表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

OLと日本人形

作者: 春夏冬 悪姫

あー。自分が嫌になる。

そんなことを考えながら、ウェディングドレスを身にまとった部下に拍手を送る。

私に招待状とか嫌がらせ?とか社内恋愛とかするなよとか。

素直に祝えない自分が嫌になる。

三十も後半になる私。

仕事で上に行けてはいるけどやはりどこか男優遇でここまで感が感じられ、これといって付き合ったことも無く親からは孫の顔が見たいと催促される。

ストレスが溜まり続けているのは自覚してるしふとした時に誰かにぶつけてしまっているのもわかっている。

「それでは、上司の方から祝辞を頂きたいと思います。」

ほんとになんで私にこの役目が回ってきたのだろうか。

そんなことを考えながら定型文を主体とした祝辞を読み上げていく。

きちんとこの場に合う顔ができているかよく分からなかった。




休みの日、と言っても持ち帰った仕事を処理してたりしていたので休まらないが、ふらっと気分転換に散歩していると古物屋を見かけた。

何となく入りざっと見ていると人形がずらりと並んでいる場所を見つけた。

フィギュアと言われるアニメの女の子のものからフランス人形と和洋問わず年代問わずという感じだ。

そんな人形達を眺めているとふと一際古そうな日本人形に目が止まる。

繊細な顔立ちに綺麗な黒髪、しかしお洋服は少しボロで痛々しい。

値段も他の比べてかなり安いわね。

そんなこと考えていると少し人形の目が動いたように見えた。

ん?気のせい?

気の所為かもしれない。

雰囲気に当てられてるのかな?

ふと、家に和室があるのを思い出した。

置くのありか。服は直せるし。

そう思い、お店の人を探し声をかける。

話をすると服の痛みがより酷くなったのでさらに割り引いてくれた。

少し得した気分だ。



家に帰ると早速和室に置いてあげた。

着物を直してあげるために脱がす。

裸は可哀想なので布を巻いてあげる。

着物に近い柄を用意して縫い付けるが色合いがズレておりなんか穴がむりやり塞いだ感が出てしまう。

これは一から仕立て上げるしかないかもしれない。

採寸して生地用意してデザインして…。

割と時間かかるから、これは次の休みね。

とりあえず、できた着物を着せてあげる。

やはりツギハギ感が否めないので作り直そう。

そう思いながら仕事に戻った。



夜11時を回った辺りで一区切りつく。

お茶を飲み干して眠気覚ましにコーヒーを作るために席を立った。

ふと、和室から物音がする。

なにかしら?

襖を少し開けて中を見る。

特に誰かいる訳では無さそうだ。

一人暮らしなので当たり前だが。

気のせいか。

襖を閉じるとキッチンに向かった。


コーヒーを入れて戻ってくるとパソコンに向かった。

データを呼び出して再度仕事にかかる。

カフェインが効いてくるまで約30分のラグがある。その間は眠気との戦いだ。

いえ、逆にスマホで目覚ましかけて仮眠を摂るべきか。

そう思いなおしてソファに横になる。

スマホを操作してアラートをかけた。

目を閉じ、少しして私は意識を手放した。



起きると朝だった。

厳密にはまだ空が白んでるだけだが十分寝過ごしている。

やば、と起き上がると毛布が落ちた。

私毛布なんてかけたっけ?

よく覚えてない。

アラートはならなかったのだろうか。

スマホの充電も忘れてた。

久しぶりにまともな睡眠をとったが仕事は終わってない。

早起きしたぶん終わらせられるか?

とりあえず、仕事に取り掛かった。



結論からすれば終わった。

きちんと休めた分調子が良かった。

会社で業務をこなして、帰ってくる。

早めに仕事が進行していて久しぶり持ち帰りはなかった。

なんか運が向いてきている気がする。

何か変わったことは…と日本人形のことを思い出した。

とりあえず日本人形に拝んでおいた。

こういうのは担いでおいた方がいいだろう。

これからもいいことがありますように。


次の休みになった。

朝から日本人形の着物を仕立てる。

元々が黒い和服だったが赤い着物と緑の着物を仕立ててみた。

「どっちがいいか選べるといいのにね。」

なんて、話しかける。返事はあるわけが無いのだが。

元々の黒い着物を脱がせて赤い着物を着せる。

少し離れて眺めてみるが少し派手な気がしたので今度は緑を着せてみる。

落ち着いた感じで気に入ったのでこっちに決めた。

黒い着物も再度直してみたが個人的には緑がいいと思うのでそのままにする。

一仕事終えたので眠ることにした。

お昼は近いが眠いので眠るのを優先する。

ベットで横になるとすぐに意識が飛んだ。




起きるとおやつ時だった。

おやつ以前にお昼を食べないとな。

適当にあるものですまして、和室に入る。

と、日本人形の着物が黒いものに変わっていた。

黒い方が良かったのか。と思った後におかしいことに気づく。

緑の着物から黒い変わったということは誰かが着替えさせたのだ。

誰かいるの?私はおそるおそる和室の扉を開けていく。

しかし、誰もいない。

和室以外も見たが誰もいなかった。

ありえないけど人形自ら着替えたとか?

「まさかね。」

そう呟いたがそれが有り得ることなのではないか?

歩く日本人形とか話聞いたことあるし。

わたしは少し考えたあと…。

危害がないならいいかと言う結論になった。

最近いいことが多かったし前向きだったのだろう。

それからは日本人形を大切にしながらたまに起きる変なことをまとめるようになった。






とある古物屋。

そこの店主が頬杖をつきながら店番をしていた。

「あの子元気かしらね?」

そう問いかける可愛らしい声。

しかし、店主の目線では声の主は見えなかった。

「さあな。お前がいびるから。かなり安めにしてた子だろ。」

「いびるなんて失礼ね。仲良くなろうとしただけよ。」

それで傍目から見てそう見えるなら完全にコミュ障だろう。

そう思ったが口にはしなかった。いうとうるさいのは経験から知っていた。

「まぁ、上手くやってるんじゃないか?お前と違って呪いの…とかではないしな。」

むしろきちんと扱えば幸運を招く子だった。

うちは売れなくていいのでそれなりに対応してたが。

「失礼ね。私はただ仲良くしたいだけよ。」

声の主は不服を唱えるが何度も出戻っているのに言われても説得力がない。

「そう言うなら今度こそ戻ってくるなよ。」

そういったタイミングでお店のドアが開いた。

店主は立ち上がると机の影にあったフランス人形を手に持つと棚に置いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ