01. 帰ってくる幼馴染
処女作です。
この世界。魔王討伐の旅に出た者は、魔王に勝利するか、名誉の死を遂げるかの二択だ。
もし、戦いに敗れた冒険者が帰ってきたなら、それは酷い仕打ちを受けるに違いない。というのも、この世界では、戦いに敗れて帰ることは不名誉だとされているからだ。
だから俺は、幼馴染のアリアが魔王討伐の旅に出た時は複雑な気持ちだった。
アリアは優秀な魔術師の娘で、5歳の頃には上級魔法を難なく使いこなしていた。
俺とは真反対のような存在だった。
一方俺、【トーマ・クレイ】は学校にも通わず、自称最強スキル【アブソーブ】を最高レベルまで育て上げた自称最強16歳!
現在絶賛引きこもり中である⋯⋯。
──まさか本当に最強のスキルになってしまうとは思ってもいなかったが⋯⋯。
◇◆◇
俺が泣きながらアリアを送り出したのは3年前のことだ。
「なあアリア⋯⋯。ほんとに行くんだな⋯⋯」
「と、トーマ? ⋯⋯まさかあんた泣いてんの?」
「泣いてねぇよ⋯⋯」
ぐしゃぐしゃになった顔を隠すようにうつむく。
「ほ、ほら! 強いし? 絶対魔王倒して帰ってくるから!」
アリアは泣きじゃくる俺を慰めるようにそう言った。
俺はアリアのそういうところが大好きだった。
そりゃ昔からくっそ意地悪だったが、俺を虐めてる奴らに直接虫を投げつけるような、そんな勇敢なやつだった。
そんな昔のことを思い出してまた泣いている俺に、
「私の上級魔法があれば余裕だし、トーマは心配しなくてもいいよ⋯⋯」
そう言って俺を抱きしめた。
「⋯⋯ごめん。もう行かなきゃ」
「⋯⋯頑張れよ」
アリアは右手に自慢の杖を持って馬車に乗り込んでいった。
馬車から手を振るアリアを見て、俺は正直もう会えないだろうと考えていた。
だんだん遠くなっていく馬車を見て、俺はまた涙した。
◇◆◇
あれから3年の時が経った。
あいつが魔王討伐に出てからも、俺の生活はほぼ変わらず、相変わらずの引きこもり生活を送っていた。
だいたいこの街、【リンツブルク】は平和すぎるのだ。
魔王城からは最も遠いし、モンスターなんてほとんどいない。いるのは家畜の鶏と、平和ボケした町民ぐらいである。
俺は、もっと強い敵を相手にして自分のスキルを試したいのだ。
──などと考えていると、1階から階段を上ってくる音がした。
ノックもせずに部屋に入ってきた母親は、俺を見るなりこう言った。
「はぁ⋯⋯。またあんたその使い道のないスキル極めてんの?」
「⋯⋯悪いかよ」
「あのねぇ。だいたいその【アブソーブ】ってスキルは相手の魔力だったりを吸い取るやつなんでしょ?」
「⋯⋯そうだよ」
「ならこの街には必要無いじゃない」
正論である。めちゃくちゃ正論である。
母親の言い方には無性に腹が立つが、そのとおりである。
魔力を使える人もアリアの親父しかいないし、そもそも何も攻めてこない。戦いとは無縁の街なのだから。
「別に関係ねぇだろ。はやく部屋から出てってくれ」
「はいはい⋯⋯。あ、忘れてたわ。これ、あんた宛てに手紙」
俺宛てに手紙なんて珍しい。
(一体誰から⋯⋯)
俺は届いた手紙に目を通した。アリアからだった。
その内容を簡単に説明すると、
『魔王に負けて何もかも失ったので、近いうちに街に帰ります。みんなには内緒にしといてね。あと、街の人に見つかったら大変なので、夜に帰ってきます。』
──のような内容だった。そして、その手紙の裏には、帰ってくる日時と場所が指定してあった。
どうやら実家に荷物を取りに帰るから手伝って欲しいらしい。
(いや、待てよ)
俺はもう一度手紙を読み返す。
「帰ってくるのかよぉぉぉっ!」
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