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作者: 雪村真月

課題として600字制限のなかで書いています。

 『秋を探しに行こう』、そう思い立ったのは、ある日曜日の昼前だった。移動に一時間をかけて遠くの公園までたどり着く。その日はとにかく暑かった。そこから少し歩いて農地と道路を抜けると海の景色と風が僕らの首筋を撫でていった。足元が不安定な岩場を歩くというのに、それにそぐわない服装をしていた秋の姿を今でも思い出す。

 僕はいい意味で秋に影響を受けていたのだと思う。秋にはどこか抜けているところがあった。秋と一緒に過ごすと僕から何か大切なものが抜けてしまっているのではないか、と心配になったこともあった。けれども、一緒に過ごした時は楽しかった、そう思う。

 ぼんやりと遠くを眺めていると、秋は「水、飲む?」と言った。僕は一口だけ、と水を受け取り口に水を含んだ。渇いた口の中で水が少し塩っぽく感じた。

 履きなれたスニーカーが滑らないよう慎重に岩場を歩いていくと、何年か前に僕らが昼食をとった場所にたどり着いた。そこは出発した公園から大きく離れた場所で誰もいなかった。特徴的な岩の形が見えて、秋の記憶に光が差し込んだようだった。

 僕はここで起こったことを思い出そうとした。その時、僕は何をして、秋は何をしていたんだっけ。そう声に出しても僕の言葉に返事をしてくれる人も、秋もいない。

 そのとき、ふと声が聞こえたような気がして、僕はそのほうを見ると確かに秋の姿があった。長く続いた夏と、静かにやってくる冬の間に僕は立っていた。


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