表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/300

異世界召喚

「ぶははは!

 お前! "追放"だってよ!!

 そんなのラノベでしか読んだことねぇ!!」


 同世代の少年の笑い声が謁見室へ高らかに響き渡る。

 どうやら人に指をさすのは良くないことだと教えられずに育ったようだな。



 *  *   



 始まりは確か、通学途中のことだったと記憶している。


 いつもと同じ日常を、いつもと同じ時間に繰り返す。

 そこに一切の特別性などは感じられず、ただ学校と家を往復する毎日。


 何かを期待していたわけじゃない。

 友達とだべり、将来の役に立ちそうもない勉強をひたすら頭に詰め込み続けるくらいなら心身を鍛えたほうがずっと有意義だとは思うが、だからといって自分が学生であることに不満があるわけでもなかった。


 そんな日常が突如として終わりを告げ、見知らぬ世界に放り出されるとは。

 空を見上げながら駅へ向かう俺には想像すらしていなかったことだった。



 聞きなれた日本語で会話する男たちの言葉に意識が向く。

 召喚魔法は成功だの、勇者様を呼び寄せただの、これで王国は救われるだのと。


 どれをとっても理解に苦しむ。

 いっそ盛大に騙されているか、どこぞで反応をモニターされてると考えたほうがある意味では自然かもしれない。


 だが、それを否定するかのような石造りの儀式場。

 怪しげな円形の魔法陣が地面に描かれ、それを取り囲むように映画やアニメでしか見たことのないようなローブを身にまとう人物たちが倒れている光景は、どう見ても異質な空間だとしか思えなかった。


 そして部屋の隅に陣取っている西洋騎士のような鎧と、腰に差した剣。

 思わず注視してしまうが、あれらは間違いなく本物のようだ。

 そうでもなければ、あれだけ重々しい金属音を立てないだろうからな。


 いたずらにしては手が込み過ぎている。

 一般人のガキを相手にするドッキリにしては悪質だ。


 現状と周囲の確認をするも、とてもセットとは思えない石造りの建築に寒々しい空気を感じた。


 言語が通じているが、見るからに日本人じゃない。

 会話している男たちの口元に、思わず眉にしわを寄せた。


 口調と口の形が合っていないように見える。

 読唇術なんてものは体得していないが、それくらいは分かった。

 ……だとすると、本当に色々と厄介なことになりかねない。


 仮に勇者召喚なるもので異世界に呼ばれたのだとすれば、その先に待つのは面倒で危険な厄介事だけだ。


 ちらりと横を見る。

 同時に召喚されたと思われる男は、これでもかと瞳を輝かせていた。

 その凄まじいまでの順応力に驚きはしたが、さすがに羨ましくは思わなかった。


 ……にしても、召喚術者と思われるローブの人物が6人も倒れているのに、介助する気はないのか。

 それとも、そうするだけの重要な任務と捉えるべきか?

 国どころか、世界の存亡がかかっているのなら分からなくはないが、もしかしたらそれ以外の意味も含まれているのかもしれないな。



 説明も適当に、俺たちは王との謁見を望まれた。

 その対応に思うところも多いが、ここで反論しても意味がない。


 豪華な回廊を歩きながら、同世代の少年と軽く挨拶をした。


鳴宮春人(なるみやはると)、18歳の高3だ」

「なんだよ、タメかよ!

 俺は一条奏多(いちじょうかなた)

 "この世界を救う勇者"だ!」


 ……その考えがどれだけ危険なものか、こいつは分かっているんだろうかと心配になる。


 ともあれまずは情報が必要だ。

 もしも人智を超えた存在を相手にさせるつもりなら、こちらもそれなりの覚悟を持たなければならない。



 この時の俺は、そう思っていた。

 まさか一条の言うように、ラノベでしか読んだことのない展開になるとは。


 いや、それも勇者の証拠を確認すると怪しげな水晶を持ち出したことで、その可能性に気づいてはいたが。



 ともかく。

 目尻に涙を溜めながら爆笑する一条を横目に、俺はため息しかでなかったことだけは確かだな。

 今作は誤字脱字報告を受け付けていますので、ご連絡いただけると助かります。

 評価、感想、ブックマークもお気軽にしていただけると筆者の活力に繋がりますので、お願いできればと思っています。


 投稿予定時間は21時~23時辺りになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ラノベなら追放された方が主人公ってなるんじゃないか?なのに笑っていられるのが不思議。
[良い点] 小中学生でも楽しめる [気になる点] どっかで読んだような、オリジナリティの欠如
[一言] 俺は一条奏多いちじょうかなた! "この世界を救う勇者"だ!」 「勇者」をどう意味で、この一条は使用しているのかと思う。脳足りん、なのか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ