表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウェイン・アポカリプス  作者: 佐々木 英治
ウェイン・アポカリプス1.4

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

306/313

道具と装備


 段々と陽も落ちて、夕暮れになっているアリス隊の基地。

 ウキウキしてるウェインとディアとは別個で、タニアは郵送されてきた宝箱の中を覗いた。

「ん? ウェイン、隅っこにコレ入ってるぞ?」

「ん?」

 タニアが取り上げた小さな袋。メモ用紙に文字が綴られている。

「『信頼性を高めた、付与研のリベレーターです。どうぞ』、だって」

 タニアはその袋の中から、とても小さな宝石を取り上げた。

 ファルは目をくるくるさせる。

「たーにゃん、その『リベレーター』って?」

 エミア少尉が答えた。

「小さな宝石から、一撃だけ魔法の弾丸を射出するものです。威力もないし効率とか命中率も悪いけど……護身用とか、家に防犯用に置いてあるとか、その類いのです。基本的には使い捨てで」

 モニカが肯いている。

「ウチのお隣さんにはショートソードでなく、魔法弾の発射装置があるって行ってましたね。……多分、それがリベレーター」

 ミュール中尉もその小さな宝石をチェックする。

「あら。でもコレ凄いかも。距離も威力も水準以上だと思う。使い捨てにするには惜しいくらい」

 ウェインはその小さな宝石を受け取った。

「じゃあコレはエルが持っておいてくれ。エルが一番、直接の攻撃手段に不安があるから」

 エルは肯いて、その小さな宝石を受け取った。

 そう……エルは炎の魔法を飛ばしたり等の、攻撃手段はとても苦手だ。護身用に持つには最適だった。


 ウェインは肯いてから、改めて自分の新武装『ボーパルマニューバー』を見た。とても満足である。

 それからアリス隊の人たちに言った。

「アルテナ大尉、ミュール中尉、そしてエミア少尉。いくつかお願いが」

 アルテナ大尉は少し肯く。

「はい、構いませんが?」

 ウェインも肯いて、言う。

「まず私の……この『ボーパルマニューバー』のことですが。これをある程度、公表できませんか?」

「構いませんよ。偽情報は断りますが、事実を。そして……それを少し誇張する程度なら」

「お願いします。軍隊でそれを少しだけ誇張していただければ、マスメディアでさらに誇張して増幅させる。……そんな人に心当たりがあります」

「そうですか。……マスコミが情報を誇張するのは望ましくありませんが。それは、どんな人でしょう?」

「周囲を伺って、張り込んで、あんぱんを食べてるような」

「!?」


 ファルがウェインに、こっそり聞いてくる。

「うぇいに。それって……大麻とかシャブが買えなかった系の? 貧乏な人?」

「いやファル……『あんぱん』は隠語じゃない。健全なあんぱんだ」

「こしあん? つぶあん?」

「知らん」


 ウェインは人差し指を立てる。

「一連の流れとしての物語は、こうです。剣術指南の娘で、優秀な騎士フェイ。彼女の『ボーパルバニー』の威力は強大で、騎士アヤナを含むウェイン隊二人を同時に相手をして圧倒、勝利した……と」

 アルテナ大尉はうんうんと肯く。

「確かに。それは完全な嘘では、ないですね」

「はい。そこで、です。そこでウェイン・ロイスは『ボーパルバニー』を使うフェイと戦って……彼女を倒した」

「ええ」

「そんなウェインの手元に、伝説の武器『ボーパルマニューバー』が渡り、彼の戦闘力は飛躍的に高まった」

「……。『伝説の武器』?」

「そうです。そして騎士フェイの怪我は『白い女神』によって即座に回復し、騎士フェイは感動して、以降ウェイン隊に随伴することになる……と」

 アルテナ大尉は少し考え込む。

「まあ……。全部が全部、嘘ではないでしょうけど。でもその……多目的装置がついている『ボーパルマニューバー』。それは私たちが見た限りでも、それほど強くはなく……。いえそれどころか……。ともあれ、それが伝説の武器なんて聞いたことないですし」

 ウェインは少し笑う。

「それは多分、誰も聞いたことない『伝説』なのでしょう。物語は後からテキトーにくっつければいい。例のその、あんぱんの人なら何か書いてくれそうだし」

「はい、それならば」

 ウェインは少し大きく肯いた。

「さて。すると世界でこの『ボーパルマニューバー』の秘密を知っている人間。それは今現在、もとのウェイン隊に、ファル、フェイ。エミア少尉、ミュール中尉……そしてアルテナ大尉しかいません。いや、後は造ったジャンとかロウとか。ともあれ『ボーパルマニューバー』の『コレ』、そして『色々なもの』を知っているのは、全世界でこの人数だけなんです。ちょっと大袈裟ですが、今の時点では確かなことです」

「……」

「『ボーパルマニューバー』から撃ち出されるのが、初級魔法か、上級魔法か。これは他の人は誰も何も知らない。撃ち出される魔法弾がヴァリアブル・スピード……可変速型の魔法弾なのか、どうか。速いか遅いか……これも誰にもわからない。ここにいる皆さん方とて話では知っていても、しかし実戦で使われたのは見たことがない。だから誰にも、まだ何も分からない」


 周囲が、少し引き締まった雰囲気になる。


 確かにジャンから届いた『ボーパルマニューバー』は、そこまでたいした物ではない。フェイの持ってる『ボーパルバニー』と比べるのも、おこがましい。

 しかしそれは身内だからこそ言えるのであって、同じ『ボーパル』とついていて更には軍隊の元で公式に『ボーパルバニー』とやりあった……それは外から見れば気味が悪い。

 そして……ウェインは、この手の『ブラフ』やら『細かな変化』を使うことにも長けている。

 さらに。バレればバレたで、別に不利になるわけでもない。マイナスイオンがどうこう言ってたと、嘲笑られる程度だろう。それで『弱点』も浮かび上がるかもしれないが。

 しかも法律に抵触してるわけでもなし。

 とりあえず『隠しておく』というメリットはある。

 そしてウェインの今までのショートソードの長さと比べて、それはロングソードの長さで。見た目はいかにも新武装だ。

 ウェインくらいの、身長が平均程度の人間も多くがロングソードも用いる。外見的にも目立たず、全く問題はなかった。

 そこでディアが声を上げる。

「ウェイン。そんな『伝説』まで作ってそれをどうするのさ?」

「当面の仮想敵は、ブレーナー、アイカ、そして何よりファントムだ。そいつらがこの話を聞いたら一応の抑止力にはなる。この『伝説』はハッタリにもなるだろう。伝説の武器がウェインの手中にある……それなりには良い話だ」

「ふーん?」


「後は少し……まあ、秘密の方がいいか」


「へぇ……」

「うん。ま、ユニバーサル規格には適合してないっぽいけどな。こんなモード切り替えがあって複雑でピーキーなものなんて区分できんでしょ」

 アヤナが小首を傾げる。

「ウチの倉庫には規格をクリアしてない優秀な武具も多いけれど、それはどういう形なのかしら? 同じような意味?」

「んー。そうだな。単純に『出回ってるかどうか』みたいなものだけど。何かの『区分』として。でも何というか……例えば、さ」

 ウェインは人差し指を立てた。

「皆がどう思ってるかはわからないが。俺は装備の、大抵の数字には興味が無い……ここらへんは色んな人間の自由だと思う。好きにすればいい。でも、絶対に押さえておかねばならないところがある」

「ウェインさん、どんなのです?」

 モニカが瞳を向けてくる。ウェインは続けた。

「例えばユニバーサル規格の武具は、色々な材質や数字で区別されていると思う。鉄だとか銅だとか。あるいは材質で判断して、各自で色々調べて判断してると思う。タニア、そういう数値なんかに目を通したことは?」

「えっ。えっと。さらっと」

「なら、例えば鉄製の武具なら。鉄の融点とか沸点とか書いてあったはずだけど」

「う、ぅおぅ」

「それも正確な数字は別にいい。鉄の融点は1500度くらいとか沸点は3000度いかないくらいどか、細かいところも別にどうでもいい。対人戦闘で鉄を溶かしたり頑張るのは誰もしないと思う。そんな火力は出ないしさ」

 そこでエルが愛くるしい瞳を向けてくる。

 ウェインは続けた。

「ただ鉄の剣を、例えば段々に加熱していって……柔らかくなる温度、と言うのはやはりどこかにある。そこは『なんとなく』程度の感覚でも頭に浮かべておくと良いと言うか、剣士なら真っ先にそういうイメージがあっても良い気がする」

 皆、あまり何も言わないし。むしろ興味があるようだ。ウェインは続けた。

「例えば鉄のアーマーがあるとして。そのアーマーの厚さはどれだけあるか。そしてファイアーボールを打ち込まれた場合、熱はどれだけ身体に伝わるか。インナーを含めて、何度までなら耐えられるか。逆算して、どれだけの威力のファイアボールになら正面から突っ込んでいけるか。鉄の鎧は耐えても、中身は耐えられない。そしてファイアボールに速度と質量があるのだから、こちらもどの速度、どういう角度なら突っ込めるか」

 やはり、誰も何も言わずに興味津々のようだ。思えば魔法使いなんて人種は、そもそも鉄の剣やら鎧などに興味がない……あるいはその知識がない人間がほとんどだ。ウェインはさらに続ける。

「そこらへんはタニアとかレーンとかは経験でやってるはず。そして魔法使い側はそこらへんを考えて、相手がどう動いてくるか……初手に強いのを出すか、最初に軽めに撃った後に後ろに下がり、二撃目に強いのを撃つか。相手が多い時、味方が多い時……色々あると思う。そういうのに『対応』していくのは、それぞれ能力や場数が必要だと思うが。でもこの『ボーパルマニューバー』は色々と便利に使えそうだ」


 少しの静寂の後。モニカが全員に言う。

「皆さん。言っておきますが、そもそも普通の魔法使いって、そんな柔軟にはできないんですよ。ファイヤーボールを放つにしても、そこまで威力や速度の調整は出来ない。そんな集団戦の訓練も受けてないですし、そもそも戦いそのものが管轄外ですから」

 するとそこでエルが、声を出した。

「でも不思議なの。そういう『細かい対応』……ができるのが『ボーパルマニューバー』のウリなわけよね? ジャンさんはそれをウェイン専用にチューニングした、って……」

「そうですね、エルさん。そうみたいですけど?」

「モニカちゃん。それならウェインには、一番に不必要ではないかと思うの。だってウェインなら、そう言う……正面火力じゃないところを制御できるんだもの。例えば魔法の発射速度を可変式にするアイデア『V.S.B.R.』。……『可変速』。それは確かに技術的には画期的だけど、あまり実用性がないからと手を出す人間は少なかった。ウェインはそれを『チェンジアップ』として、高い威力、精密さ、無段階変化……それらを高い次元に纏めているから実用的なだけであって。そういうレベルじゃないものは、あまり使い物にはならない気がする」

 アヤナがのんびりした感じで言う。

「攻撃手段が少ないエルとか、魔力が高いモニカが使った方が、何かと便利なんじゃないかしら?」

 ウェインは軽く笑った。

「いや、やっぱりジャンがチョイスしてくれただけある。俺が使うのが最も有効だと思う。エルは護身用に単発の『リベレーター』を貰っただろ? 護身用ならアレでいいし。どちらにせよエルとモニカは近接戦闘をしない。その場合はこの『ボーパルマニューバー』は大して役に立たない」

「ふーん」




 そこで。ディアが笑顔で、グッと拳を握った。

「でもでも。それにさ。マイナスイオンの力で、光るし!」

 ウェインも同じように(彼にしては珍しく)嬉しそうに拳を握る。

「史上初かもしれないよな、マイナスイオンで光る武器!」

 嬉しそうに互いの顔を見合わせて興奮している、ウェインとディア。


 その雰囲気には、あまり乗れない、他の人たち。




 しかしエルは、それでもやはり、ポツリと呟いていた。

「んー。マイナスイオンって、やっぱり光るのかなぁ……」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ