赤眼のレリク 第93話
~アクア視点~
「このような話を信じることはできません。」
私は彼に向かってはっきりといった。
「信じられないのも無理はないだろうね。特に君のような世代には理解できないかもしれない。」
「世代?」
「いや、君には早かったかのかもしれない。それに彼も…。」
「何の話をしているのか、わかりません!」
私は思わず語気を荒げてしまった。
彼は驚いたように言った。
「私は少なくとも君には嘘をついていないよ。この話は真実で君自身も関わっている。」
「馬鹿らしい。そんなことありえない。」
「しかし、君には信じてもらうしかない。」
彼は首を振って答えた。
「もう、いいです。」
そういって、私は部屋のドアを開けようとした。
しかし、彼の手がそれを止めていた。
「すまないが、それだけは容認できない。理解できないというなら、実力行使しかない。君が開放されてしまえば、大変なことになる。」
「だから…。」
どうやら、彼のそばにいた動物たちも彼に賛成なようだ。ドアの前にちょこんと座っている。
「彼らに免じて、ここは出ないでもらいたい…。」
彼は私に対して深々と頭を下げた。彼の着ている服装からして、私なんかよりもずっと上の身分だろう。その彼が頭を下げている。これだけで相当な屈辱に違いない。彼の決意が伝わっていた。
私はやけになりながら、椅子へと腰をおろした。
「わかりました!」
彼は私に対して微笑んだ。
「わかってくれて助かる。外では君を守れないだろう。」
「あれは何ですか?黒い物体?」
「あれか、君を“闇”へと導くものだ。」
「でも、あれはレリクの格好をしてました。」
私は窓から見た。その彼はもう消えてしまっている。
「そうか、君にはそう見えたのだね。私には違う人に見えていた。」
「えっ?」
彼にも見えていた?でも、それがレリクではなかったことはどういうこと?
「驚いているようだね。しかし、これは事実だ。私にははじめがレリクがどんな人なのか“感じる”ことはできる。でも、“見る”ことはできない。」
「見ることはできない?」
「そうだ。見たことがないのだから…。」
そうか…。見たことがなければ、彼がどんな容姿をしているかなんてわからない。
彼は続けた。
「それに彼は“消えた”。そんなことがありえるかい?」
そうだ。彼は確かに私の前で消えた。普通ではない。
「結論を言ってしまうと…。」
彼は言いにくそうだった。まるで、自分が苦しめられているようだった。
「われわれはここに縛られているのだよ。」
私の頭の中は混乱状態だった。