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シークレット・ラブ  作者: 朝海
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シークレット7

「お姉ちゃん!」

 ゆっくりと倒れていく姉の幸美と血だらけの床。

 横には血だらけのナイフを持っているみずきの姿。

 それを、雄二は冷徹な瞳で見ているだけ。

 愛理は幸美の体を支えた。

 なぜ? 

 なぜ?

 母親が娘を殺している?

 そんな権利などはいはずなのに。

 家族の命を奪っていいはずがないのに。

「あい、り」 

 弱弱しい声で幸美が愛理を呼ぶ。

 こんな弱弱しい声を聞きたいわけじゃない。

 ――愛理。

 普段と変わらない自分を呼ぶ柔らかい声を聞きたいだけだ。

 とても、華やかで。

 凛とした空気を身に纏う幸美の姿が大好きで。

 これからも、くだらないことで笑いあって、悲しいことがあれば泣いて。 

 それを、まだまだ共有したかった。

 必死に止血をする。

「やだ、やだ! 死なないで!」

 彼女は泣きじゃくる。

 幸美は愛理の頬に手をそえた。

 その手を握り返す。

「あなたは……幸せになってね」

「お願い! まだ、私の傍にいてよ!」

「愛しているわ……私の愛理」

「お姉ちゃん、嫌よ! 嫌!」

「ごめ……ね。情け……許して」

 ――ごめんね。

 情けない私を許して。

「何で、お姉ちゃんが謝るのよ! 何もしてないじゃない!」

「大……よ」

 ――大好きよ。

「私も好きよ。だから、私のために生きてよ!」

 力なくおりていく手。

 閉じられていく瞳。

 幸美のあっけない最後。

 死体は父親の手下が回収をしていく。

「父さん、母さん! どうしてお姉ちゃんを殺したのよ!」

 愛理は絶叫した。

 その声が部屋に響く。

「あら。賢いあなただけが生きていればいいのよ」

 みずきがにっこりと笑う。

 垣間見える狂気の瞳。

 それに、愛理は体をこわばらせた。

 期待に応えなければ、お前もこうなるぞと脅しているかのようだ。愛理の家は代々医者の家系だった。だから、高額の培養室も購入ができたのである。みずきは生活よりも実験を選んだのだ。

 人を殺したいという自らの快楽のために。

 要求を満たすために。

 その要求を満たすターゲットになったのが身近にいた幸美だった。

「鬼! 悪魔!」

「私たちがそうなら、あなたは鬼か悪魔の子になるわね」

「煩い!」

 愛理は隠し持っていたナイフを取り出した。

 ――安心して、お姉ちゃん。

 硬きはとるわ。

 だが、それはみずきに受け止められてしまう。愛理はもがくが意外と彼女の力が強い。

 ナイフを簡単に取られてしまった。

「こんな危ない物を持っているなんて危ない子ね」

 この中で異端なのは愛理ではない。

 みずきと雄二だ。

 自分ではない。

 そもそも、その血を引き継いでいる愛理も異端な存在である。彼女自身、その自覚がないせいで厄介なことになる方が多い。

「まだ、愛理は改良と調整の必要がありそうだ」

「やだ、触らないで!」

 愛理は抵抗するが大人の力にはかなわない。みずきにずるずると引っ張られていく。

 雄二は止めともしない。

 父親として機能していない。

 完全な「不機能家族」だった。

 伸ばした手は届くことはなく――。

 そのまま、培養室に閉じ込められた。

 バンバンと扉を叩くがピクリともしない。ただ、こぽこぽと空気が流れていく音がするだけだ。これだと、体力がなくなってしまう。

 愛理は叩くのを止めた。

 ――ここから、出して!

 出しなさいよ!

 私、何も悪いことをしてないじゃない!

 愛理はスピーカーをオンにして吠えた。

 ――黙れ。

 みずきの不機嫌な声が聞こえてくる。歯向かったことを根に持っているようだ。

 彼女がボタンを操作して、中の圧を下げた。

 高い音で耳鳴りがする。

 ――息ができない!

 止めてよ!

 お願い!

 止めて!

 意識が朦朧としてくる。

 愛理はそのまま意識を失った。

 一週間後――。

 愛理を解放した。

「愛理ちゃん、調子はどうかしら?」

 みずきの甘ったるい声。

 雄二はそれを表情変えることなく見ていた。

「んー、随分、楽だわ」

 洗脳の完了。

 これで、駒として使えるだろう。

 使えなくなったら風俗にでも売り飛ばせばいい。

「愛理」

「父さん、何?」

「お前がするべきことはなんだ?」 

「不良品の「コピー」を殺すこと。優秀な遺伝子を残すことね」

「その通りだ」

「まずはこの子ね」

 みずきが一枚の写真と報告書を差し出す。

 写っているのは一人の女子生徒。

 一年四組

 中田麻子

 「桜井加奈の「コピー」」。

 邪魔者は消してしまえ。

 両親に洗脳されてしまった愛理に「普通」は通じない。狂い始めた歯車は止められない。

 かちりかちりと動き続ける。

 誰も止めることはできない。

 麻子と昴とは違った「愛」。

 親は子供を「愛している」。

 自分が狂ってしまうほどに。

 まさに、「狂愛」という言葉がぴったりくる。

 しっくりくる。

「できるよな?」

「ええ。できるわ」

 雄二の言葉に愛理は頷いた。





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