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君のせいだから オニール視点

新人魔術士が訓練をしているのを見ながら、副隊長に指示を出していると影が突然現れた。


私以外の人間がいる時には緊急時以外は姿を現す事はない。



「主様。緊急のお知らせが。クレア様がディラン様と別れた方がいいのかな、と言われました」


「は?」



嫌な予感はしていた。影が現れ、小さな声で耳打ちをされた瞬間にドン!!っと魔力が溢れ出し、訓練場にいた大勢の魔術士を魔力で薙ぎ倒してしまった。


いかん。


訓練場には上級魔術師が防御膜や火魔法を使い、新人魔術士を守っていた。


訓練場を氷漬けにしてしまいそうだったので大きな氷の柱を作り魔力の暴走を抑えた。



「ふー!ふー!ふー・・・。はー・・・。よし・・・。詳しい話を。おい、クレメント。緊急の用事が出来た。帰宅する。一週間ほど休む。調整や連絡は任せた。急ぎの用事は屋敷へ届けろ」



副隊長のクレメントに用事を言いつけると、クレメントは突然現れた影に驚いていたが私の魔力の前に黙って頷いていた。



「了解です」



クレメントが杖を下げ、礼をしたのを見届けると、セバスが待つ魔動車迄急いだ。



「詳しく話せ」


「は。主様。最近のクレア様はどうも何か悩んでいる様子。兄上様が色々と主様の事を調べていました。そして今朝兄上様は王都を出られました。クレア様は本日、午後から王宮へ行かれ、その後ご友人とお茶をし、貴族との恋愛で悩んでいると相談していました。その後、一人で買い物をしている時に先程の発言がありました」


「すぐに知らせてくれて助かった。お前は持ち場に戻れ」


「は」



影が消えると、セバスが待つ魔動車に乗り込んだ。



「セバス。クレアたんの兄上にすぐに連絡を。王妃様からの書類は届いたか?」


「は。ここに。兄上様には大隊長宛に魔鳩を送りますか?移動中なら連絡が着き辛いかと」


「大隊長には借りを返して貰おう。どんな手段を使ってもかまわん、一番早く届けろ。すぐに父上にも連絡を」


「は。すぐに準備致します」


「彼女の家へ急いでくれ。」


「は」


「・・・なんてことだ」



私は頭に手を置き、息をゆっくりと吐いた。胸が苦しい。彼女が離れていく。



「セバス、この間契約をした家の準備は出来ているか?」


「必要最低限という感じですが、お住まいになれます。食品、衣類をすぐに準備致しましょう」


「合鍵を使って、食料や必要な物はキッチンに運んでおいてくれ。メイドはいらない。私達が部屋に籠っている時に他の部屋の掃除をするのはいいが。クレアたんに誰も会わせたくない」


「かしこまりました。ディラン様。どうかクレア様とゆっくりお過ごし下さい」


「屋敷と諸々の書類の方は任せた。父上にはセバスが直接説明をしてくれ」


「は。お任せ下さい」



クレアたんのアパートの前で降り、影はセバスからの指示を受け消え、セバスは魔鳩を何通か飛ばし車を駐車できる場所へと移動していた。


どうしてこんな事になったんだ。


クレアたんの話を聞きたいが聞きたくない。


なんで別れるなんて言うんだ。こんなに私が愛しているのに。



「ディラン様・・・」



部屋の前で待っている私を見つけたクレアたんは驚いていたが、そこからは急いで家へ連れていった。何処で邪魔が入るか分からない。完全に彼女を囲い込まなければ。


二人の新居に着くと二階の部屋に移動し、話をしようと言ったが涙目で私を見るクレアたんはどうしようもなく可愛いかった。私が怖くて震えているのに、その私に助けを求め縋ろうとしてどうしていいか分からず手を彷徨わせている。


ああ。可愛い。そしてなんて可哀そうなんだ。


私に捕まったばかりに。


ああ。


ゾクゾクしながらクレアたんの髪を撫でると、不安そうに震えている。


にっこり笑う彼女の顔も好きだが、このままもっと泣かせたいと思ってしまう私はおかしいのかも知れない。


でも、私をこんなにおかしくさせたのは彼女のせいだから、責任は取って貰わないといけない。


この可愛い指も、細い手首も折れそうな足首にも綺麗なアクセサリーをつけよう。勿論、首にも。


私と揃いの指輪を嵌めよう。


束縛したい。彼女が私だけを見るようにしたい。依存させたい。


自分にこんな気持ちがあるなんて知らなかった。


彼女だけが私をおかしくさせる。


魔力がまた暴走しているようだが、気持ちが溢れて押さえられない。



「さあ、ゆっくりと話しをしよう」



私が抱き寄せて、頭にキスをするとピクっと体が震えた。


ああ。可愛い。




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