るみちゃんの歯はよい子の歯
みなさんは食後の歯磨きをしていますか?ちゃんと磨いて、お口をきれいにしていたら、いいことがあるかもしれませんよ。
桜の木がうっすらとピンク色になりかけてきました。もうじき花が咲きます。
るみちゃんは四月から小学生。毎日背が伸びて、少しずつお姉さんになっています。
そんなある日、お菓子を食べていると、るみちゃんの歯がぐらぐらしてきました。
「お母さん、歯がかゆい」
るみちゃんはグラグラする前歯を指で触りました。
「それはね、子供の歯が大人の歯に生え変わるために抜けるのよ」
「へぇ~」
るみちゃんは大人になることに憧れていました。
「早く抜けて大人の歯が生えないかな」
歯を揺さぶってみましたが、なかなか抜けません。歯を気にするるみちゃんを見て、お母さんが言いました。
「歯医者さんで抜いてもらう?」
「やだやだ、怖いもん」
「子供の歯はすぐに抜けるから怖くないのよ」
実は、るみちゃんは歯医者さんが怖くてたまりません。お父さんもお母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、歯の治療は痛いと言うからです。るみちゃんは虫歯にならないように毎日歯磨きをしています。まさか歯医者さんで歯を抜くなんて、考えてもいませんでした。
お母さんが歯医者さんに電話して、るみちゃんの予約をしています。るみちゃんは不安で不安でたまりません。
歯医者さんの予約の日、いつのまにか歯医者さんの診察台の上にいました。
「お口を開けてください」
るみちゃんは目をぎゅっと閉じて口を少しだけ開けました。先生が口の中を見ていますが、何をしているのかわかりません。
「早く終わらないかなあ」
るみちゃんは目を閉じたまま待ちました。
先生が口の中に何かを入れました。
「るみちゃんはきれいに歯を磨いているから、ご褒美に飴をあげましょう」
「飴?」
るみちゃんは目を開けました。ところが、目の前に先生はいません。そこは歯医者さんではなく、お家のリビングのソファーに座っていたのです。どうやらお家で眠ってしまったようです。それでも、口の中には、さっき歯医者さんがくれた飴がコロコロしています。
ところが、甘くもおいしくもありません。それどころか、へんな味がします。
飴を吐き出してみると、白くて小さい、それは飴ではなくて歯でした。
あれれ?眠っている間に歯が抜けていたのです。
なあんだ、夢だったんだ。でも、夢でよかった。
「お母さん、歯が抜けちゃった」
るみちゃんはお母さんに歯を見せました。歯医者に行く準備をしていたお母さんは、拍子抜けした顔をしました。
「あらやだ、それじゃ歯医者さんの予約はキャンセルしなきゃね」
お母さんが慌てて歯医者さんに電話をかけました。るみちゃんは歯医者さんに行かなくてすみました。
ほかの歯も全部寝ている間に抜けたらいいな。
それから1週間後、街路樹の桜の木に蕾を一つ見つけました。るみちゃんの入学式はもうじきです。
るみちゃんのように良い子にしていたら、夢を見ながら自然に子供の歯が抜けるのかもしれませんね。