第七話 セネガンド王国にて
第七話
セネガンド王国の王都、聖都ルミナス。
その最上部にある謁見の間では、サガラ騎士団長セドリックの報告が、列席する重鎮たちの魂を激しく揺さぶっていた。
「……以上が、調査報告にございます。我が騎士団を救い、化け物を塵に変えたあのお方は、自らを仙人パトスと名乗られました。一千年の封印から昨日目覚めたばかりだとも……」
その瞬間、宮廷歴史学者の一人が、持っていた記録板を床に落として砕いた。
「い、一千年前……!? 聖暦が始まった直後この世界が滅亡の淵に立たされた、あの大厄災の時代か……!」
「パトス様は去り際、こうも仰いました『古の隣人が目覚めたと伝えろ』……と」
――総毛立つような沈黙。
国王セネガンド三世は、震える手で膝を突き、玉座から滑り落ちるようにして立ち上がった。
「古の隣人……! 聖典の冒頭、失われた第一章にのみ記された、あの伝説の呼び名ではないか! 一千年前、天を覆い尽くさんとした大厄災を、圧倒的な魔法を以て打ち払い、我ら人類にこの大地を返してくれた救世の神々……!」
歴史学者たちが口々に、禁忌の伝承を語り始める。
「伝承では、大厄災を退けた神々は、いつか人類が再び繁栄する日まで眠りにつくとされていた……。あのお方は、末裔などではない。一千年前にこの世界を救い、再び眠りについた神そのものの再臨だというのか……!」
セドリックは、脳裏に焼き付いたゼノンの姿を思い出し、確信を込めて頷いた。
「間違いありません。あのお方は、時の流れすら超越しておられました。空間が歪むほどの魔力を抑え込み、一千年の眠りから解かれたばかりゆえか、この世界の拙い歩調に身体を合わせるのを厭うているかのような、悠然たる歩み……。陛下、我ら人類は、神々の安眠を邪魔してしまったのです!」
「……何ということだ。我らは……我らは、なんという不敬を!」
国王は、傍らに置かれた国宝聖天の杖を見つめ、絶望に顔を歪めた。
「直ちに、直ちに特使を派遣せよ! 決して敵対してはならぬ! 我が国の全財産を投げ打ってでも、仙人パトス、否、古の隣人への謝意を示すのだ!」
こうして、セネガンド王国は「一千年前の救世主」の機嫌を損ねぬよう、国を挙げての貢物準備を開始した。
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