結果
「ミゲルさん、戻りました」
「おう。お疲れさん」
風通しの良くなったアジトで、僕たちはミゲルさんに報告をした。
「リンさんは考えてくれているようでした。ただ、迷っているようにも感じたんですけど……」
僕は感じたことをそのままミゲルさんに言った。ちなみに、サラさんはアジトに戻るなりすぐ自室へと向かったため、ここにはいない。
「まぁ、そうだろうな。ありがとな」
予想通りと言った様子で、ミゲルさんは答えた。本当に何の意味があるのだろうか。
「そんじゃ、飯でも食うか」
時刻は正午過ぎ。昼ご飯には少し遅い時間だが、ゆっくり食べるのもいいだろう。ミゲルさんの言葉に、僕はうなずいた。
空が茜色に染まり、街も落ち着いた時刻。俺は素材屋へと向かっていた。
「よぉ。元気か?」
未だ素材屋で復旧作業をしている少女へ話しかける。
「ミゲルさん……」
俺の姿に気づくと、少女は顔を上げ、いつもよりも低いテンションで応答する。
「オキニス達から聞いてるだろ? 返事を聞きに来た」
すると、やや間があってリンは喋る。
「やっぱロ、ミゲルさんの指示だったんですね。オキニスさんとサラさんを使うなんて卑怯ですよ」
拗ねたように言う。
「それで、どうして私なんですか? 別に今のメンバーでも問題ないですよね?」
当然、この質問は予想通りだ。なので、正直に答える。
「そうだなぁ……今のメンバーのままでいいってのはそうだ。ヤグモは器用で何でもできる。でもあいつはモンスターを足止めするタンクが一番得意。カミラは遠距離からの狙撃が得意。リンは機械系に滅法強い。だが戦闘力は低め。オキニスは強い。それに、全体も見れている。うちのアタッカーになりうる」
そこで俺は、一呼吸置く。
「そこに、俺が遊撃で入る。一見穴がないように見えるが、将来的にパーティの指揮をオキニスに任せたいと思ってるんだ」
「オキニスさんを……?」
「ああ。その時にオキニスをサポートできる人間が欲しいんだ。俺は後衛を守る役割になる。それにお前、操縦系が得意だろ?」
俺の言葉に、リンは驚く。
「どうして、それを?」
「これは勘だな。よく当たるんだ」
「またそれですか……」
諦めたようにリンは軽く息を吐いた。
「空に、行くんでしたっけ?」
「ああ」
「私も、空に行ってもいいんでしょうか?」
「もちろん」
「……あまり言いたくはなかったんですけど、襲撃によって、店の在庫がやられたんです。お金も復旧にほとんど使ってしまって、素材屋としてはもう営業できないかもしれなかったんです」
「だろうな」
素材屋は建物のほとんどが崩壊している。保管庫にもダメージがあることは一目でわかる。
「ミゲルさん」
リンは顔を上げて、力強い眼差しで俺を見てきた。
「私も、仲間にしてください」
「もちろん。出発は四日後だ。しっかり準備をしてくれよ」
「……はい!」
いい返事だ。まだ迷いはあるだろうが、後悔はさせないぜ。
そうして俺は、素材屋を後にする。みんなに報告しないとな。