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ウェイン・アポカリプス  作者: 佐々木 英治
ウェイン・アポカリプス

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訓練終盤

 翌日。訓練終盤で独自に修行してきたレーンが合流し、訓練が終わって。

 水浴びをし、酒場で食事。

 今日からしばらくはモニカがいない。


 食事も終わって、お風呂へ行こうという流れになって。男性陣・女性陣と別れ公衆浴場に入る。当然他のお客さんたちもいるので、湯船の中でウェインはこっそりレーンに聞いた。

「なあレーン。どうやったらうまくデートできるか教えてほしいんだが」

「ん? エルとデートすんの? 楽しそうだな」

 ウェインは逆に驚いた.

「え!? 俺、何もエルとのこと言ってないんだけど」

「口には出してなくてもさ。わかりやすすぎでしょ」

「そうか……まあいい。それで、なんか秘訣とかないのか?」

 レーンは少し考え込んでから答えた。

「うーん、よくわからないなぁ。俺の場合、適当に話してると勝手に女たちが俺に寄ってくるから。そん中でいっとー好きなタイプを選ぶ感じ。胸の大きなのが好み。あと一応、この前ラクスに来て初めて恋人できたぞ」

「……早すぎない?」

 いつのまにそんな簡単に恋人を作っていたのだろうか。

 完璧な恋愛(?)エリートだ。そのため真似どころか参考にもならない。もっとも、レーンの場合は破局が早いとかも聞いたが。

 レーンは言う。

「そうだなぁ。あと早めに肉体関係を結んでおいたほうがいいと思う」

「いや、俺たち、まだそういう関係じゃ……」

「心構えだよ心構え。のんびりしてたら、他の誰かにエルを取られちまうぞ。あとどうしたって性的な相性はあるわけだし」

 確かに。エルにだって選ぶ権利はあるのだ。早めになんとかしなくてはならない。


 少し悩み始めたウェインに、レーンは言う。

「確かにエルは可愛い。小動物的な感じだな。可憐と言うか、守ってあげたくなると言うか。神秘的と言うか、儚げと言うか。中性的と言うか、幸薄そうと言うか」

「……なんか後半、悪口になってない?」

「いや褒めてるんだよ。薄命なくらい美人だし」

 ……レーンたちの国ではこう表現するのだろうか。ユニバーサル規格の言語には限界はある。

「もしに。もっと胸が大きかったら、俺が粉かけてるところ。それくらい可愛い」

「あぁ……レーンは巨乳好き?」

「そうだな」

 敵にならなくて本当に良かったと思う。モニカに指摘された通り、ウェインはどちらかと言えばロリ系、貧乳好きだ。そんなレーンは言う。

「それに俺、今でこそエルとなんとかやってるけど。当初はエルに相当怖がられてたぞ?」

「そうなの? なんで?」

「そりゃあ、ドライ砦の東の夜。俺が剣持って追いかけちゃったからだろう」

「あー」


「でもさ……」

 レーンが続ける。

「エルからはかなり悲壮な決意じみたものを感じる。模擬戦をしてて分かるんだ。体力もなく運動も苦手なエルが、特訓にも必死になって食らいついてくる。ウェインの後を追いたさにというなら、その必死さもわかる気がするんだな」

「俺の後……?」

「悪いことは言わないよ。早めに、多く二人っきりでエルと喋ってみることだ。彼女の真意もわかるだろう」

「それモニカにも言われた」

「んー。あんな子供にも心配されてるのかよ……ダメだな。しっかりしろウェイン。まあ軍事行動の時以外は、俺も色々と柔軟に考えるとするよ」

 言い終えてから、付け足すようにレーンは言った。

「ディアにも相談してみたらどうだろう。なんだかウェインとエルのこと危なっかしいと言ってたから、何か思うこともあるんだろうな」

「そうか」

「なんなら今日、俺たちの部屋に来いよ。お茶ぐらい出せる。そこでディアに何か話が聞けばいい。正直俺は色恋沙汰は管轄外だ。ディアのほうが詳しいだろう」

 そうすることにした。


 お風呂から上って。

 他の女性陣たちと分かれる。もとの体力からしてアヤナはまだ元気が残ってそうだが、エルはもう限界に近い感じだ。

 ウェインはレーンとディアの共同住宅までついていくことになった。

 まだラクスの街は眠らないが、もう暗くなってきていることは事実。

「二人の部屋って、どんなトコなんだ?」

 対しての、ディアの言葉だ。

「こーゆーのはね。探す時にファミリー層が多いトコを探して。まーそんな地域なら割とどこでも大丈夫かなー。あとラクスの中じゃ結構街灯あるから、そういうのも目安になるし」

 歩きながら、ディアは一つのお店を指差す。

「ここ、お花屋さん」

「ディアって花、買うの?」

「買いはしないけど。周りに『花を買う人がいる』ってことで、まあまあ治安が良い場所の一つかと」

「へー」

「ま、私達には大した財産ないんで、空き巣に入られてもそこまでダメージないけど。レーンのバスタード盗まれると少し厳しい」

 中心部からは少し歩いて、繁華街の外。まあまあの住宅街。古びた家屋が多いがまだ実用に耐えうりそう。

 そしてレーンとディアの部屋に到着。そこは多少古くなった共同住宅の、2階だった。

 あまり頑丈ではなさそうな扉に、チャチな鍵。しかしこれでも魔法としラクス内では治安は良い。問題ないだろう。


「お邪魔しまーす」

 部屋の中に入る。そこはわりと小奇麗だった。ディアのおかげだろう。

「ウェイン、ウェイン。こっちこっち。そこどうぞ」

 薦められるままにリビングルームのテーブルの前に就く。そこには蝋燭も置かれていたが、そこに火は点けず、代わりにディアが簡単な光の魔法を使って明かりをを灯した。それからディアは楽しそう(彼女はいつも楽しそうだが)に、お茶か何かを淹れにいった。レーンも席につく。

 しかし、そもそもディアこそが、ウェインとエルのことを『危なっかしい』と言っていたらしいのだ。彼女が来ないことにはどうにもならない。

「ウェイン、紅茶で良い? コーヒーもあるよ。アレルギーとか宗教的な何かとか、ある? お砂糖いる?」

 ディアは滅茶苦茶気が利く。

「何でも大丈夫。砂糖なし。あっ、寝る前だしカフェイン少ないのが良いな」

「じゃあハーブティがいいかな。カフェインないわよ」

「へー。置いてあるんだ。じゃあそれお願い。どんなハーブティなの?」

「んー。なんか凄いやつ」

 ここらへんは割とざっくりしているようだ。

 3人分のハーブティを持ってきて、それぞれの前に置いて。ディアも席に就いた。


「で、ディア。俺とエルが危なっかしいと思ってるって聞いて……ここに来たんだけど。それってどういう?」

「んー、まあねぇ……」

 ディアはハーブティに口をつける。

「ウェインってさ、恋愛のことあまり意識してないのかと思ってたんだけど。私から言わせると、既に色々と危なっかしいのよねぇ」

「だから危なっかしいって何さ」

 湯上りのディアは、いつもより色っぽく見えた。今は赤茶けた髪をおろしている。

「ウェイン気づいてないみたいだけど、アヤナだってウェインのこと好きなほうだよ」

「うん。そりゃそうだろうけど、そこまでってほどではないんじゃない?」

「確かに熱量はそこまで高くはないけど」

「だろ?」

「いや……彼女は貴族の立場だから抑えているだけで。もし普通の人だったら、かなり凄いと思う。相当にウェインのことを好き。Likeみたいなのも相当だけど、やっぱLOVE」

「そうかなぁ? あまりそんな気はしないけど」

「それこそが『危なっかしい』って言ってるのよ。ウェインは二番弟子の熱量、敬愛に慣れちゃってるからあまり気になってないっぽいけど」

「うん……」

「それを踏まえるとさ。一番弟子に好かれてて二番弟子には熱愛されてて、それでいて当の本人はエルが好きなわけでしょう? でもエルからすれば、アヤナやモニカのほうがウェインと接点あるわけだし。なんか意図せず色んな人が泣きそうな気がするんだけど」

「う……」


 ディアがハーブティを一口飲んで、言う。

「エルに対して早めに動くってのは私も賛成。なんかこう、肉体関係がまだ早いってんなら、既成事実を作っておいたほうがいいとも思うワケよ」

「既成事実って?」

「ウェインが誰かを好きだっていう証。とりあえず恋人同士になる」

「それができればなぁ……モニカにも言ったけど、俺、飛び級をいっぱいしてるから、周囲の女性はおねーさんばっかりになるだろ? だから俺、こっちから仕掛けたことなくて」

 ディアは怒ったように、テーブルを指でトントンする。

「それでも。それでもこっちから仕掛けるのよ。いいえ仕掛けなければならない。うまくやろうとしなくていいの。気持ちを伝えればそれでいい。きっと何かしらの進展があるから」

 ディアは毅然と、しかしそれでも優しさを含めて言ってくれた。ウェインも肯く。

「わかった。今度エルをデートに誘ってみようと思ってたところだから、その時にできるだけ踏み込んでみる」

「おぉ。そうそう、その調子」

「なんかいいアドバイス、ない?」

「今はまだ特にないわ。でも自分を好きになってくれた人ってのは、こちらも好きになりやすいものよ。ウェインはもっとアピール増やしなさい」

 精神論でなんとかなるものだろうか。しかしウェインがエルに、目に見えたアピールをしたことは少ないのが事実。ウェインも覚悟を決めた。


「んじゃ、この話はひとまずこれで置いておこう。さて、今まで忙しくてあまり聞けてなかったが、レーンは俺たちが訓練の間、どうしてたんだ?」

 レーンがハーブティをすすりながら言う。

「剣の訓練や冒険者ギルドで技能検定受けてたよ。主に無料の検定しか受けてなかったけど、白兵とスカウトはカネ払って10にした。やっぱりある程度数字がないと、書類審査で通らないこともあるみたいだと言われたから」

「マスタークラス、って言ってたな。難しかったか?」

「いや、楽勝だろう。ディアで白兵10取れるかどうか、ってところじゃないかな」

「じゃあ肝心の剣の訓練のほうはどうだ? 他の道場とか行ってたんだろ?」

「んー。お座敷剣法が多いねぇ。だけど巧い人は巧い。早く、もっと多くを盗みたいところ」

 レーンのフィジカルにテクニックが合わされば、完璧に思える。ウェインも早くレーンの成長を見たかった。


「俺はレーンとディアに魔法を教える約束もしている。これはアヤナにもだが、『高速詠唱法』を教えたいと思っている。初球魔法は火力が低いが、牽制くらいにはなるから」

「ああ」

「二人とも、魔法の調律はどうなっているんだ?」

 レーンとディアは互いに顔を見合わせ、苦笑した。

「残念ながら、進んではいるが目標のレベルに到達してはいないな。アレでなかなか難しくって」

「すぐブレたり揺れたりするし、難しいわよねぇ……」

「剣と魔法のハイブリッドには、まだまだかかりそうか」

 ハイブリッドとは言っても、二人が使えるのは初球魔法までだ。魔法に強くないレーンなんか最低出力での使用になるだろう。だがそれでも、実戦で使えるようになれば高い効果を発揮しそうなのだ。


「実戦でタイマンならいいが、混戦で走りながら使うことも多いはず。ちゃんと錬成と調律やっとくんだぞ」

 ディアは手を上げた。

「はーい」

「じゃあ俺はこれでおいとまする。お茶、ありがとう。美味しかったよ」

「いえいえ。ウェインはエルのこと、頑張ってね」

「ああ。だがその前に訓練を終わらせなきゃ。な、レーン」

 レーンは大きく肯いた。

「訓練終了後に、戦術的な部分を煮詰めていくつもりだ」

「ああ。じゃ、おやすみー」

「ばいばーい」

 ウェインは二人の共同住宅から、帰ることにした。

 一方で、思っていた。


『ディアってアレで結構色っぽいよな』




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