俺のこだわり 〜ある自閉症者の独り言〜
僕は自閉症だ。
小さい頃は自覚がなかった。
親もそうだと思っていたが、母親によれば、3歳の幼稚園入園時に、アレ?と思うことはあったらしい。
女系一族に生まれた僕は、言ってしまえば王子様のようだった。
靴下や靴も履かせてもらい、なんなら食べるのも、口に入れてもらう。
なので、幼稚園という初めての社会に入った僕は、靴一つ自分で履けない子供だった。
トイレトレーニングも自宅では出来ず、幼稚園に毎日替えのパンツを持って行った。
母親は、先生に「くよくよせずに、まかせなさい!」と言われていたので、気にやむことがなかったのはよかった。
集団行動が苦手で、一人でおもちゃで遊んでいると、「貸してー」といいよも言わないうちに、横取りされる。
争いごとが面倒なので、横取りさせてやる。しばらくすると、飽きておもちゃを放り出していくので、それをまた拾って遊ぶ。
一番面倒だったのは、運動会や、お遊戯会の「ダンス」だった。
一斉に揃った動き、何度も繰り返す練習。
僕は練習は一切参加しなかった。
運動会当日、こればかりは動かないと目立つので、見ていた動きを頭の中で再現して、ダンスした。
先生は、「えー、全然練習しなかったので、ダンスしてる!」と驚いていた。中には涙ぐんでいる先生もいた。
僕はやがて小学校に入学した。
幼稚園卒園と同時に、今までの祖父母の家から、見知らぬ土地へ引っ越し、その土地の小学校だ。
見知らぬ土地、見知らぬ人たち。
僕は小学校の机の下に潜った。
そこが唯一の自分の陣地と感じた。
母はパートを始めて、僕は放課後、学童ですごした。
学童は幼稚園に似ていた。騒がしくてたくさんの子供。