表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

情報整理

「ミゲル! どうなっている!」


 しばらくすると、ヤグモさんたちが合流してきた。


 結構飛ばしてきたのか、馬たちに疲労の色が見える。


「ヤグモ、街のみんなの救護に当たってくれ。事情はあとで話す」


 一人でも多く助けたいという思いが伝わってくる。


「わかった」


 それをヤグモさんも察したのだろう。何も言わずに指示に従う。


 街の方へ向かっていくヤグモさんの背中を見ながら、ミゲルさんは口を開く。


「オキニス、俺らはこっちだ。行くぞ」


 断るなんて選択肢は、僕の中にはなかった。




 朝一に街に戻ってきたのだが、街の人の救護に回っていたらもう日が沈みかけていた。


「さすがに疲れました……」


 キャラバンの中に乗り、項垂れながら僕は言った。


「予想以上にけが人が多かったな。家も全損して、外で寝泊まりするやつもいる」


 辺りを見渡すと、家のあった場所の前で横になっている人達がいる。


「さて、もうひと踏ん張りだ。アジトの確認をするぞ」


 ひょいっとキャラバンから飛び降り、軽い足取りでアジトへと向かうミゲルさん。


 それに、僕らは続く。


 道中、僕らは一言もしゃべらなかった。色々あったので、各々整理の時間が必要なのだろう。


「着いたな」


 アジトは上の部分が吹き飛んでいるが、建物としての形状は保っていた。


 建物の中に入ると、辛うじて食堂が原型を保っていた。


「随分と風通しが良くなったなぁ」


 ミゲルさんはそういうが、窓ガラスは割れ、壁はところどころに穴が開いていた。風通しがいいどころの騒ぎではない。


「それで、何があった?」


 流れを断ち切るようにヤグモさんが言う。


「……街はバケモノによって破壊された」


 ややあって、ミゲルさんが答える。その顔は苦痛に耐える表情に似ていた。


「バケモノ、ですか……。もしかしなくても、なぞの音の後に空へ飛び立ったアレ、ですか……?」


 返事をしたのはサラさんだった。ミゲルさんの説明で足りない部分を補足するような質問だ。


「ああ。そいつらにおっちゃんはやられた」


 その言葉に反応したのはカミラさんだ。


「あの爺さんが死んだっていうのかい?」


「そうだ。おっちゃんは最後にこう言った。『上級国民に気をつけろ』ってな」


 僕も聞いていたものだ。驚きはないが、改めて聞くととんでもない話のように思える。


「上級国民、か。謎の音が鳴った後、バケモノの背中に人が乗っていたような気がする。もしかしたら、それが上級国民だったかもしれないな」


 帰っている途中に見たのか、ヤグモさんがそう言う。


「真相はわからない。だが、その可能性は高いだろうな」


 腕を組み、考え事をするような様子のミゲルさん。


 今回の事件は、不可解な点が多すぎる。謎の音に空飛ぶバケモノ、さらには上級国民の存在。


『空には魔物がいるとも言われている。上級国民は独自の技術で島を守っているらしい』


 ふと、ヤグモさんの言葉が頭の中をよぎった。


「魔物……」


「オキニス、なんて?」


 考え事中にぽろっと言葉にしてしまったものを、カミラさんが拾う。


「いえ、前にヤグモさんから教えてもらったんです。空には魔物がいるって。もし、上級国民が魔物を操れる手段を手に入れていて、地上を襲ってきたとしたら……って考えたら辻褄が合う気がして……」


「……なるほどな。確かに、そう考えると納得がいく。が、何のために今襲ってきたのかがわからないな」


「そうですね。その理由まではわからないです」


 理由、か。上級国民にはあったことがないので、何を考えているかはわからない。他の街でも同様のことが起きているのか、それとも、今回のが世界初なのか。


「ま、考えてもわかんねぇな。明日は素材屋に行くか。今日は疲れた。休もう」


 そう言って、ミゲルさんはアジトの外に消えていく。その顔には、いくつかの迷いが見えた気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ