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6:恋路と実菜

今回だけ、視点が前々回でてきた後輩に変わります。短いけど許して

「むむむ、命先輩と生枝先輩って、やっぱりそういう関係なんでしょうか?」

「知らねえよ、っていうか本人に聞けよ」


 難しい顔をするあたしに、ニット帽先輩が暴言を吐いた。

 ここは、部活棟と本校舎を繋ぐ連絡通路。あたし、月石実菜はここで先輩たちの様子を窺っていた。横には、呆れた顔をしたニット帽先輩もいる。


「はあ、普段バカバカ言ってるくせに、あいつに女が近づくと機嫌が悪くなるんだから、難儀な性格してるよな、オマエ」

「それを乙女心っていうんスよ! ぼっちの先輩じゃ分からないことっス」


 軽く肘打ちをしながらニット帽先輩を非難する私に、先輩は小さく「ぼっちじゃねえよ」と呟いた。

 ……ニット帽先輩からクラスの友達の話を聞いたことないけど。


 まあ、可哀想なニット帽先輩は現状どうでもいい。今重要なのは、本校舎の裏手に見える人影。二年の木村命先輩と、三年の丸生枝先輩だ。


「誰もいない校舎裏に、男女が二人。ふーん、いい雰囲気じゃないっスか」


 これはもしかして、そういうあれだろうか? 


「十中八九、そういうあれだろうな」


 デリカシーのないニット帽に、再びの肘打ち。さっきより少しばかり勢いをつけた。

 っていうか、他人の心を読まないでほしいっス。


 そうこうしている間にも、花壇の方では生枝先輩と命先輩は楽しそうに会話している。ここからじゃ、命先輩の顔は見えないが、生枝先輩の顔には、今まで見たことのないような笑顔が張り付いている。

 声は聞こえないが、男女の蜜月感は半端ない。


 違う。だって今日の命先輩、あたしが非リアって言ったの否定しなかったもん。

 じゃあ、もしかしてこれ、告白の場面? 割って入ろうかな? 


 生枝先輩の祈るような仕草。それはまるで、告白の成功を祈るようで……


「待って!」


 連絡通路の柵を乗り越え、先輩たちの間に割って入ろうする。

 しかし、その時だ。柵を乗り越えるために二人から眼を反らした瞬間。その一瞬で、二人の先輩の姿が消え去ってしまった。


「えっ、あれ?」

「んっ? あいつら、どこ行ったんだ?」


 唖然としているあたしに、ニット帽先輩が尋ねてくる。こっちが聞きたいよ、それっ。


 先ほどまでいた花壇の周り。その先にある花壇の向こう。窓から見える校舎内の廊下。それらのどこにも、二人の姿は見えなかった。

 慌てて、花壇の方へ駆け寄る。それでも結果は変わらない。最終下校時間が過ぎた暗い学校。あたしとニット帽先輩以外、誰もいない。


 しばらく立ち尽くしていると、日の入りを迎え、周囲が暗く染まっていった。慌ててスマホを取り出し、光源を確保する。

 光が映し出したのは、苦虫を噛んだようなニット帽先輩の顔と、爆発の跡のような地面の黒いシミだけだった。

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