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【第0話】生まれ

この物語はフィクションであり、登場する団体・地名・人名などは存在するか分かりません。

 胎児はお腹の中で夢を見るという話を聞いたことがある。その話が正しいかどうかは、確かめようがあるのだろうか。

 人は生まれるとすぐ産声をあげるがその子どもは、そんな様子はなかった。森にひっそりとしていた。捨てられた赤子のようだ。どの位の時間が経っただろうか…。その赤子の近くに人影が近づいて来た。見てみると、若い女性のようだ、何故こんな所にいるのだろうか。その女性は、赤子を見るや、

「あぁ、愛しい我が子。こんなところにいたのね。ここは、危ないから早く帰りましょう。」

と優しい声で涙ながらに言った。

――――――――――――――――――――

 その女性が家に着く頃には、もう日が暮れ、村の人間達は家の中で夕食を囲っていた。

 それから約3週間もの月日が過ぎた。最近の村の様子がおかしく感じられた。例の赤子のことを神の生まれ変わりだ、神の御使い(みつかい)だと言う者がいる一方で、悪魔だ魔族だと言う者が現れてきた。何故そのようなことになったのか、その女性には知る由もなかったが、遂に、彼女の家の前に大勢の村人が押し寄せてきた。見たところ、男性が多いようである。

(私は決して屈しない。この子だけでも救ってみせる!)

彼女はその決意を胸に家の裏にある森へと飛び出した。そして、走った。それに気づいた村人達は、すぐに後を追いかけた。

(よくそんなの持って走れるわね…もっと走らなきゃ…この子を…この子を守らないと)

ただ、足の速さは男性の方が速かった。村人との距離が狭まって、村人の手が彼女に届きそうになった時、その村人は転んでしまった。ほんの少しの安堵が彼女を襲い、何が起こったのかとつい立ち止まって考えそうになったが、彼女の身体は再び走り始めた。とにかく走った。彼女は、ひたすら走り、森の奥まで行った。子どもを抱えてよくもここまで走れたものである。母は強しというのだろうか。彼女は、後ろを振り返ったが、鬱蒼(うっそう)とした森が広がっているだった。その事に安心する反面、一抹の不安を感じた。

(もしかして近くに誰かいるのかもしれない…ここはきけん…?)

しかし、特に周りに動きはなかった。彼女は息を整えながら村とは違う方向へと足早に歩いた。

(もうあの村には戻れない。何故こんなことになってしまったのかしら。引越さなきゃいけないけど、また同じことが起こったらどうしましょう…。)

気が付けば、彼女は教会の前に立っていた。

(…教会。ここなら危険なことは無いはず、それにあの方がいらっしゃるから安心して良いよね?)

彼女は、メモ帳に何かを書きそれを破りその子どもの毛布の上に置いた。そして子どもを教会に託し、只管(ひたすら)歩いた。


(あの人誰だったんだろう…)

暫くして、緑色の髪をした男性が来た。

「…へぇ君面白いね。僕の名前はヴィーチェだよ。覚えててくれたら嬉しいな。」

(変わった人が来た)

「君は結構お喋りだよね。一般的な子どもより思考してるのかな。ところで、君があり余らせてる定期的に魔力貰っても良い?」

(何も喋ってないけど…そもそも魔力って何?余ってるなら無駄にするより使ってもらった方が良いのかな)

「それなら良かった。交渉成立だね。いや〜、これであの人達も強くなれるね。」

(あの人達って一体…)

「あいつ、何処行きやがったんだクソ!…おいそこの(あん)ちゃん。子どもを抱えた女見かけなかったか?」

「え〜、う〜ん。あっ、さっき向こうの方に行ってたよ。なんで探してるの?」

(ねぇ、なんで嘘ついてるの?)

「(し〜っ!)」

「てめぇにゃ関係(かんけぇ)ねぇこっちゃ。よけぇな詮索すんなや若造が。」

「(わぁ怖いなー〘 棒〙)すみませんでした。」

突然やってきた無礼な人間はヴィーチェが指さした方へと走っていった。

(ねぇなんでさっき嘘ついたの?なんで?)

「自分の置かれてる状況に気付いてないのか?!」

(う〜ん。何か知らない人達に襲われてる?)

「分かってるじゃないか。お前さんとお前さんの家族を守る為だよ。」

(嘘つきは泥棒の始まりって知らない人が言ってた。おじさんは泥棒なの?)

「おっ、おじさん?まだピッチピチの20代なのに…まぁその話は置いといて。嘘をついても泥棒にはならないよ。その言葉は嘘はいけないよってことを子どもに伝えるものだからね。嘘には色んなものがあるけど、君にはまだ早いから言わないでおくよ。」

(そうなんだ…。そういえばさっきのおじさん何で僕のこと気付かなかったの?)

「ああそれは僕が魔法を使って君が見えないようにしてたからね。」

(ありがとう。えーっとヴィーチェさん)

「この段階でおじさんから昇格出来て良かったよ。そうだ!今のうちに君に加護を与えておこう。」

(籠?もうあるよ?)

「ははは、それじゃないよ。でもそんな感じのものだよ。」

(!右手が疼く!)

「気の所為だよ。ところで話が450度変わるのだが、君が大きくなったら頭を撫でさせて貰っても良いかな?」

(多分良いけど…何で?)

「君の髪の触角?を触ったら気持ち良さそうだから」

(…さっきの話は無かったことにしても)

「少しくらいいいじゃん!減るもんじゃないんだし!ね!悪い様にしないからさ。」

(信用出来ない言葉を連用されても…)

「さて、お喋りもここでお終いだね。」

(?どうしたの?)

「あなたの様な方とこの様な場所で会うとは思いましませんでした。()()に来られたのですか?」

安らかな声で、春を感じさせる女性が現れた。

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