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ウェイン・アポカリプス  作者: 佐々木 英治
ウェイン・アポカリプス
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原始的ではない生命体

 6人はラクスを出発した。目的地はモニカの村。カドニ村と言うらしい。そこでモニカが発見した水晶球の調査と、必要ならば封印などの処置を施すためだ。

 ちなみに隊列は、レーンが先頭でバックアップにウェイン。次にアヤナで、エルとモニカが続き、最後尾にディアという並びだった。

 二番手のウェイン本人がスカウト技能を欲しがったために、配慮してくれた。どちらにしろ先頭と最後尾は索敵能力が高い者が努めねばならないし。


 装備はそれぞれ、

・ウェインはショートソードとナイフ。魔法学院の制服の上に革鎧を着ていると言う点では、他の魔法使いよりは防御力に秀でる。と言うか彼はもともと白兵戦をこなせる。

・レーンはバスタードソードとショートソード。ナイフ。後は革鎧に身を包み、楯はない。相変わらずの速さ重視の装備だ。彼は大抵のモノは躱せるし。

・ディアはショートソードとナイフ。後は革鎧。彼女は偵察兵の区分に分類されるが、レーンに随伴できる身体能力がある。

・アヤナはサーベルとナイフ。サーベルは「破邪の剣」と言う、リーチは少し短いものの、悪魔相手には絶大な効果を発揮するものらしかった。後は制服の上に革のプロテクター。魔法で強化されているので、普通の物より少し防御効果が高いはず。

・エルはナイフはバックパックの中に入れてある。腰には特殊警棒だけだ。要するに戦闘で刃物を使うことを想定していない。彼女に接敵された時点されたその時点で、『チームとして』はほぼ敗北である。彼女が数秒間の白兵戦闘ができるとしても、だ。防御面はアヤナと同じで、制服の上に革のプロテクターを着けている。

・モニカは、長い刃物の所持を法律で禁止されている年代だ。堂々と持っている人もいるにはいるが、魔法学院の優等生としては慎ましくせねばならない。腰にはフェンシングのレイピアと、小型のナイフを装備。後は魔法学院の制服だけだ。時間がなかったのでアーマーの類は全く着けていない。


 魔法学院の女性組は、装備がみな制服だった。冒険には似つかわしくないヒラヒラのスカートである。『防虫』効果のあるニーソックスやハイソックスを履いている。だがジーンズ姿のレーンやディアに言わせても、「別にどうでもいい」程度の意見だった。

 そもそも、もとが白兵戦を想定していないのだ。だがレーンは言う。

「白兵戦の時はロングスカートや袴であれば、足さばきが相手に見えないから優位に立てる場合もあるな。逆に相手がそういう場合は、普通とは違うかもしれないと注意しろよ」

 レーンがアドバイスをくれる。装備一つで色々な見方ができるものだ。


 街道沿いを進みながら、モニカから色々と聞く。

「異界へ繋がってるって言う水晶球。なんだってそんな水晶球があったんだ?」

「ウチの家、アッシュ関連のモノを集めたりで、コピー品のグッズとか本とかを売ってまして。その流れで生前アッシュが持っていたものとかもあるんですよ」

 アヤナが聞いた。

「なんていうショップ名なの?」

「『ロンリー・アッシュ』っていう名前です。今度ラクスにも大きく改装出店しますが、今でも支店ありますよ」

「なんか聞いたことある名前だわ、それ」


 アヤナはしばらく考えてから、続けた。

「あ、フランソワーズ家とも取引があったと思う。でもあそこ確か宗教法人じゃなかった?」

 モニカは弁明するように言った。

「はい。ドン引かれると思って話してませんでした。確かにウチは宗教法人になってますが、税金の都合でだそうです。私も詳しいことは知りません。でもやってることはアッシュに関する研究や収集、そして本だとかグッズ販売なんかですよ」

 ウェインは言った。

「確かに晩年のアッシュは色々な研究をしていたとされている。それらを調査する部も魔法学院にあるほどだ」

 ディアが言った。

「ところでアッシュって、なんで死んだの? 100年前くらいだっけ。寿命?」

 ウェインは首を振った。

「そこが英雄視される一面でもあるんだが、アッシュの死体は見つかっていないんだ。公式には行方不明がずっと続いて、それでもう死んでいる扱いとされている」

「へぇ」


「彼は晩年『不老不死』や『寿命延長』の研究も行っていたから、その研究結果と共にまだどこかで生きてる説を唱える人間だっているほど」

 モニカが聞いてきた。

「『悪魔』の研究はしてなかったんスか? ほら、暗黒空間とか」

「してたとされるが、禁忌に近い技術だからな。あまり流行らなかったようだ」

「『不老不死』も?」

「スポンサーはついたようだが、結果は知っての通り、実現できていない」

 ディアが訊ねてきた。

「不老不死って、神様に背くとかそういう縛りないの?」

「そうだな……エル、説明してみてくれ」

 話を振られたエルは、一瞬驚いたような顔をしたが、肯いた。ここらへん、回復魔法とも関係があることだし座学でエルは優秀だと聞いている。


「えっとね、そもそも原始的な生命体に『寿命』はないの。環境が許す限り増え続け、また老いもしないの。それが複雑な生命体に進化が進んできた時に、いつのまにか『寿命』というものができた。産まれて、成長し、老いて、死ぬというサイクルのほうが『種』として見た場合に地球環境に適しているとされているみたいなのね。だから寿命を司る体内物質とかに影響する何かがあれば、原理的に不老はできなくはない」


「満点だよ、エル。それとは別に栄養学や衛生面、魔法のおかげでラクスの街の平均寿命は高くなってるが、そういうのと『不老』は完全な別物だ」

 レーンは空を見上げる。

「原始的な生命体には寿命がない……高等生物は『寿命を獲得』した。あまりピンとこないけど」

「まあねぇ……。ともあれアッシュはそんな研究にも噛んでた。色々やってたらしい、あの人は。ここらへん、モニカなら詳しいだろう? 魔法学院の図書室でも調べられるし」

「あ、はい。でも私、アッシュを信奉する家で育ちましたけど、魔法学院に来てからはウェインさんの教えが第一なんで、そこまでアッシュのことに詳しくないっスよ」

「そうなのか」

「はい。で、話は戻りますがアッシュの『悪魔』の研究のほうはどうだったんですか?」

「悪魔の生体物質を皮膚に貼ることで、止血や処置、装甲になるとかいう研究もしてたはずだ。でもその悪魔の生体物質は暗黒空間にしかないから、日常的に使うわけには行かなくて頓挫したようだぞ。やっぱりそれなりの魔力と時間が必要で、コストに問題が……要するにお値段が高い」


 モニカはポンと手を打った。

「『暗黒空間』! 今回の水晶球と話は繋がるじゃないですか」

「まあな。今回、うまくすればアッシュの研究成果が見れるかもしれない」

「だとすると、なんかワクワクしますね」

 モニカは楽しそうな言葉だった。

 言葉だけなら。

 彼女の……と言うか女の子の心理には、ウェインは疎いので。言葉をそのまま信じるしかできなかったけれども。




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