能力
今まで書いていたものはこれで全部です。しばらく更新はしないかもしれません
「おう、おかえり」
アジトに着くとミゲルさんが迎えてくれた。
「オキニス、街はどうだった?」
「とてもいいところでした。みんな活気に溢れていて、僕も元気になりました」
「そうか。そいつは良かった」
ミゲルさんはニシシと笑い、そう言ってくる。
「そういえば、これが今回の報酬だよミゲル」
「ほぉ~、素材屋に行ってきたのか。てことはあのお転婆と会ってきたのか?」
お転婆とはリンさんのことだろうか?
「ああ。今回は少な目ですねなんて言われちゃったよ」
「はは、あいつらしいな」
リンさんとは長い付き合いなのか、信頼関係の元成り立っているやり取りに感じた。
「そうだ、ミゲル。もう一つ報告があるんだ。アジト内に来てほしい」
「ん? ああ、わかった。そろそろ俺に告白でもするか?」
「馬鹿言ってんじゃないよ。先行ってるからね」
「はいよ。俺ももうちょっとしたら行く」
その言葉を聞いて、カミラさんはアジトへ入っていった。
「オキニス、俺らが何をしているか、聞いたことはあるか?」
「はい。猛獣狩りをしていると聞きました」
「そうだ。それには危険が伴う。ついてくる気はあるか?」
少し悩む。確かに猛獣と戦うのはリスクが伴うだろう。それに、けがをする可能性だけではなく、死に至る可能性すら……
「……行かせてください。戦力になるかはわかりませんが、解体でもなんでもやります」
しかし、僕はミゲルさんに拾われなければ命を落としていただろう。それを考えれば、ミゲルさんたちのためにこの命、使いたい。
「よし。いい返事だ。出発は三日後だ。明日お前さんの武器を買いに行こうじゃないか」
「わかりました。ありがとうございます」
そこで、ミゲルさんは手を差し出してくる。自然と手が伸び、握手を交わす。
──バチン
リンさんの時より、もっと強力に何かが繋がった感覚がある。
「それじゃ、俺はちょっくらカミラのところに行ってくる。自由に過ごしててくれ」
「わかりました」
「そんで、報告ってのは?」
アジト内の会議室にて、俺はカミラから報告を受けていた。
「ああ、オキニスについてだ」
「ほう」
なかなか興味深い。出会って間もないのに報告が来るなんて、予想より早かったな。
「あの子の能力の片鱗が見えた」
「なるほどな」
すると、俺の勘が告げる。
「……握手がトリガー、とかか?」
「相変わらずあんたは気持ち悪いね」
いつものように罵倒される。
「そうさ。リンと握手をしたときに何かが繋がった気がしたんだと」
「つながる、ねぇ……」
それが何を示すのか、今はまだわからない。だが、トリガーがあるタイプだと分かっただけで大きな収穫だ。
「俺も握手したんだが、特に何も感じなかったな。オキニスだけが感じられるんだろう」
「へぇ、握手したんだね。それも勘かい?」
「ああ。なんとなくしたほうが良い気がしたんだ」
「本当に気持ちが悪いね。ま、ちょっとずつ探っていくしかないね」
「そうだな。あいつも猛獣狩りについてくる。いずれわかるさ」
少し広い会議室に二人。人の気配はなく、声すら聞こえない。これこそ、カミラの持つ能力だ。
俺らはそれを人払いと呼んでいる。
「そんじゃ、みんなのとこに帰るか」
「そうだね」
カミラは人払いを解除し、俺らはみんなの元へと戻った。