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デビル・ジュエリー  作者: かかと
赤眼のレリク篇
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赤眼のレリク 第99話

~宿にて~


一応、話はしたが、彼らはどうも納得できない部分があるらしい。


「しかし、この時期にアクアなんて、同姓同名というには偶然過ぎませんか?」

「いや、それは俺も感じたところだ。それに氷を使うところといい、何か関係があるのかもしれないと思ってな。だが、確証は何一つない。」

「それにしても、この戦力外を連れて行くのは危険だと思うわ。ここら辺ならともかく、断末の谷になんてとてもじゃないけど不可能。」


ラリアが言うことももっともだ。それよりも気になることないわけではない。今、何かしら感じているのだが、


「お前ら、アクアの情報は手はいったか?」

「はあっ?私ならここにいるじゃない?」


俺たちは頭を抱えた。


「これじゃ、まともに話もできない。じゃあ、犯罪者の頭文字をとって“H”にしよう。そうしたら、間違いがない。」


しかし、そこでロスが茶々を入れた。


「“H”ですか…。なんか卑猥ですね。」

「ククッ。」


どうやらラリアもつぼに入ったらしい。


「どうでもいい。早く答えろ。」


俺は半ばやけくそになっていった。


「はい。いや、それよりも深刻な状況になっているのですよ。レリクさん…。国々の状況は知っていますか?」


正直、ここ4ヶ月、そんなことに気を配る余裕なんてなかった。それより“奴”を助けなくてはいけなかったし、


「どうしたんだ。」


ラリアが答えた。


「それがね…。」


話を聞くに…。ここ最近は戦争どころではなく、内乱が起きているらしい。軍備の増強を各国が競って進め、それによって国民が疲弊してしまったらしい。それに呼応するかのように各国の貴族が反乱を起こし、どうやら、既存の国はもうどこにもないらしい。イクトもメラル、ガジス、メジスも国として機能はしていない。小さな国としては存在はしているが、もはや、大国と呼べるような力はどこにも残っていない。今では貴族が乱立し、各国では内乱状態にあるようだ。しかし、ここ最近はそんな様子は見当たらなかったが…。


「それはそうでしょう。さすがに何ヶ月も戦えるような軍隊はどこも持っていません。」


それもそうだな。しかし、こんな状態になっているは…。


「まあ、これはいずれこうなるとは思っていたけど、まさか、私たちが生きている間には起こるとは思っていなかったわ。特に貴族は反乱なんて起こすような感じではないのにね。」


そうなのだ。貴族はむしろ国民から税を取っているほう。確かに国を乗っ取ることで得る利益や権威は大きいかもしれないが、それ以上にデメリットのほうが大きすぎる。少なくとも、今の安定した時代に貴族が反乱を起こすこと自体ありえないことだ。


「どうやら、これは“H”が絡んでいるようにしか思えない。」


俺はそういってみたが、なぜかコミカルな雰囲気になってしまうのはなぜだろうか?


「その呼び方でいいことにしましょうか。まあ、絡んでいるとして間違いないでしょうね。」

「しかし、彼女にはこんな力があるのかしら?今までとは範囲が明らかに違うし、何100キロも離れた人を操ることなんて不可能に近い。」


確かにそうだ。少なくとも50キロぐらいしか操ることはできないはず…。何かしら力を得たのか…。


「とにかく、その“たんまつのなんちゃら”に行けば解決するでしょう?」


俺たちはアクア(仮)をみた。


「なんて頭の悪さ。しかも短い名前なのに…。」

「何ですって!」


まったく、この二人は…。


「どうします?レリクさん。僕たちは必死に探してはいましたが、目撃情報すらつかむことはできませんでした。」

「本当か?」


俺は驚きを隠すことはできなかった。


「ええ…。どうしたんです?そんなに驚いて…。」


どうやら、思ったよりも大きな声を出してしまったらしい。女の二人ともがこっちを見ている。


それでは、俺がやったことは間に合わなかったのか?いや、確かに“奴”の気配は感じたはずなのだが…。


「それが本当なら、“H”は断末の谷にいると考えて間違いない。」


ラリアとロスがこっちを見た。


「どうして、そういえるの確かな情報もないのに…。」


ラリアはそういった。だが、時間がない。


「すまないが、明日にはここを去る。すぐに断末の谷に向かわないと手遅れになる。」


ロスとラリアは考えていた。


「はあ、何も教えてくれないとは…。」

「でも、その様子…。あながち嘘でもないようね。」

「話についていけない…。」


まあ、一人は置いておいて…。


「明日に備えましょう。ここからはかなり遠い。その間に話を聞いても遅くはないですね。」

「うん。そうね。アクアもある程度、訓練しないといけないし…。徐々に話を聞きましょう。」


それで俺たちはその日、解散した。


これを狙っていたのか…。





~一ヵ月後 ガラリス砂漠~



「まだまだね。」


そういって、ラリアは術を放った。

あれは確かロスに使っていた封印術だな。

どうやら、改良をしてあるらしい。

追尾の能力がついたようだ。


あれは厄介だな…。彼女ならどう防ぐかな…。


「ちょっと…。」


アクアは砂に埋もれていく。


ザアアアアア


アクアの中心が大きく穴ができる。


「まるでアリ地獄ですね…。」

「ああ…。そうだな。しかし、ここまでになっているとは思っていなかった。」

「僕もです。」


俺はロスを驚いたように見た。


「お前たちに別々に行動していたのか?」

「ええ、そのほうがばれにくいと思いましてね…。おそらく、二人が一緒にいれば術エネルギーの量が多すぎて、普通の人でも気付くかもしれません。」


それはそうだが…。それは一人でいても同じじゃないか?俺はそう思ったが、口にはしなかった。おそらく、ロスがラリアと一緒にいるのを嫌ったのだろう。あいつはいろいろ煩いしな。まあ、人それぞれだ。


「だが、お前には弟がいたのだな…。」

「どうして、それを?ラリアとテディー、それにウルゲド、少数の人間しか知らないはずですが…。まあ、私も一応犯罪者に近い身分でしたから…。」

「そうか…。帳消しにしたといっても、すぐにリストが出回るわけではないからな。それはしょうがない。」

「まあ、レリクさんみたく売れすぎるのも問題ですがね…。しかし、ここ最近は割りと過ごしやすかったです。何より死んだと思われていますから。」


ということはロスの家族は生きていることは知らないということになる。何かしら、あの弟、厄介な問題にならなければいいが…。


「どう、赤眼?」


俺はラリアのほうへ目を向けた。ここはもう砂漠の中心部のはずだ。この調子でいけば、断末の谷にはもう少しだ。


「そうだな。思っていたよりもアクアは使えそうだな。」

「クク。」


ロスが笑っている。

それに反応してラリアが目を吊り上げた。


「そうではない!彼女では私のほうだ!」


なるほど…。そういうことか…。しかし、


「これは砂があることでしか使うことができないな。そこが弱点だ。」

「うっ。まあ、そうなんだけど…。赤眼みたいにフィールドを作用させるような能力まではないけど…。少し時間がもらえれば、やることもできなくはないと思う。砂漠みたいに力は強くないかもしれないけど…。」


使いどころによっては役に立ちそうだな…。


「まあ、そこはまだ時間があるだろうから、みんなで連携することにしよう…。」


「このっ。無視してんじゃないわよ!」


アクアは自力で這い上がってきた。しかし、彼女は力を増しているように思う。普通はここまで極端に能力が上がることなんてないはずだ。


「どうやら、詰めが甘いな。」

「えっ?」


俺はアクアを殴り飛ばした。


ザザザザザ


彼女が砂漠に叩きつけられる音が聞こえた。タフだな。俺も前よりは本気でやっている。どうやら、何かをつかみかけているらしい。


「どういうことですかね?昨日はあの術に手も足も出なかったはずですよね。」

「ああ。確かに。」

「何か体に異変があったとか?」

「それはラリア、お前が近くいるのだからお前が一番わかるはずだろう?」

「う~ん…。」


俺たちは思案した。しかし、彼女が戦力になりつつあるのはうれしい誤算だ。“H”にはおそらく適わないまでも、それ以上に対抗できる術があるのは戦略上、重要なことだ。


「どちらにしても、このまま、様子を見るしかないだろう。しかし、これは彼女には黙って置けよ。」


この二人には彼女の暴走のことを話している。確かにあの時は無理なくとめることができたかもしれないが、今では少し力が要るだろう。

二人は頷いた。


「今、暴走されたら、体力を消耗してしまうものね。」

「まあ、一応、彼女には水担当ですから、飲み水が雨水になるのは少しいやですね。」

「いや、お前ら、そういう問題ではないだろう?」


こいつらは心底、この状況が面白いらしい。まあ、俺も若干、楽しくはあるが、


「もう怒った。本気でやりやがって、レリク。あんたって人は…。加減というものを知らないの?」


彼女はゆっくりと起き上がった。どうやら、まだ体力的には戦えるらしい

いやいや、お前が本気でやれっていったし、そもそもラリアも本気だったはずだが…。


「いや、俺は本気じゃないぞ…。俺を本気にさせるならこれぐらいやってみろ。」


そういって俺は右手を上げた。


炎の柱が砂漠の中から無数に出てくる。


「おお、すごいですね。」

「へえ…。」


二人とも感心しているらしい。


「くっ。」


アクアは必死に防御に徹している。


その間にも炎は次々と出てくる。しかし、彼女はそれを氷で防いでいるようだ。


「器用に扱うわね。」


アクアは全身の周りを固めるわけでもなく、防御しているようだ。おそらく、体内の術エネルギーを自分自身に使っているのだろう。それは確かに有効な手段でもあるが、同時にリスクを伴う。


「う、腕が…。」


どうやら、左腕が動かなくなってしまったらしい。

ほかにも体中に凍傷ができていることだろう。


「限界みたいね。」

「そうだな。」

「しかし、ここまでになるとは…。」



俺は術の行使をやめた。でも、俺にはもうひとつ大きな問題がある。



ドサッ



炎で打ち上げられた彼女が地面へ落ちた。



ラリアは彼女の傷の手当に向かっていった。


俺は自分の腕を見ていた。


「どうか、しましたか?」


ロスが少し不安げな顔で俺を見てくる。


「いや、何でもないさ。それよりも早く行ってやれ。」

「わかりました。」


そういって、俺はロスをアクアの元へ向かわせた。

なぜ、俺に反応しない…?


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