03 騒動
アリシエラさん開発の新型『転送』装置、
『ゲートルーム』が仲間たち全員の家に配備されてからは、
お互いが頻繁に相手の住まいを行き来するようになった。
そして、乙女たちが女子会大好きなように、俺たちも男子会ちっくな集まりを楽しむようになりました。
そして今日も今日とて、カミス君のお宅におじゃましちゃっております。
例のシェルカさん里帰り騒動の件を、じっくり聞きたいなということで。
いや、マルミさんに会いたかったわけではないのですよ。
もちろん、会えるに越したことはないし、何と言ってもマルミさんの煎れてくれるお茶は絶品だし。
そんな感じの、俺たち男子会の、午後のひととき。
シェルカさんが戻ってきてから、カミス君、めっちゃ嬉しそうなんだよな。
なんだか以前より、たくさんしゃべってくれるし。
「あの戦争屋騒動以来初めてのシェルカの里帰りということで、クルゼス国民みんなが国を挙げて盛り上がったそうなんです」
「そして、それを知ったアルゼハルト王もお喜びになられて、自ら宣言されたそうなんです」
「祝ってくれる皆のために、特別に王城前広場を開放する日を、余と共に祝おうって」
「ところが、それを聞いてよからぬ事を企んだ連中がいたらしくて」
「首謀者は、例の戦争屋絡みで落ちぶれちゃった元大貴族たちだそうです」
「シェルカとの婚姻を狙っていた貴族の御曹司とか、過激派と呼ばれるアブないシェルカマニアとか、そういう連中をそそのかして広場の式典で大騒ぎを起こさせたらアルゼハルト王のメンツ丸つぶれ、みたいな」
「正直セコイなって感じだけど、権力を失った連中なりの精一杯の嫌がらせだったようです」
「当日、クルゼス王城前にある広大な広場で開かれたお祝いの式典には、大勢の国民が集まったそうです」
「そしてアルゼハルト王とシェルカがお城のバルコニーからご挨拶するっていうセレモニーの最中に、そのアブない連中が暴れ出したんですって」
「久しぶりに帰ってきたシェルカに国民がお祝いしてくれる姿を見せて喜んでもらおうとしたのに、水を差されたアルゼハルト王は激怒したそうです」
「もちろん、王の眼前での無法な騒ぎをシェルカが許すはずも無く、近衛騎士団を引き連れて自ら暴徒の鎮圧に向かったんですって」
「クルゼスの人たちって、規律を守る精神を小さい頃からしっかりと教育されているそうなんです」
「つまり規律を守るシェルカ大好き国民の目の前で祝いの式典を邪魔した連中が、どうなっちゃったか」
「シェルカたちが現場に着いた頃には、すでに騒ぎは鎮圧されていたそうです」
「騒ぎを起こした連中全員が、怒り心頭の国民から取り押さえられて」
「リンチとかじゃなくて整然と取り押さえられていたってところが、クルゼスの国民性の凄さですよね」
「結局、クルゼス国民の民意の高さと規律の優秀さを証明するイベントになって、アルゼハルト王も大層喜ばれたそうです」
「広場に集まっていた人たちも、シェルカの凛々しい騎士姿を間近で見る事が出来て大喜びだったとか」
「もちろん捕らえられた暴徒たちは厳しい取り調べを受けて、首謀者たちも全員捕縛されたそうです」
「つまり、噂されているような、大群衆を相手にシェルカ大暴れ、じゃなかったんです」
「シェルカが原因の大騒動ではあったんですけどね」
使い方は変だけど、まさに傾国の美女、だよね。
でも、そんなシェルカさんが国を出ちゃったりして、本当に大丈夫なのかな。
「アランさんなら分かってもらえると思います」
「シェルカのことって、まさにユイさんとアルセリア国民の関係そのもの、ですよね」
うん、そう言われると、すごく納得出来たよ。
なんて言うか、お互い頑張ろうね。
っと、そういえばもうひとつ騒動があったよね。
秘宝持ち出しの件。