赤眼のレリク 第98話
~宿にて~
「一応、作戦は成功しているみたいですが…。いったい、この女の人は誰です?」
「教えなさい。赤眼!」
だから、めんどくさいことになるって言ったんだ…。
~4ヶ月前 レリク視点~
「えっ?」
「何?」
彼らにはわざと外すように術を放った。
「どういうことです?」
ロスは首を傾げた。
「俺は情報に元にイクトに向かう。」
「イクトに?」
ラリアもよくわからないらしい。それはそうだろう。
「俺も親父から聞いただけだ。それにここの国にはいずれ戻ってくることになる。」
ロスは今でも不可解なようだ。
「まあ、それはいいとしても理由まで言ってくれないのですか?」
「ああ、これは人に言えることではない。それに、俺は早く知りすぎたのかもしれない。」
「どういうこと?」
とりあえず、確認しなくてはいけないだろう。
「すまないが、お前たちはここで仮に死んでもらう。その間にアクアの情報を調べていてくれ。俺が帰ってきたときには本格的に断末の谷に潜入する。」
ロスは少し何かを感じたのかもしれない。
「分からない!ちゃんと説明してもらわないと…。」
ラリアは怒鳴った。
しかし、それをロスがとめた。
「もやし。」
「どうやら、レリクさんには何か知っているようですね。僕たちが知っていけないような事実を…。」
俺は頷いた。
「それはアクアにつながっている。だから、別行動を取ろうということですね。」
こいつも頭がよくなった。いや、俺を理解しているだけか…。
「では、戻ってくると約束してくれますね。」
俺は考えた。距離的には少し離れているから、時間はかかってしまうかもしれないな。
「半年はかからないと思う。港で待っていてくれ。」
このメラル国の他国に開いているの港はひとつだけだ。
「むう。何を言っているのかまったく分からない。でも、戻ってくるのね。」
「ああ。あいつは今のままでは倒すことはできないだろう。」
「「!」」
二人が驚いた顔した。それはそうだろう。倒せるだろうと思っていたはずだからな。
「まあ、そういうことだから…。悪いな。今のままでは限界がある。とりあえず、お前たちには仮に死んでもらって、あいつを欺かなくてはいけない。」
「なるほど、しかし、ばれてしまうのでは?アクアはあなた以上の探索能力を持っているはずです。」
「たとえそうだとしても、彼女の狙いは俺だけだ。お前たちは眼中にない…。これ以上は教えられない。」
ドサッドサッ
俺は木を彼らに見立てた。
「それにお前らの術を放て」
「はい。」
二人は半信半疑ながらも、それぞれ術を放った。
「よし。」
俺は確認して、それを炭にした。
「なるほどね。ここまで炭化させてしまえば、今の技術では無理か…。」
「そういうことだ。」
ここでは判断できないほど、腐った死体は術エネルギーによって判断する。ギルドには自分の術エネルギーを登録してある。だから、ここではほぼ正確に犯人をつかむことができる。しかし、このようにしてしまえば死体をごまかすことができる。俺の術エネルギーを感じることをできるのは当然だ。俺が術を放って彼らを殺したのだから。それは間違いない。だが、彼らは術を放っただけ。しかし、この仮の死体には彼らの術エネルギーが宿ることになる。
「うまいですね。ここまで考えていたんですね。」
ロスは感心したように俺を見た。
「そんなわけないだろうが!」
「はっ?」
「気がつかずに、薬を飲んでいれば俺の計画通りに言ったんだぞ。ラリア、お前、俺を見張りやがって!」
「何ですって。私をあなたを心配して…。」
それをロスがとめた。
「もうやめましょう。これ以上ここにいるとばれてしまいます。ラリア。僕たちはレリクさんの足手まといでしかありません。」
彼女は下を向いた。
本当はかなり実力があるだがな…。俺がおかしいだけだ。
彼女は顔を上げた。
「そうね。赤眼の言うとおりにする。」
彼らは森の中に消えていった。さて、俺はもう少し、派手にやるか…。
俺は術を放った。
~宿にて~
「連れがいることは聞いてませんが?」
ロスは余計な人を巻き込むのは好きではないらしい。
「そうね。理由を聞かしてもらう。」
ラリアは別の理由らしい。
「ちょっと待って?私はあなたたちのことを知らないのだけど?」
話すのもややこしいことになりそうだ。
~アクア視点~
あれから、どれくらい走っただろうか?この草原には終わりが見えない。
私たちはひたすらここを走っている。
「アクア。大丈夫か?」
彼が私の横に来て話しかけてくる。彼の亀は宙を飛んでいるように見える。
「それにしてもあれはどこまで追ってくるの?」
私は後ろ振り返った。そこにはまだ黒いものが迫ってきている。
彼は首を振った。
「分からない。そもそも、私の存在がばれてしまったこと自体、ありえないことなのだが…。何かが変わり始めているらしい。」
そういって、彼は前を見た。
キュウウウウイイイイイ
彼の肩にフェニックスが止まった。どうやら、足止めはここまでらしい。
「すまないな、さて、ここからどこまで逃げられるかな。」
彼は自分の剣を空中で振るった。何しているの?あたるわけないじゃない?
ズガガガガッガ
彼の振るった剣先から見えない何かが飛んでいった。
それは黒い物体を切り裂いていく。
術の感じはしない。これはどういうこと?
「たいした足止めにはならないか。」
彼は剣を鞘に納めた。
「ここからは根競べになりそうだ。君は術を使えそうか?」
彼にそういわれて、私は手のひらに力をこめた。しかし、何も起こらない。というよりも、私自身に術エネルギーがないように感じる。
「やはり、使えないか…。」
彼にはある程度、予測はついていたらしい。しかし、私にはさっぱりだ。
「どういうこと?」
「こんな状況で話すのは好ましくなかったが、仕方あるまい。」
「いったい?」
「君は体を乗ってとられている。というよりも術エネルギーの部分だけを…。今のところはだが…。」
私は言葉が出てこなかった。