15 完了
予定を変更、リリシアと行動を共にして、奴らの集結地点を目指す。
地下室、だな。
すでに俺たちの周囲には、ワーカーとかいう連中の生体反応の赤い光点は無い。
辺りに散らばる死骸を、出来るだけ踏まないように、慎重に進む。
そして、地下室、突入。
「「うっ」」
また、ふたりいっしょに、うめいてしまった。
目の前には、暗視装置で目視確認可能となった地下室の状況と、
鮮明に見える、黒くてデカくて丸い、ナニか。
「特異種か……」
リリシアが、つぶやいた。
アリシエラさんから突入前に受けたレクチャー。
奴らの生態と攻撃方法各種。
基本的には数を頼りの集団での接近戦、っていうか密集密着まとわりつき。
窒息やら、かじりつきやら。
『耐"G"スーツなら、絶対に安全ですっ』
信じてますよ、アリシエラさん。
ワーカーを蹴散らして、キングとクイーンを殺れば、こっちの勝ち。
ただし、過去に数例、異常事例が。
特異種と呼ばれるそれは、その行動も特異。
確認できたのは『"G"球』と呼ばれる防御行動。
キングとクイーンの周りに、大量のワーカーが球状に集結。
内側の仲間が潰れるのもかまわずに、次々としがみついていくワーカーたち。
作られた異常な密度の死骸の壁は、あり得ないほどの防御力を誇るとか。
いや、アレから誇られても……
って、そもそもそんな異常な硬度の球から、中心にいるキングとクイーンはどうやって脱出するんだよ。
などと、今は余計なことを考えている場合じゃない。
"G"の生態に詳しくなりたいわけじゃ無いし、もちろん専門家になるのも、御免こうむる。
『任せろ』
リリシアが、いつものポーズで愛剣を構えて精神統一中。
って、それどっから出したんだよ。
『ふっ』
静かなる裂帛の気合いで、
『"G"球』の中心を突く!
ゆっくりと刀身を引き抜いたリリシア、
ひと突きで、キング・クイーン両方同時に仕留めたんだな。
『すまん、バストネイシア』
愛剣への、心からの謝罪の言葉。
うん、あんなのを突かせちゃって、エンガチョにもほどがあるよな。
ホント御免な『バストネイシア』、帰ったら洗剤とお湯で手洗いしてあげなきゃ。
しばらく待って、探索画面には奴らの生体反応が一匹も無いのを確認。
ところで『"G"球』は、このままでいいのかな。
とりあえず見たくも触りたくもないんで、放置で。
よし、終わった。
ってことで、前々からぜひやってみたかったことが。
「討伐班より報告」
「残存する"G"反応、無し」
「これより帰投する」
任務完了!
『誰に報告したのだ、アラン?』
いいじゃないか、リリシア。
確かに、スーツもヘルムも出来たてほやほやなんで、外の『Gふなずし』とはまだ通信連携されてないけどさ、
男ってこういうの、好きなんだよっ。
建物の外に出て、スーツに奴らが引っ付いていないかを目視確認してもらう。
アリシエラさんと変なおっさんたちが、俺たちを念入りにチェックしてますよ。
ギルドが呼んだ"G"専門家のおっさんたち、今ごろ到着しやがって。
って、おいおっさんたち、リリシアのスーツ姿を見る目がイヤらしいぞっ。
ようやく目視確認完了、
おっさんたちは建物の中に入っていったよ。
『"G"球』を確保して、研究するんだとさ。
アレを解体してるとこを想像してしまって、かなり気持ち悪いです。
「空気が美味いな」
ヘルムを脱いだリリシアの笑顔。
トラウマを克服して気分晴れ晴れって感じなんだろうけど、
そのスーツ姿、めっちゃエロいんで、早く着替えてほしいよ。
周りにいる男どもの視線、気付かないのかな。
とりあえず、早くテントに入ろうぜ。
脱いだ装備一式を、アリシエラさんが慎重に『収納』
卵とか、ひっついていませんように。
着替えてテントから出たら、笑顔のサリアさんがお出迎え。
見張りからの報告では、外へ逃亡した個体は一匹も無し。
ですが念のため、数日は見張りをつけておくそうです。
特異種関連の任務になるそうで、見張りの報酬でも結構な額なんだとか。
ってことは、討伐した俺たちの報酬も期待しちゃっていいのかな。
えーと、サリアさんから目を逸らされちゃったんですけど。
ま、いいか。
とりあえず、早く我が家で風呂に入って、リフレッシュしたいですよ。
いつもの俺なら今頃は、サリアさんのツヤッツヤ黒スーツ姿を想像しちゃう『モンスター』モードなんだろうけど、黒くてツヤッツヤなのは、しばらくこりごりです。
でも、サリアさんって、たぶん着痩せするタイプなんだよな。
「……」
えーと、すまんリリシア。
今はお仕置きは勘弁な。