アジトへ
気が向いたら投稿します。ゆっくりかもしれません。
「オキニス、起きろ」
「うぅ……」
「そろそろ出発だ。起きろ」
翌朝、ミゲルさんに叩き起こされた。僕はそんなに朝に強くないみたいだ。
「すみません、今起きました」
「おう、おはよう。今日は俺らが拠点にしてる街に行くぞ」
「わかりました」
そうしてミゲルさんについていくと、馬二頭と後ろに馬車が見える。
「ただの馬車だと思ったか? 俺らはこいつのことをキャラバンって呼んでるんだ」
キャラバン。とてもいい響きだ。
「すごくいいと思います。キャラバン」
「そうだろ? 俺が名付けたんだ」
誇らしそうな顔で、ミゲルさんが言う。
「ま、少し時間かかるから、キャラバンで寝てもいいぞ。街だけじゃなく、ちゃんとした拠点があるんだ。そこでゆっくり休もう」
「わかりました、ありがとうございます」
おそらく気を使って、休みにしてくれたのだろう。周りを見ると疲労がたまっているようには見えない。
「ようし、みんな行くぞ!」
ミゲルさんの掛け声で、みんなキャラバンに乗る。
キャラバンに揺られること数時間、おそらくミゲルさんたちが拠点にしている街が見えた。
「おはようさん。あれが拠点の街だ」
そういってミゲルさんは指をさす。風に靡かれながら、キャラバンは進む。
「地上では、治安が良いほうだ。正直地上は迫害を受けていて、時々上から人が送られてくる」
上を見上げながら、ヤグモさんは言う。
空賊に襲われる危険もある。なのに空から地上に送られているとは、相当なリスクがあるだろう。
「なんか嫌な予感がするなぁ……」
突然、突風が吹く。ミゲルさんの発言は、誰にも届くことはなかった。
「着いたぞ。ここが俺らのアジトだ」
ミゲルさんは慣れた足取りで少し大きい建物へと案内した。
屋敷とはいかずとも、下手な宿屋より広い。
「結構大きいんですね」
「まあな。部屋は一つ空いてるから、そこを使ってくれ」
「わかりました、ありがとうございます」
「すまない、俺は先に休ませてもらう」
ヤグモさんが声をかけてきた。彼は今日ずっと御者をしてくれていたのだ、疲れもたまるだろう。
「おう、ありがとうな。毎度すまないな」
「気にしなくていい」
それだけやり取りをし、ヤグモさんはアジトの中へと向かっていた。
「アジトの内装はサラに案内してもらってくれ。俺は少し街に顔を出してくる」
「はい、いってらっしゃい」
軽い足取りでアジトの外へと出ていくミゲルさんを見送る。
「あの……」
横から声をかけてきたのは、サラさんだ。
「家の中、紹介しますね」
気を抜くと聞き取れないような消え入りそうな声で言ってくる。
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあ、ついてきてください」
言われるままに、サラさんについていく。
アジトの内装は思ったよりもきれいで、細かいところまで掃除が行き届いている。
「ここが、私の、工房です」
サラさんはそう言いながら、アジト内にある施設を案内してくれた。
机の上には複数の機械があり、ぱっと見で時計が複数置いてある。
「ここで何してるんですか?」
「機械を、直したりしてます」
「すごいですね」
人は見かけによらないとは、このことか。
「本を読んでたら、できるようになってました」
どういうことかさっぱりわからない。まぁ、本人がそう言うならそうなのだろう。
「ここが、空き部屋です」
食堂や共有スペースを案内してもらった後、空き部屋に案内してもらった。
空き部屋は、ベッドと机があり、生活に困らなさそうだ。
「今日は、休みなので、この部屋を自由に使って、休んでください」
「はい、ありがとうございます」
サラさんが退出し、僕一人になる。
目覚めてから今まで、色々なことが起きた。
ミゲルさんに拾ってもらって、色々説明を受けて。みんな親切にしてくれてるし、いい人たちだ。
ベッドに横になる。
自分が何者なのか、未だ全く思い出せない。思い出そうとしても、記憶に靄がかかったかのように思い出せない。
「はぁ、これから何しよう」
このままミゲルさんたちにお世話になっていいのか。僕の記憶は戻るのか。不安の波が押し寄せてくる。
思考をしようとしても、睡魔が邪魔をする。僕はそのまま意識を手放した。