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04 お似合い


 マルミさんが煎れてくれたお茶でノドを湿らせたカミス君が、


 嬉しそうに話しを続けてくれた。



「えっと、そちらも噂とはずいぶん違うみたいです」


「せっかくの式典での騒動を遺憾とした王様が、シェルカに何かお詫びしようとしたんですけど、シェルカってそういうお詫び的な意味での報酬は今まで一度も受け取ったことが無かったんですって」


「でも手柄としての国からの褒賞だったら断れないだろうから、騒動を鎮圧したご褒美ってことにして、王様はシェルカに何か希望は無いか尋ねたそうなんです」


「シェルカも褒賞扱いではさすがに断れなかったそうで、それで例の盾を、と」



「ところが、その事が一部の重鎮たちの怒りを買ったそうなんです」


「いかにシェルカ殿とて、王家の秘宝を国外へ持ち出すなど言語道断って」


「重鎮たちは、シェルカが嫌いってわけじゃなくて、法律・慣例には従うべきだって言ってるんですよね。 国のためを思っての発言ですし」


「王様も困っちゃったみたいです。 このままだとシェルカがわがままで秘宝を持ち出そうとしているみたいになっちゃうし、法を守っている重鎮たちを諌めるわけにもいかないし」



「で、王様は賭けに出たんですって」


「もしシェルカが無事に宝物庫から秘宝を持ち出せたら、それ自体が秘宝から選ばれた所有者の証しであろうって」


「あの盾って、手に取った人によって重さが変わるんでしたよね」


「従者は軽く、騎士には重く、でしたっけ」


「反対していた重鎮たちは、誰よりも騎士らしくあろうとしているシェルカには、絶対にあの盾は持ち出せないだろうって思ったみたいです」



「シェルカは手に取る前に、盾へと誓ったそうなんです」


「『ふたつの秘宝をひとつにするために、私はシスカの従者として振る舞うことを騎士として誓う』って」


「で、無事に宝物庫から盾を持ち出せたシェルカは、王と重鎮たちの前で宣言したそうです」



「このまま宝物庫で眠り続けるよりも、正しき心を持つ者と共に正義の為に闘う事こそ秘宝の望む在り方であろう」


「私が愛したクルゼスが正義を行う国であり続ける限り、秘宝がクルゼスを裏切ることは決して無いと、私は信じている」



「さすがに重鎮さんたちも何も言えなくなったところに、王様からダメ出しのひと言が」



「この秘宝が真にクルゼスの守り神であるのならば、例え国の外にあろうともクルゼスに仇なす事など断じてあるまい」



「そんな感じで、秘宝の件は決着したみたいです」


「なのにどうして、シェルカが秘宝を持ち出すために大暴れ、みたいな噂が広まっちゃったんでしょうね」



 シェルカさんみたいな人が真っ直ぐ生きようとすればするほど、変な逆風みたいなのも湧き起こってくるってことかもね。


 カミス君が平穏に生きようとすればするほど、女の子たちが群がってくるのと似てるよね。



「分かっちゃうんだけど納得したくない例えですよ、それ」


 まあつまりは、カミス君とシェルカさんは似た者同士でお似合いってことで。



「そのことを自分が納得出来るようになるまで精進あるのみってことですよね」


 ホント真面目だよね、カミス君って。


 俺には絶対出来ない生き方だよ、それって。



「アランさんの場合は出来ないんじゃなくて、アランさん流のやり方でとっくに出来ちゃってるからいいんですよ」


「でなければ、あんなに素敵な奥さまたちとのらぶらぶ生活なんて送れっこないですもん」


 えーと、それについてはこれ以上ツッコミ禁止ってことで。



「お互い自分のペースでがんばりましょうってことですよね」


 ですよね。




 それにしてもカミス君、よく喋るようになったよね。


 前はもっと大人しい感じだったけどな。


 あんなにいっぱい喋って、


 ノド、渇かないのかな。



 あー、残念。


 カミス君の話しを聞いてただけなのにノドがカラカラなんだけど、


 マルミさんの美味いお茶、もう全部飲んじゃってたよ。



 マルミさん、どこ行っちゃったのかな。


 お茶はもちろん、


 お姿、拝見したいな。



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