表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

11 依頼


 ギルドの受け付け嬢サリアさんが、申し訳なさそうにリリシアに見せた依頼書。


 正直、断ることをお勧めします、とまで言われたという、その依頼内容。



『"G"討伐』



"G"とは、ご想像通りのアレである。


 あちらの世界で忌み嫌われるアレは、やはりこちらの世界でも忌避される存在であった。


 この異世界の人たちは、奴らのことを"アレ"または"G"と呼ぶ。


 正式名称を口にするのがはばかられるほどに、嫌われている存在なのだ。



 そして、魔物としていのししやわんこが邪悪さを増していたように、こちらの異世界のアレもはるかに凶悪なパワーアップを果たしていたのだ。


 アリシエラさんがあの新作魔導具に『Gふなずし』と名付けた際、皆が拒絶反応を示したこと、ご理解いただけたかと思う。



 魔物としてのランクは、最低の"G"


 一匹だけなら子供でも潰せるほどに弱い。


 例えリーダー個体であっても。


 それでもアレが忌み嫌われるのは、群れを指揮するキングの統率力とクイーンの繁殖力の異常さ。



 最初はワーカーと呼ばれる同一個体数匹の群れ。


 繁殖に適した場所を見つけると、群れの中で最も強靭な一匹がクイーンと呼ばれる上位個体ヘと変体。


 以降、クイーンはその場所から移動せず、産卵三昧。


 その他のワーカーは、食料探しとクイーンの守護。


 そして、クイーンが増やしたワーカーが一定数を超えると、その中からキングと呼ばれる上位個体が出現。



 群れには必ずキングとクイーンが各一匹、それ以外は全てワーカー。


 キングは全てのワーカーを操ってクイーンと巣を守ろうとする。


 攻撃力も魔法力も、毒すらも無いアレが、なぜそれほどまで恐れられているのか。


 簡単に言うと、相手の嫌がることをするから。



 正面からは闘わない。


 普段はひたすら隠れている。


 邪魔者の寝込みや無抵抗な状態の時に、弱点を狙ってくる。


 もちろん、巣を襲ってきた敵対者には全力で抵抗。



 目玉や口の中の粘膜などの弱点を、狙ってくる。


 とんでもない数で、攻めてくる。


 やられる側はたまったものではない。


 討伐のため、うかつに巣に近づいた冒険者は、アレに全身を覆われて窒息させられるそうだ。


 そんなのが家の中に巣を作ったら、どちらかが全滅するまで闘いは終わらない。


 そして奴らは、圧倒的にしぶといのだ。



 しかし、長きに渡る人類との戦いの歴史は、アレを絶滅寸前まで追い込むことに成功した。


 ひとつの種を絶滅寸前まで追い込むのはとても難しいはずなのだが、人類、頑張った。


 なぜかアレが、人の住む場所以外に巣を作らないのも勝利の原因だったのだろう。



 要するに、アレの巣は人々にとって最優先駆除対象なのだ。


 なのだが、誰も進んでやりたがらない。


 俺だって、アレがうじゃうじゃいる場所に近付きたくは無い。



 そして、今回の依頼。


 町外れの一軒家、ちょうど俺たちが住んでいる場所とは、商店街を挟んで反対側の町外れ、


 住んでいた孤独な老人が亡くなった。


 ほとんど交流が無かった町の人たちだが、老人に身寄りが無かったことを不憫に思い、


 共同墓地へと弔ってあげた。


 家財一式は処分され、新しい住人を迎えるためのリフォーム代となった。


 が、リフォーム作業中に、悲報。


"G"発見。



 で、なんでリリシアはそんな依頼を受けちゃったのか。


「私のわがまま、だな」


 リリシア、苦悶の表情。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ