決意
短めです
翌朝。
風通しの良くなったアジトで一夜過ごした僕たちは、自然と食堂に集まっていた。
「おはよう」
沈黙を破ったのはミゲルさんだ。その目は決意に満ち溢れていた。
「うん。このメンツならいける」
小さくつぶやかれたそれは、僕らには届かない。
「なぁみんな。空を旅してみないか?」
やや間をあけて、ミゲルさんは言った。
その言葉はあまりに予想外で、しかし心が躍る内容だ。
「空って……あんた正気かい?」
カミラさんの疑問は当然なものだ。
確か、空には上級国民か、空賊しかいないという話だったような。
「ああ、正気だとも。ただ、空賊になるつもりはない。冒険者になりたいんだ」
「……冒険者、ですか」
「そう。今回の襲撃について、不可解なことが多すぎる。謎のバケモノ、上級国民の存在。俺は、それを解き明かしたい」
確かに、あのバケモノが魔物だとして、なぜ上級国民がその影がちらつくのか。
「俺は一晩考えた。今後どうするのか」
昨日見せた迷いの表情はそれだったのか。
「みんなの命を預かることになる。でも、このメンツならどこまでも行ける。俺の勘がそう告げたんだ」
これからの人生を左右する言葉に、なんて言葉を紡げばいいかわからない。
「昔っから、お前はそういう男だった。お前ひとりには背負わせない」
その沈黙を打ち破ったのは、ヤグモさんだ。ミゲルさんを信用しているのか、その瞳はまっすぐミゲルさんを捉えていた。
「まったく……。いきなり変なことを言うんじゃないよ。誰もついていかないなんて言わないさ。でも、あんたの命も預かるからね」
カミラさんが続く。
「私も、空行ってみたいです。連れて行ってください」
続いてサラさん。
残るは、僕だ。
でも答えなんて最初から決まっている。
「僕も行かせてください。もともと行く当てなんてないんです。なら、皆さんと一緒に時を過ごしたいです」
僕の決意を聞いたミゲルさんはニヒっと笑った。
「ヤグモ、カミラ、サラ、オキニス。俺は、俺らならいけると本気で信じている。今日から準備に取り掛かろう」
「「「「おー!!!」」」」
みんなの声が重なる。今日から忙しくなる。そんな予感がした。