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ウェイン・アポカリプス  作者: 佐々木 英治
ウェイン・アポカリプス
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言えなかった言葉が、あっさりと

 お風呂から上がって。

 レーンとディアは同じ共同住宅に住んでいる。アヤナは、フランソワーズ家の本宅はレオン王国の城下町にあるが、ラクスではラクスにある別宅だ。

 魔法学院の寮に帰るのはウェインとエルだけになった。ちなみにモニカも寮住まいだった。

「じゃあ、皆。俺たちはこっちだから」

 ウェインとエルが手を上げる。ディアが手を振ってきた。

「ばいばーい。またねー。私たち、何か依頼がないか見てみるよ」

「ああ。じゃ、な」


 帰り道。エルと二人っきりになる(数日前までは、モニカと三人で帰っていた)。

 まだ夜も早いし、魔法学院近辺は物騒なことは何もない地域だ。夜道とはいえ、危険度は低いけれど。

 ふと思う。お風呂上がりのエルからは、なんでこんな良い香りがするのだろう……。

「ねぇウェイン……」

「ん!?」

 慌てて、エルの声に耳を傾けた。

 エルは胸の前で、両手をギュッとさせる。

 そしてエルから発せられた言葉は、あまりに唐突だった。


「明日のオフ、一緒にどこか行かない?」


「え!?」

「……やっぱり、迷惑だった?」

 哀しそうな顔をするエルだ。ウェインは慌てて否定した。

「いや、少し驚いただけ。もちろん、もちろんOKだよ! 俺が誘おうと思ってたんだから!」

「良かったぁ。私ね、訓練が終わったら言おうと思ってたの」

「そっか」


 ウェインが言いたくて、言い出せずにいた言葉を、あっさりと言ったエルだ。

 しかし驚いた。脈はあると思っていたが、あの内気なエルが。エルのほうから誘ってくるとは全く思っていなかった。

「じゃあエル。明日はゆっくり起きて……昼頃に集合でいいか?」

「うん」

「どっか行きたいとこある?」

 そう言う一方で、頭をフル回転させる。

 どこがいいんだろう!? 美術館とかにすべきか? 博物館か? しかしウェインは美術や歴史の素養がない。今までの人生で、デートプランはいつも相手任せにしてきたツケがここにきてやってきた。

 エルは目をくるくるさせた。

「うーん、どこでもいいけど。お祭りエリアとか行ってみる? 昼間は大道芸とかやってるし。私、もう、特訓で疲れちゃって疲れちゃって」

「息抜きが必要だものな。よし、そこで決定」

 ウェインの心拍数のほうが、絶対に高いはずだ。


「実はね、ディアに言われたの」

「うん?」

「ウェインのことを相談してたら、こっちからデートに誘ってみなさいって」

 おお、素晴らしい。ナイスだディア。素敵すぎるぜ。……そんな感じでウェインはディアに感謝した。

「私今まで自信がなかった……ウェインと肩を並べて歩く自信が。でも特訓で、『瞬活』使って10秒くらいウェインと戦えた時、私にもできるんだって思えたの。そしてこれまで、時々ウェインが誘ってくれてたのに、卑下ばっかりしている自分に気づいた……。私ね、変わりたいの。色々と」

「そうか……。でもエル、もうお前は変わってるんじゃないか? 前までならエルから誘うことなんてなかっただろう」

「そうね……そうかも」

 エルはニッコリと微笑んだ。愛らしい。


 魔法学園の正門までやってきた。寮はこの横に、男子寮、女子寮とある。

 そう言えば学生の身分がなくなったウェインは、やんわりと寮からの退去を言われている。早く教員免許を取って教員寮に移るか、近くで賃貸物件を探さねばならない。

「じゃあエル。明日のお昼前頃、女子寮に呼びに行くよ。10時頃がいいかな。屋台で昼を食べよう」

「うん、わかった」

「じゃ、明日はよろしくな」

「うん。また明日ね」

 エルと別れ、男子寮の自分の部屋に戻ったウェインは。


 大きく拳を突き上げた。




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