05 先生
とかく女性絡みのトラブルには事欠かない俺、
ではあるのだが、
突然うら若き乙女四人にぺたりと取り囲まれて、かつて無いほど困っちゃっております。
普段から『モンスター』を自認している俺らしくも無いなどと思われるかもしれませんが、
この異常なシチュエーションは、キャパオーバーの想定外なのですよ。
えーとですね、モノカ邸から朝イチでお呼ばれされまして、
なんでも、乙女の大ピンチの緊急助っ人お願いします、とか。
こりゃあ何か良い感じのイベントでも発生するかも、
なんて下心満開で勇んで来てみれば、
子供たちのお勉強会の先生の代打をお願いされちゃいまして。
それで、今、こんな感じ。
「アランお兄さん、今日はなにするの?」
マクラちゃん、とても困ったことに突然呼ばれた先生なので何も準備出来ていないんだよ。
「アランおじさん、困ったお顔してるねっ」
ハルシャちゃん、これってまさにおじさんが異世界に来てから一番の大ピンチ、かも。
「アランおじさま、ご本とか好き?」
ニケルちゃん、本は大好きなんだけど、俺の部屋の秘密の本棚にたくさんあるのは、まだ君たちに読ませるのは早すぎる本ばかりなんだよ。
「……」
マリモちゃん、ありがとね。
他の子たちみたいにぺったりくっついてこないだけでも、おじさん大助かりなんだ。
それにしても、これからどうしよう、俺。
マジで何も準備出来てないんだよな。
ロイさんみたいに、一緒にいるだけで安心させてあげられるような素敵パパ属性なんて微塵も無いし、
カミス君みたいに、女の子たちからイジられて楽しんでもらえるような可愛い男子属性なんてカケラも無いし、
シナギさんみたいに、乙女たちに安心・安全をお届け出来るような無双武人属性なんて逆さに振っても出てこないし、
いやホント、どうしよう、これ。
今の俺が、この子たちに楽しんでもらうために出来ることって、なんなんだろう。
「アランおじさま、このご本、読んでほしいな」
ニケルちゃんから本を渡されましたよ。
なるほど、無芸・無才なのに人畜有害と定評のある俺でも、本の読み聞かせくらいなら安全に出来るかも。
っていうか、きっと今はこれがベスト選択肢、だよな。
じゃ、みんなで、あの絨毯の上でごろごろしながら本でも読んじゃおっか。
「うん」×4
それでは失礼して、ゆるりとリラックススタイルでっと。