12 教えて! 兄者先生
ミコが昼前に、それに珍しく一人で魔道具屋に来た。
何の用だと不思議に思う俺にひと言。
「兄者、赤ちゃんはどこからくるの?」
あまりの衝撃に思わず、間抜けな声を漏らしてしまう。
「ほ?」
「だから! 赤ちゃんはどこからくるの!?」
「聞こえてる! ちゃんと聞こえているから耳元で叫ぶな」
耳がキーンってする……。
「で、赤ちゃんはどこからくるの?」
親が困る質問。
でも、俺は対処法を知っている。
「何でだろうな~?」
フッフッフ。大抵はこう答えてやれば大丈夫なのだ。
「いや、そういうのいいから」
幼女にガチトーンで言われるとくるものがある。
「お母さんがそう言って、教えてくれないの」
「お父さんは?」
「『魔道具屋の兄ちゃんに聞いてこい』って」
子どもの教育なめてんのか?
どうするか……。正直に答えてはダメだ。マルクみたいになる。
「神様にお願いするんだよ」
神様の不思議パワーってことにしよう。神様なら許してくれるはず。
「神様は赤ちゃんを創造するの? どうして神様は人の願いを聞いてくれるの? 何のために神様は人の願いを聞いてくれるの? ねえねえ、教えて?」
「ぐわああああー!」
なにこの子。何でその先を知ろうとするの?
「ま……マルクに教えてもらえよ」
面倒なことは押し付けよう。
「お兄ちゃんに聞いたら、顔を真っ赤にしてしばらく動かなくなっちゃうの」
ませてんな。
「じゃあ、教えてやろう。赤ちゃんをめぐる涙あり、笑いあり、そして感動ありの物語を……」
昔々、神様のゴッドさんは世界をつくることにした。
『暇だし、世界でもつくるか~』
「兄者、神様はそんな気楽に世界をつくるの?」
……黙って聞いとけ。
ゴッドさんは天と地をつくり、動植物をつくり、最後に男と女、二人の人間をつくった。
ゴッドさんは二人の人間にファースト、セカンドとそれぞれ名付け、自分がつくったものに名前を付ける仕事を与えた。
「それって、給料もらえてる? 休日は?」
「マルクか? マルクが変なことを教えてんのか?」
そうして時は経ち、ファーストさんとセカンドさんは他の生き物を見て、子どもが欲しいと思うようになりました。
『神様、私たちにも子供が欲しいです』
気楽に生命をつくることはできないと神様はある条件を出します。
「さっき、気楽に世界をつくってたけど」
……黙って聞け。
『セカンドが鼻からスイカを出すことに成功したら、子どもを授けてやろう』
『わかりました』
なんやかんやあり、セカンドさんは鼻からスイカを出すことに成功。
『ギャッハッハ! いやあ、感動で涙が止まらないよ。プー! クスクス』
神様は感動の涙を流し、人間は鼻からスイカを出すことを条件に子どもを授けられるようになった……。
「――なった……。」
「いや、なったじゃないよ。」
この間まで、俺を見て泣いていたミコがこんな風に成長してしまうとは……。
「お母さんも鼻からスイカを出して、私が誕生したの?」
「ああ」
生命の神秘もくそもないな。
「で、本当は?」
「マルクに聞こうか」