助けてもらったこともあるし、いったほうがよいのだろうか。勘ではかなり危ない任務な気がする。まあ、最後ということもあるし、今回限りということで勘弁してもらおう。




「分かった。行くよ。しかし、今回だけだ。さすがにこの内容じゃ信憑性にかけるし、実際に金を払うかどうかもわからない。」

「もちろん、その方がいいと思っていた。お前はまだまだいけるからな。じゃ、頼むぞ。集合は2週間後だ。場所はガーネット鉱山だ。昼の一時に来るといい。」

「いや、あそこはもう調査済みだと思うが…。俺も…。」

「何か嫌な感じだが、受けてしまったものはしょうがない。どちらにしても、この仕事を請けた後に断った場合の仕事不履行金がかなり高額なっていてな。俺の金じゃとてもじゃないが払えない。」

「万全の状態で行く。嫌な予感がする。他の連中は大丈夫なのか?」

「俺の個人的な意見としてはかなりのベテランを揃えたつもりだ。俺自身も武器を新調して、もう慣らしてある。」

「打つべき手は打っているみたいだな。じゃあ、俺は行くよ。これからいろいろ買いたいものもあるし。」

「分かった。必ず来いよ。止めなくていいんだな?」

「ああ。受けるよ。あんたには十分過ぎるほど借りがある。今回で帳消しということにさせてもらう。手続きはよろしく頼む。」


 そう言って俺は外に出て行った。



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