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ぼやきと戯れ言

読ませようとは思っていない

作者: 黒森 冬炎

 趣味の文筆家で、なおかつターゲット層が狭い作者は、だいたいにおいて自分自身が最大の読者である。いわゆる自家発電というやつだ。

 だが、書いたからにはちょっと同じ趣味の人を探してみたくなる。


 我々狭タゲ層は、読者ひとり釣れたら大勝利なのである。小躍りして喜ぶのである。

 相手も作者であれば、自分好み作品が供給される可能性は一気に倍増だ。



 一般にニッチ狙いと言われる我々は、そうした密かな望みを胸に、自作を電脳の海に放つ。放ち方はさまざまだろう。

 こっそりと、あるいは大胆に。または、まず同好の士を得てから。


 だが、多くの狭タゲ層文筆家は、広く万人に読ませようとは思っていない。自分達の特殊性をある程度は認識しているからだ。



 もしも、より大勢の人々に読まれる方向性へと舵を切れば、最早自分が読みたいものとは言えなくなるのだ。

 読みたくないものを書いたところで、所詮は趣味の駄文製造者である。さらにつまらなくなるだけだ。自分すら読者ではなくなる。



 自分が読みたいものを書いている間は、少なくとも自分は楽しい。自分の読みたいレベルに達しなくとも、自分が書いているので当然自分と方向性は同じなので楽しい。なにしろ書く人と読む人が同一人物である。


 自らの表現の未熟さにはしばしば打ちのめされる。だが、楽しいのだ。

 趣味である限り、楽しくあればそれで良いと思う。更に誰かが楽しんでくれたのならば、もう言うことはない。



 読ませようとは思っていないが、読んで欲しいとは思うのだ。そして、似たような思いの人が書いたものを、ついつい探してしまうのだ。


 この電脳の大海原に漕ぎ出して、大海に沈んだ針を探す日々は、そりゃもうほんとに充実している。その上針を放り込む作業まで始めてしまった。拾い上げてくれる人が現れてくれたら、日常のあれこれなんか、どうと言うことはない。



 あなたがもしも趣味作家で、一般受けを望まず、またニッチとはいえ界隈の支持を得るプロなどには、なれるともなろうとも思わないお気楽なだらだらライターであるならば、私の気持ちがわかるだろう。


 もしもわかってくれるなら、画面の向こうで旨い酒でも呑みながら、あなた自身が読みたい文章でも書いて欲しい。

 いや、そんなこと、頼まれなくたって、きっともう書いて発表しているだろう。


 ターゲットの狭い作者である我々は、もしかしたら、誰よりも幸せな読者なのかも知れない。趣味だからこそ、何のてらいもなく好きなことを書いて好きなものを読んで、それで満足できるのだから。


お読みくださりありがとうございました

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― 新着の感想 ―
[良い点] 【読ませようとは思っていないが、読んで欲しいとは思うのだ】 正に真理。 本当ですね。 また、最近では読んでくれる人を意識し過ぎていたようです。 自分が自分の書いた小説の読者である事を忘れて…
[良い点] 以前読んだハズなのに感想を書いた形跡がない…… 評価だけ入れて感想を書いた気になってるパターン、結構あるんですよね…… 私も陰キャ向けというニッチな作品を書いていましたが、最初は自分の主…
[良い点] 自分も狭い層に向けて書いているので、その気持ちの全てを代弁してくれるような内容でした。確かに読みたい物を書いている時が1番楽しいのです。 「読みたい人だけ読んでくれればいい」と言うスタン…
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