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17 グランジェル

「蒸し暑っつ! いくら報酬が高くてもこんな依頼に参加するアホいる?」


「おめーさんだよ」


 呆れたようにロバートに言われてしまう。


 深夜のはずなのに、今日は蒸し暑い。


 それに、月明りと街灯に照らされる、物静かな街はとてもきれいだが……。


「意外と広いんだな……この街。巡回なんてテキトーに散歩したらお金がもらえると思って来たのに」


「多方面から怒られろ」


 二人組で巡回をするようで、ロバートとペアになって担当する道を歩いているのだが、あれだな。


「独り言にいちいち反応するなよ」


「大きな独り言だな……」


「ところで報酬を上げてまで治安を維持する必要なんてあるのか?」


「それは独り言か?」


「んなわけあるか」


 何が悲しくて虚空に問いかける。


「昨日言った不審者の話だけじゃないんだよ。深夜に恐喝される人が最近は増えてんだ」


「ふーん」


「んで、おめーさんの持ってる袋は何なんだ?」


「夜遅くまでやってるお店で買ったもの」


「冒険者の仕事を何だと思ってやがる……」


 いや、ごめんて。


「ん? あの婆さん、様子おかしくないか?」


 前方にきょろきょろと周りを見渡しながら、歩いている婆さんが居る。


「道に迷っているのかもしれんな。聞いてみるか」


 全く警戒心のないロバートを止める。


「おい、待て」


「む? どうした」


「実はこの街に潜む伝説の盗賊団のボスかもしれないぞ」


「どんな街だよ」


「いや、変装した魔王軍の生き残りかもしれない」


「魔境か」


「それに、最強の古龍の人間の姿かもしれない」


「お年を召されてる」


「すみません、そこのあなた。道をお尋ねしてもよろしい?」


「「ヒェッ!」」



「あの、先ほどは大変失礼な……」


「いいのよ。暗いところは誰でも怖いしね」


 その認識ならさっきの妄想を話した方がマシだな。


「何か困っていたことがあるのか?」


 うん、後で敬語教えとくか。


「息子の家に行きたくてねぇ。早朝に家を出たんだけど道がわからなくて……」


 早朝に?


「他の街から来たのか?」


「南の区画だよ」


 早朝から!?


「声は掛けられなかったんですか?」


「なるべく若者の時間を取りたくなくてね……」


 婆さん……。


「よっしゃ! 絶対にオレたちが連れて行ってやるぜ! 何百年かかってもな」


 何百年とか言うな。


「ありがとうね」


「婆さん。地図あるか?」


 地図があったら迷わないだろ。


「それならここに……」


 あるのかよ。


 でも、地図があってわからなかったんなら、道も複雑なのかもしれねえな。


「おお、ここならまっすぐ行けば着くぞ」


 おい、婆さん。


「ありがとうねえ。それじゃあ」


 そう言って歩いて行った婆さんは三歩進み、振り返るとこう言った。



『ごめんなさい。忘れちゃったわ』


 婆さん!



 ◇



「む? あそこの二人組。怪しくないか?」


「今度は何だよ……」


 酔っぱらっているのか、足元がおぼつかない男を少し離れて、全身黒っぽい恰好をした怪しい二人組の男が付いていっている。


「路地裏に入ったぞ」


「行かないとだめだよね?」


「おめーさん、これ仕事だぞ?」



「おい、おっさん。痛い目に遭いたくなかったら金をだ――うぐぅッ!?」


『アースバインド』で拘束した二人の男が地面に倒れる。


「おい! どういうことだ! 放せ!」


「テメエ、ただじゃおかねえぞ! この悪人顔」


 うるさい。


「ジル。こいつら気絶させとこうか?」


「俺がやっとく」



「買い物袋から何を出すかと思ってたら……」


「大丈夫だよ。死んでないし」


「ここまで来たら生死は関係ないんだ」


「いや、これくらいで人は死なねえぞ」


「もう、泡吹いてるから」


 何だよ、グランジェルを食わせただけじゃん。


「そのグランジェルってのは食い物なのか? 真っ黒な液体だったが……」


「毒ではない」


「まあいいか、コイツらを衛兵に突き出しに行くぞ」


「そんでロバート。このおっさんどうする?」



「グー……。グー……」


 のんきなものだ。



4話登場のグランジェルさん

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