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ウェイン・アポカリプス  作者: 佐々木 英治
ウェイン・アポカリプス

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出撃!

 次の日、強化された革鎧をジャンから受け取る日だった。ウェインが魔法学院のエントランスに入ると、奥から、走ってくる人影があった。

 久々のモニカである。

「ウェインさん、ウェインさーん!」

「おお、モニカ。帰ってきたのか」

「はい! それで、一つ大事な話があるんですが」

「なんだ?」

「もう学院依頼にも出したんですが、ウェインさんたちに最適だと思える案件がウチから出てきまして」

「モニカ。長くなりそうなら、ラウンジに行こう」

「はいッス」

 ラウンジはいつも、そこそこの人数で賑わっている。全科履修生だけでなく、一部履修生、教室を抑えるほどではない教員や職員。そしてその知り合いの外部の人間などで、だ。

 ウェインとモニカはそのラウンジに移動し、テーブルを前に向かい合って座る。


「えーと、ウェインさん。どこから話しましょうか……」

「最初からな。モニカは法事だかで実家に帰ったんだろ? そこから」

「ああ、そうっス。私の祖父が亡くなりまして、お葬式をあげました。その後、ウチの店……アッシュ関連のグッズなんかを販売してるんですが、その中の水晶球のマジックアイテムを調べてた時に、出てきちゃったんですよ」

「……何が?」

「異界への入り口です。中は暗黒空間に繋がっていました。そこでそれ以上は調べませんでしたけど、どうも、その空間に何かいる気配があったんですよね」


「暗黒空間」


 その手のはよくあると、皆が知っていたが(『悪夢の草原』にもあった)、だが研究や利用はほとんどされていない。大抵は『悪魔』関連になってしまうからだ。

 モニカは続ける。

「これは時代的に、アッシュ本人が造った可能性もあります。でもその空間の奥に何かがいる……感じがあったので、その水晶球は封印をして、私は戻ってきたんです。内部の調査ができる人員と、場合によってはより強力な封印ができる人を求めて」

「なるほど……。モニカが戻ってきたのはいつだ?」

「昨夜の真夜中です」

「一人で?」

「いえ、ラクスでのグッズ販売のためにスタッフが二人。馬です。私は馬に乗れないので、馬車の荷台に乗ってきました」

「モニカの、その村まで何日かかる?」

「馬を使わず徒歩なら三日か四日ってとこですかね」

「警察や軍隊には言ったか?」

「通報はしましたが、何せ村には駐在所しかありません。警察も軍隊も、いつになるかは……。だから今どうなってるかはわかりません」

 アッシュが造ったかもしれない、暗黒空間。その中にいる『何か』。その調査、あるいは強力な封印……。

 暗黒空間にいるとなれば、悪魔だろうか。だったら上位でもグレーターデーモン、最上位でもエルダーグレーターデーモンを想定。ウェインの極大上級魔法があれば勝てる相手だ。今回はエルがいるので防御も心配ないし、前衛にはレーンがいる。索敵にはディアが使えるし。悪魔相手には強力な装備のあるアヤナ。大丈夫だと思った。

「うん、確かに俺たちに向いているな。報酬は出るんだろうな?」

「村から出るはずです。私は詳しくはアレですが、就職課の人に渡した書類に書かれていたはずです」

「そうか。興味があるし、まず正式にその依頼をちょっと見てみるか」


 ウェインとモニカは就職課へと歩いた。以前ウェインは就職課に、優先的に仕事を貰えるよう頼んでいる(どこまで聞き遂げてくれるかは別として)。

 就職課で、依頼の書類を見せてもらった。まだ手続きの途中るらしく、正式には閲覧させていないらしい。

 人員は10名程度、成功報酬がかなり巨額で出る。暗黒空間などの諸事情で、それが事実であれば魔法学院からも持ち出しが発生するようだ。

「ふむ……いいな。悪くない」

「でしょ?」

「ただ俺一人の独断で受けるわけにはいかない。皆と相談しないといけないが……運良く今日、皆が集まる日だ。聞いてみよう」


 まずモニカを入れて6人が集まって、ジャンに強化された革鎧を受け取りに行った。

 指定された金額を支払い、レーンとエル、アヤナが試着する。問題ないようだ。

 6人は今度は就職課に行って、ウェインが見ていた依頼の書類を皆で閲覧する。

 レーンは言った。

「面白そうだね。特に相性がいい。ウェインの黒魔法、エルの白魔法。俺とディアの前衛、悪魔に強いサーベルを持ったアヤナと。危険はもちろんあるだろうが、いいと思う」

 ディアも肯いた。

「賛成。約10人を前提にしているからか、結構報酬いいし」

 ウェインは言った。

「ただ問題と思われるのが、警察と軍隊だ。軍隊は出てないらしい。まあレオン王国軍は基本は国外向けだからな。国内向けは警察か、あとはラクスの防衛軍だが……時間がかかってるのか、まだ出てないそうだ。それと警察の動きは不明。何かしらの行動はあると思うんだが」

 ディアは聞いてくる。

「警察か軍隊の出方を見てから、現地に行ったほうがいいってこと?」

「いや、そうとも思うが、依頼書が現にここにある以上は先に到着して一仕事終えても問題ないだろう。だってラクス防衛軍が処理しちゃったら、ここにある報酬はなくなっちゃうからな」

「じゃあどうすんの?」

「すぐに出発して調べてみる、に一票だ。レーン、採決してくれ」

 レーンは肩を竦めた。

「こういうのは民主主義じゃできないんだがね。だが俺も賛成だ。異論がある人は?」

 ディア、エル、アヤナと見まわす。誰も異論はないようだ。


「よし、だったらすぐ準備してくれ。明日の朝出発だ。三日で到着するように短いルートを通ろう。ウェインは作戦会議だ、俺と来てくれ。詰めたい部分がある。エルとアヤナは、装備をディアにチェックしてもらってくれ。これでいいか?」

「……えぇと、私は?」

 モニカだ。ウェインは言った。

「モニカはラクスにいればいいだろう」

「そうはいかないですよ、封印したの私なんですから。私以外が無理に封印を解いたら、最悪、内部空間への繋がりまで切れちゃいます。道案内も私ですし」

「じゃあモニカを連れて護衛込みで行けばいいんだな」

「そういうことですね」

 事態が一気に急変した。

 今から準備して、明日の朝にはラクスを出発。三日後にモニカの村へと到着。そこで水晶球の封印をモニカが解いて、暗黒空間の調査、あるいは更なる封印を施す。

 ただ、もし『破壊衝動型』の悪魔でも中にいたら、モニカ程度の魔力じゃ長くは封印できないだろう。せいぜい一日か二日程度抑え込めるだけだ。

 いや、もしそうだとしたら、その前は? モニカがその水晶球を調べる前はどうなっていた? 考えると、危険な悪魔など存在しないのかもしれない。

 破壊衝動に対する『理知的』な感じのそれ、か。

 ただ考えてもわかることじゃない。現地に行って調べるしかなかった。



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