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ウェイン・アポカリプス  作者: 佐々木 英治
ウェイン・アポカリプス1.1

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アスリー師匠と「遠距離の交換日記」

「さて……。昼休みに集まってもらったのは他でもない。一つは俺の、アスリー師匠からの手紙の件。もう一つはアヤナから何か話があるらしい。とりあえず俺の用件から片付けようと思う」

 ウェインは机に、一枚の封筒を置いた。アスリー師匠からの手紙だ。


 封筒の表面には『更なる力を欲する時、これを開封せよ』と書かれている。


 ディアが言う。

「これウェイン宛で間違いないんでしょ? だったら絶対、パワーアップイベント系の何かだってば。早く開けちゃえ」

「昨日は言ってなかったが、裏の封に……魔力が込められていることに気づいたんだ。封印魔法だな」

「へ?」

「少し劣化してるが、それでも頑丈な封だ。これハサミとかで開けたら中身が無効になるとか、そんなイタズラも師匠ならやりかねない」

「で。封はウェインに普通に開けられるの?」

「多分」


「じゃあ開けちゃえ」


 そうだ。何を躊躇うことがあろうか。ファントムに魔力で力負けした自分には、更なる力とやらが必要である。問題ない。

 ウェインは封に魔力を流し込んだ。封筒がぼんやりと光る。

 中には、二枚の紙が入っていた。一枚は白紙だが、一枚は文字が並んでいる。



『親愛なる我が弟子ウェイン・ロイスへ。

 君は果たして活躍しているだろうか?

 この文章を読んでいるということは、順風満帆ではなくなっているということだろう。


 封筒には「更なる力」と書いたが、それを欲する時が来たのだね?

 実は君の身体には「封印」が施してある。昔、私が施した。

 幼少期、君はあまりに魔力が強く暴走の危険があったため、やむなく封印したのだ。

 

 しかし今の君ならば恐らく自分の力を完全にコントロールでき、暴走の危険もないことだろう。

 よって君は私と会い、君自身にかけられている封印を解くのだ。

 それで君の「本来の力」が引き出せるであろう。


 別紙が通信魔法がかけられている魔法の紙だ。

 それに文字を書けば、今の私とコンタクトできる。

 開封してから数時間の間しか効果がないので注意するように。

 では再会を期待するよ。それでは。


 アスリーより』



 ディアが拳を突き上げた。

「ほらほら! パワーアップイベントじゃん!」

「『封印』か……そういや昔、絶不調になった時期があったっけ。あの時かな」

「もう一枚の紙が通信魔法って書いてあったよね、これどうすんの?」

「対になる紙が師匠のもとにあると思うんだ。この紙に文字を書けばそれが転送されて通信できるんじゃないかな」

 アヤナも少し興奮した様子で言う。

「早く連絡を取ってみてよ。私だってウェインのお師匠さんのこと気になるし」

「うーん。綺麗だし奥が深い人だけど、普段はヘンな人だぞ?」

 言いながら、ウェインはペンで紙に文字を書いた。


『アスリー師匠。俺です。ウェインです。応えてください』


 ……。

 ……。


 なかなか返答が来ない。


 ……。


「壊れてるんじゃないの?」

 ディアがそう言った時、ピッと音が鳴り、紙に文字が浮かんできた。


『ごめん。寝てた』


 ウェイン以外の全員が、多少狼狽える。ウェインは予想の範囲内だったので、平常心で紙に続きを書き始めた。


『もう昼ですよ?』

『きっと時差のせいだと思う』


『そんなに遠く離れてたら、こんなに早く返信来ないと思います』

『ボケに正論は嫌いだな。で、ウェインはどうした?』


『ファントム事件って、師匠のところで報道されてますかね?』

『報道はあまり聞かないが、なんとなくの話なら伝わっているよ』


『俺はアッシュが作ったと思われる魔法生命体ファントムってのとやりあって、魔力そのものでは負けました。そこで「更なる力」が必要になったんです』

『……へぇ、ウェインがやりあって負けたのか。凄いな、流石アッシュ』


『あとファントムは悪魔使役ができるようで、場合によっては後に討伐隊が組まれる可能性もあります。俺は今まで黒魔法を磨いて来ましたが、更なる力が欲しい』

『……なるほど。事情は理解した。それならば会ってやらんこともない……。んー。って言うかごめん。先生、嘘ついた。私も久々に我が弟子に会いたい』


『良かった。俺は今、ラクスの魔法学院にいます。教員免許取るので教育実習があって、あと一週間は動けませんが、その他の時間なら今のところいつでも空いています』

『わかった。じゃあこちらからラクスへ行くよ。魔法学院でいいんだな? 戻るのにざっと十日間ぐらいかかると思う』


『はい。俺の席は何故か職員室にありますし、部屋は学生寮ですが』

『お土産、何がいい?』


『いや、特に何も……』

『私とお前の仲じゃないか! 何でも言ってみろ』


『じゃあ金券とか』

『えー……。それ以外に何かないの?』


『なら何か役に立ちそうな魔法とか、師匠のお勧めの魔法とかください』

『わかった。それなら前渡し分もあげておこうか。ウェインは「封印魔法」をもう少し勉強してみるといい』


『一通りはやりましたよ』

『もっと高度なヤツだ。もしファントムってのを封印することになった場合、数人がかりでの大魔法を使う可能性もあるだろうからな』


『わかりました、アスリー師匠』

『うむ。それでは私はこれからラクスへ向かう。なおこの手紙は自動的に消滅しません。ちゃんと分別して捨ててください』


『あ。この手紙、持ってればまた連絡用に使えません?』

『賞味期限は開封して数時間だ。ちなみに魔法名は「遠距離の交換日記」というオシャレな魔法名がついている』


『……ネーミングセンスが、ちょっと。でも使えると便利ですね。俺も出来るか確かめてみます。学院の図書室に行けばわかりますかね? 通信系の魔法なんですよね?』

『いや、実はこれこの前私が開発したオリジナル魔法だぞ。今度ウェインに会った時、原理は教えてやろう。後は学院に提出してみるつもりで論文としてまとめてあるが』


『あ、そうなんですか。凄いですね』

『では、私は寝るぞ、またな』


『いやいや師匠、ラクスに来るって言ってたじゃないですか!』

『あ、そっか。じゃあだいたい十日後にラクスで会おう。アディオス!』



 ウェインとアスリーのやりとりを文面で見て、アヤナとモニカは微妙な表情を浮かべている。

「ウェインの師匠って言うから、もっと立派な人かと思ったら……」

「ま、まあ。能ある鷹は爪隠すってヤツですよ、多分……」

 反対に、エルは可愛らしく微笑んでる。

「なんだか独特のセンスの先生だけど、ウェインが生き生きしてて楽しかったな」

 そしてレーンとディアはそれぞれ別の感想を口にしている。

「あれが数々の未成年を弄んだ女性か……まあ性格キツくはなさそうだね」

「魔法使いってあんまり社会に出ないからヘンなの多いし。偏屈じゃないだけマシよ」


 アスリー師匠は昔からあんな感じだ。見た目は綺麗な人だし、性格も根っこの部分では優しいし真面目。そして能力も確かに高いのだが、気分屋でイマイチ本気にならないところがある。他人からどう評価されようとも気にしない。マイペース。

 そんな師匠が自ら出向いてくれるというのだから、ウェインの期待は大きくなった。

 しかもラクスの街に戻ってくるまで10日程と言うのは、結構、運よく近くにいたところだったのかもしれない。



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