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ウェイン・アポカリプス  作者: 佐々木 英治
ウェイン・アポカリプス1.1

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92/318

手紙

 さて。教育実習を終えたウェインとエルであるが、残るは試験だ。と言っても難しいものではないそうだ。

 未使用の教室を借りて、ビル先生が試験官となって二人にプリントを配布する。二人とも躓くことはなく、スラスラ回答を書いていき……10分程で終わった。

 その場でビル先生が採点をし、問題なかったようで合格を出してくれた。

 これでウェインとエルは晴れて教員資格を持つことになった。

 ビル先生は言う。

「二人とも。これはただの『資格』だよ。本当に人に教えたい場合、これが最低ラインのスタート地点であることを忘れずに。今後は自分自身に磨きをかけ、自信を持って教えられるような人になりなさい。常日頃から研鑽を忘れぬように」

 ウェインには、アスリー師匠の言葉とダブって聞こえた。


 と、教室にアーク先生が入ってきた。手には色々な書類を持っている。

「ウェイン君、エリストア君。まずは教員免許の合格おめでとう。私は夕方からちょっと急ぎなので、今この場で諸々の手続きをしたい。問題ないかな?」

「大丈夫です」

「基本的に二人とも同じだ。これはまず、教員免許の書状。但し飾りだ。他の学校などで就職したい場合などは事務に行って正式な免許証を発行してもらうように」

「はい」

「そしてこれが『旅の魔導士』になるための書類。必要事項はもうこっちで書いておいたので、二人はここにサインだけお願いする」

 アーク先生……忙しいだろうに、色々と便宜をはかってもらえる。

「そしてウェイン君の学生寮だが、今後教員寮へと移動をお願いする。もうウェイン君は生徒ではなく、立派な一人前の魔法使いなんだからね」

「わかりました」

「エリストア君は卒業単位は足りているが、後は卒業の時期待ちだ。もう教員寮への移動をしていいのなら、それでお願いする。ただウェイン君、エリストア君にも共通して言えることだが、『旅の魔導士』は基本的に寮生活ができない。何せ旅をするのが本来業務なのだからね。今は部屋が空いているから問題ないが、新人の他の教員の部屋が不足した場合、強制退去となる。色々な物は全て学院倉庫の一部に移されるので、注意すること」

「わかりました。でも寮の部屋、借りちゃっていいんですか?」

「『旅の魔導士』が軌道に乗るまではね。学院もいきなり追い出したりはしないよ。ただ他に生活拠点を置いたりして軌道に乗れば、引き払ってもらうが」

 ウェインは肯いた。アーク先生も肯く。

「これで一応の手続きは終わりだが……二人に連絡がある」

「なんでしょう?」

「本日をもって、ラクス防衛隊はファントムを探す先遣隊を派遣した。レオン王国軍にも協力を得て、今後は探索・ないしは封印や排除などに段階的に移っていく予定だ」

「……」

「そこで、だ。ファントム討伐隊として各所から推薦が上がっている。ウェイン君。エリストア君。そしてレーン氏の3名だ。君たち3人の意思を聞きたい」

 ウェインは少し考えてから、言った。

「基本的に全員OKだと思います。で、私たちはどこかに組み込まれるんですか? それとも今まで通りに自由に動いていいんですか?」

「今は細部を詰めてる段階で君たちはどこにでも引く手あまただが……今まで通りでも大丈夫だ」

「他にこちらで指定して仲間を連れて行ってもいいんですよね?」

「問題ない」

「なら大丈夫だと思います。あ、それとあと一点。あと三日後を目安に、アスリー師匠がラクスに戻ってきます」

「アスリーが?」

「はい。新型の通信魔法使ってました。それはともかく私はアスリー師匠に用事があるので、今すぐ出発はできません」

「三日後が目安だな、わかった。では答えはその時にまで待っておこう。討伐隊への参加の件、レーン氏にも確認をお願いする」

「わかりました」


「それとウェイン君宛てにだが、レオン王国軍から依頼が入っている」

「依頼? ちょっと今忙しそうなんですが……」

「すぐ済むということらしい。アリス隊の人が君に……出来ればラクスへの帰還中に護衛した6人に会いたいと言っている。時期はいつでもいいが、できるだけ早く。できれば明日とのことだ」

 アリス隊が自分たちに、何か用事がある……? 当時は指揮権で揉めてしまったから、その謝罪にでも来るのだろうか。アスリー師匠との合流までは日にちがあるし、できるだけアリス隊の名誉を立ててあげねばならないだろう。

「アーク先生、明日で大丈夫だと思います。全員の予定はちょっとわかりませんが、できるだけ私たちは学院のラウンジに集合しておくようにします。

 アーク先生は肯いた。

「わかった。そして最後に……。エリストア君、ウェイン君、そしてアヤナ君宛てに、学院経由で手紙が届いている」

「手紙?」

「中堅貴族のレオナール家からだ。何やらファントム事件を知って、君たちに連絡をつけてくれと請われた。アヤナ君宛ての手紙は……ウェイン君、君に託して構わないか?」

「はい、大丈夫です。届けます」

「重要書類として処理されていた。渡したからな。頼んだぞ」

 ウェインは大きく肯くと、アーク先生は大きく深呼吸した。

「これで君たちへの用件は全て終わりだ。君たちの今後の活躍を期待するよ。それでは私は戻る。今、ラクス防衛隊とレオン王国軍との擦り合わせの最中なのだ」

「御多忙、お察しします。ありがとうございました」

 アーク先生は急いでどこかへ行ってしまった。

 残ったのは、エルとビル先生。

「じゃあビル先生。私たちはこれで失礼します。アヤナへ手紙渡さなきゃならないし、学生寮から教員寮へ引っ越さなきゃならない」

「そうだね。ファントム事件もあることだし、できるうちにやっておいたほうがいいね」

「では、また。エル、行こう」

「うん!」


 これで肩書は『旅の魔導士』となった二人である。ただ最初にやることが、レオナール家という貴族から届いた手紙をアヤナに届けることなので、ちょっと物足りない。

 アヤナを訪ねて、フランソワーズ家の別宅まで出向いた。

 家の人に取り次いでもらい、アヤナが出てくる。

「どうしたの二人とも。何か用?」

「レオナール家って貴族からアヤナ宛てに手紙が学院に届いたんだって。それ持ってきた」

「レオナール家ねぇ……知らなくはないけど、特段親しい繋がりはないわよ? それになんで私の家に直接じゃなく、魔法学院経由で送ってるのかしら」

「事情は何も聴いてない。俺とエルも多分同じ人から手紙が届いたから、その関係かも」

「なんて書いてあったの?」

「まだ見てない。さっき受け取ったばかりだから」

 アヤナは首をかしげながら、家へ入るよう言ってくれた。

「お茶くらい出すわ。上がって」


 アヤナの住んでいるフランソワーズ家の別宅は、やはりそこそこ豪華だ。客間に通される。使用人が寄ってきたので、アヤナは紅茶を出すよう指示している。

「さて。何が書いてあるのかな?」

 ウェインは自分のぶんの手紙の封を外し、中の手紙を見た。



『ウェイン・ロイス殿。

 先だってのファントム事件のご活躍をお聞き致しました。

 不躾ながら、用件があります。

 ファントム事件でファントムが最初に封じられていたという水晶球。それを今、当家が所有しています。これの処遇をお教えいただきたい。


 それと別件ながら、エリストア殿に当家からの贈り物がございます。

 是非とも一度、当家にお越しください。


 ラクスの街の外側に、馬車を用意しております。この手紙を見せれば当家へご案内致します。

 何卒よろしくお願いいたします。


レオナール家当主。ジョージ・レオナール公王』



 意外な文面にウェインは驚き、他の二人に見せてもいいと思ったので見せて意見を貰った。しかしエルの手紙もアヤナの手紙も、ほぼ同じ内容だった。

 エルだけ他の二人にはない一文が入っていたが、そのエルが言う。

「ファントムが持って行った水晶球があるって書いてあるけど……なんで警察とか軍隊に言わないのかしら。魔法学院が専門だから? でも学長とかではなく、私たち3人に名指しで手紙を出してきてる」

「馬車の準備はいつでもできてる、って感じよね。レオナール家までは馬車を使えば三日で行けるはず」

「しかし、なんだ? エルに贈り物って……」

「心当たり、全くないわ」


 わからないことだらけだったので、その日の夕食はいつもの酒場でレーンたちを呼んで緊急会議を開くことにした。



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