表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/307

屁で宇宙遊泳することは可能なの?

◤SF設定考察メモ◢



■ 概要


「屁で宇宙遊泳する」というテーマは、ユーモラスでありながら、一見すると純粋な冗談のように思えるかもしれない。しかし、SF作品の中では身体の微小な動きや噴射による宇宙空間での推進が扱われることもあり、「屁」を推進源とするアイデアにも科学的な一考の余地がある。本稿では、屁(人体の排出ガス)を推進力として宇宙遊泳(無重力空間での移動)に使用することが物理的に可能かどうかを、「力学的観点」「質量・速度」「実用性と制約」の3点から評価する。



■ 用語解説


・屁

 主に窒素、酸素、水素、メタン、二酸化炭素などのガス成分からなる人体の排泄ガス。

 音や匂いの原因となるのは主に硫化水素やアンモニアなどの微量成分である。


・宇宙遊泳

 宇宙空間で宇宙服を着用し、船外での活動を行うこと。

 現在は主にスラスターやロボットアームによる移動が主流。


・運動量保存則

 外部から力を受けない閉じた系では、全体の運動量は一定に保たれるという物理法則。

 推進はこの法則に基づいている。


■ 不可能


1. 推進力として極めて微弱


屁は確かに気体を排出する動作であり、方向性があれば逆方向への微小な反作用が発生する。しかし、推進として考える場合、重要なのは「排出される質量」と「排出速度」である。屁は1回あたり50〜150ml程度(おおよそ0.05〜0.15リットル)のガスで構成され、その速度は秒速数メートル程度に過ぎない。これをニュートンの運動量保存則に当てはめた場合、1回の放屁で人体が得る速度は約0.00001m/s程度に留まる。


つまり、屁で進もうとしてもほとんど移動せず、何十回何百回放っても距離は数ミリメートルに過ぎない。


2. 宇宙服が放屁を外に排出できない構造


現実の宇宙遊泳では宇宙服を着用しており、この中は密閉された生命維持システムによって加圧・酸素供給されている。宇宙服の中で放屁しても、それは単にスーツ内に残るだけであり、外部に噴射されることはない。したがって、推進力として使うには、「宇宙服の外に直接ガスを噴射する機構」が必要となるが、そのような設計はされていない。


3. そもそも人間の屁では自力移動は実用的でない


仮に宇宙服を脱ぎ、屁を直接外に噴射できるような状況があったとしても、上述の通り推進力は極めて微弱であり、何メートルも移動するには何百時間もかかる。しかも、体内のガス生成には時間がかかるため、連続的な推進ができないという問題もある。


また、屁の成分にはメタンなど可燃性ガスも含まれるが、真空中では燃焼も起こらず、爆発的な力を得ることもできない。いかなる意味でも「推進機関」として機能させるには、極めて非効率かつ非現実的である。



■ 締め


結論として、「屁で宇宙遊泳すること」は科学的に不可能である。運動量保存則の観点からは、たしかに微小な反作用は生じるが、その推進力は現実的な移動に必要なレベルには到底達しない。加えて、宇宙服という密閉構造の中では放屁が外に出ることはなく、ガスがスーツ内に充満するだけである。また、人体が排出できるガス量と速度は限られており、仮に自由に噴射できたとしても、意味のある移動距離を得るには非現実的な回数の排泄と時間を要する。


この設定をSF作品で使いたい場合は、「冗談として描写する」あるいは「屁の成分を高圧縮・加熱してマイクロスラスターに加工する」など、現実を大きく逸脱した設定が必要である。ただし、物理法則に準じたリアルSFの文脈では成立しないと考えてよい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ