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ウェイン・アポカリプス  作者: 佐々木 英治
ウェイン・アポカリプス1.4

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310/313

ディアっちはロックンロール

 翌朝。

 ゆっくりと起きてから、ゆっくりと朝食を摂った。

 ウェインですら少し疲れてるような気がした。

 アントワーヌ刑務所からクラッシャーのとこ、それからフェイと会って、模擬戦。ファルやらも来たし、少し急ぎすぎたようだとウェインは実感した。

 さほど強行軍ではないので、一日二日は延ばすべきだった。

 ウェインですら多少の疲労を感じる。なら、エルやモニカはもっと疲れてるはずだ。


 アリス隊の食堂では。隊員達より遅れての食事なので、場には余裕があった。今はフェイ、ファル、ミュール、エミアは別行動である。

 まずアヤナが言う。

「『クラッシャー』だか『ピースフル』だか……そこから収支報告書を持ってきたわ。少し分析して貰おうと思う」

 タニアが軽く聞く。

「あれは公開されてる情報だろ? 何か分かるのか?」

「私じゃなんとも……だけど。見る人が見れば、虚偽の記載やら資金の方向性はわかると思う。王家から広告も入ってるらしいんで、そっちから情報を回して貰うだけでいいかもだけど」

 ディアが軽く話を繋げた。……彼女は今、ポニーテールにしておらず髪をさげているので、ぴょこぴょこしていない。

「金融とマスコミ・情報をやってる宗教団体って……それなりに何かできそうだね」

 モニカが片手を上げる。

「ウチの『ロンリー・アッシュ』も、宗教法人で税金が優遇されてるみたいです。私は詳しく知らないんですけど」

 アヤナは肯いた。

「何でもかんでも『宗教法人』にされたらアレなんで、一応色々あるみたい。でも『宗教法人』に『なる』なら、一番早くて確実なのは『買収』みたいね。ガワをどっかから探して買い取って。必要なら名義も変更すればいい。そんなにまでして法人格が欲しいかは、私にはわからないけど」


 ウェインは肯く。

「『クラッシャー』の方は調査継続、みたいな感じだな。王家が把握してるならそこ次第でよさそう。で。あと王都ガルディアに来た目的。剣術指南ストークさんに助言を請うこと。これはOKだ。残りはエアタズムの……」

 ディアが肯く。

「とりあえずジョルジュ・クイエを殺すことは出来た。ってゆーか、アイツを殺すか捕まえない限り、エアタズムはジョルジュ一匹に労力をかける必要がある。ガウマンさんなんて『少佐』だよ!? 何でクズ一匹に左官が出るのかって話」

 タニアは肯く。

「確かにねぇ。ちょっと規模が大きすぎたとは思うけど」

「エアタズムの軍が行動するってことで、ほんの少しは、レオン王国にも情報が入ってる。流石に無断で何かやらかすのはマズいし」

「ふーん……どれくらいの人間が知ってるの?」

「それこそ私にはわからないけど……ま、ほら、レオン王国からすれば。エアタズムに恩を売っておけば、戦争の時にニールを左右から挟めるじゃん? 敵の敵は味方、的な」

「それなら。レオン王国が、エアタズムの挙兵の手伝いとか……」

 ディアは軽く首を振る。

「もともとエアタズムは戦争になったら勝手に挙兵すると思うし。そこらへんは、別にどーでもいいと思う」

「ふーん……」


 ディアは言う。

「後はジョルジュが刑務所に入った理由よ。表向きは『シャバから逃げるため』だけど……結局、アイツが刑務所に入った後も薬物は横流しされ続けてるし」

 ウェインは片手を上げた。

「それはもう、エアタズム側の問題では? 盗まれたりする軍や研究機関、そして売買ルート。もう、そのジョルジュって人間一人だけとは思わないし。そいつに全部押しつけるのも違う気がする」

 ディアは肯いた。彼女は普段より少し真面目だ。それから首を振る。

「いえウェイン。ジョルジュが全部一人で勝手にやった……これはヤツに押しつけるわ。ガウマン少佐とかは、それでお役御免。通常任務に戻れるんだから」

「まだ流れてる麻薬は」

「後は、私たちが関わるのは道義的なモノだけ。ハッキリ言えば、もうどうでも良い。エアタズムのポリスが頑張ってくれるでしょ」

「そっちのポリって、優秀?」

「無能。そもそもレオン王国よりも、よっぽど規模も小さいし人数が足りない」

「じゃあ、どうするのさ」

 ディアは軽く手を振る。

「どうもしないわ。もう何もしない。誰かが勝手にやれ、と。私やレーンは別に、全人類を救う正義の人間じゃない。国民を守る警察でもない。明日のトンカツ・ライスの心配をする、ただの民間人だもの」


 一瞬、静かになったが。エルは言う。

「でもディア。貴方はそれでも……『アヤナ・シスターズ』に協力を仰いで、それでも何か調べてる。それはやっぱり……」

 ディアはぶんぶん手を振った。

「だから道義的なモノだけ、だってば。エアタズムの人間が引き上げた以上、こっちでは私やレーンが色々と調べやすいのは確かなわけで。でもそれも、第一目的じゃないわ。ついでよ、ついで」


 ディアのその言葉を聞いて。ウェインはちょっと目配せした。

「なあディア。お前とレーンの目的って、何だ?」

「え?」

「確かレーンも、ラクスには『優秀な魔法使いを探すため』みたいなことを言っていた。いやそのジョルジュってのを殺すためだけなら、ディア達はあのガウマン少佐と一緒だって良かったと思うけど」

 ディアは指をちょいちょいする。

「私らさ、軍の所属じゃないし」

「『ジュヌビエーブ大使』の時だって、アレは偶然転がってきた話だ」

「逆よ逆。色んな人が色んなモノを探して。いっとー可能性が高かったのがアレと言うだけで。ウェイン視点から見てるから、ヘンに見えちゃうだけで」

「そっか」

 それから少し考え……

「俺とレーンって、戦場で会ったじゃん?」

「ん」

「あの時、レーンとディアは『ニールの傭兵』だった」

「ん」

「……」

「……?」


 ウェインは一呼吸置いてから言った。

「そっか。正式な軍隊所属じゃないから、小回りが効くんだ」

「そだよ」

 ディアは、コクコク軽く肯いた。

 一方でアヤナが可憐な声を出す。

「思えば。私たち、ディア達のことを知らないわ」

「まー、そーだねぇ。あまり言ってないし」

「もし良ければ……だけど。聞かせてくれない? 貴方たちがどこで何をしたか、そしてこれから何をしたいのか」

 ディアは、ふにゃふにゃして答える。

「いあぁ。そこまで大袈裟ではないけど。ほらレーンは『スタイナー流』を作りたいって言ってたじゃん?」

 アヤナはさらに言葉を紡ぐ。

「レーンはいいとして。ディアの目的は何なの?」

 ディアはクスクス笑った。

 そして顔を上げ、言う。


「女が、男についていく。そりゃーもう、それが目的よ」


 モニカがやたら感銘を受けていた。

「うおぉおディアさん、深いッス」

 ウェインは、ちょっと聞いてみた。

「本当にそうなのか? それだけ?」

「え? 『それだけ?』って、それで十分じゃん」

「そっかぁ」


 ディアは肯く。もし彼女の髪が束ねられてポニーテールだったならば、今はぴょこぴょこしてるはず。

 そして彼女は、ゆっくり続ける。



「一昔前の歌……POPとかあるじゃん?

 恋とか愛とか

 好きとか切ないとか

 夢とか希望とか

 信じるだの願うだの


 なんかもう、凄い陳腐で

 そんなに恋が好きなのか、と。お前ただ発情してるだけじゃね? と


 もう言い古されて

 もう聞き飽きて

 今同じモノ作ったら、絶対に嘲笑うような

 もう……共感性羞恥?

 聞いてて、コイツ本気でそんなん思ってるのかよ……と

 マジで恥ずかしくなって、うっかり苦笑する


 あんなの歌ってた人間は、今どこで、何をしてるのか

 その愛やら恋やらが本当に素晴らしいならば、50歳とか60歳になっても歌ってるはずなのにさ


 だから、そういうことだと思う



 けど……


 だけどさ


 でもまあ……そんな時期は楽しいんだよ

 ああ言うのを味わえてる私は、かなり恵まれてるんだ


 今は、大人は邪悪だぜーとかロック歌ってるけどね」




 モニカが、何故か感銘を受けている模様。

「うぅ、ディアさん。凄いっす。深いっす!」

「いあぁ……照れるわモニカ」



 アヤナが呟いていた。

「もしロックンロールに行かなければ、なんか深い人間な気がする」


 ウェインも呟く。

「いやロックも、ラブミーとかドンチューノウとかあるだろ」



 エルは首をフルフルさせる。

「そもそも、私はロックンロールってどういうものか知らないまま、ディアのグループに入れられてしまったのだけど……」






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