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ウェイン・アポカリプス  作者: 佐々木 英治
ウェイン・アポカリプス
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優秀な後衛

 再びレーンが言った。

「この5人で組む時は、暫定でこうする。まずリーダーは俺。但しウェインが経験を積んでできるようになったらウェインがリーダーな。そして前衛とスカウトとしてディアと俺。後衛は3人、ウェインとエルとアヤナ。そのうちウェインには少し上がってもらう。前衛が少ないから近いところから援護が必要だ。あとエルは白兵戦が駄目だから、一人にさせるな。基本はアヤナが見てくれ。アヤナなら魔法もオールマイティに使えるだろう」


 基本方針が決まって、次は魔法学院の仕事や勉学の話だ。まずはウェイン。

「俺が今学期が終われば、フリーの研究員の立場になれる。煩わしい仕事も減るぞ」

 続いてアヤナ。

「私は今もウェインの弟子として学院に籍を置いているだけだもの。定期的に学院に報告するだけで、こっちの仕事に支障はないわ」

 最後にエル。

「私は今学期末で卒業よ。卒業論文はもう提出したし、後は教員免許の関係で暇がなかっただけ。免許の方も学期末で取れるから暇になるわ。まだ就職活動してないけど……」

 まあエルほどの力があれば、どこの医療班でも、武器屋でも道具屋でも工場でも、マジックアイテムの付与要員として仕事に困ることはないだろう。


 ディアがちょっと笑顔だ(彼女はだいたいいつも笑顔だが)。

「そーだ、念のため私たちの仕事のことも話しておくね。私は今、ラクスの町工場で一日4時間をベースに魔力供給の仕事をしてる。暇な時は残業でプラス2時間働くこともあるけど、まあそんな感じよ。空いた時間で訓練。で、レーンは完全にフリー」

 そのレーンが言った。

「なんかディアに食わしてもらってるヒモのような気もするが……情報収集したり、町道場で剣や体術の修行をしている。特に俺は戦い方がフィジカル頼みの傾向があるからな。剣術なんかの技術は伸び代がある」

 どうやら皆、時間は空いているようだ。生活費も短いアルバイトをすれば問題ないし、長い間ラクスを離れなければ大丈夫な環境が整っていた。


 そういったことを確認しあい、そろそろ解散して就寝というところで、レーンがディアを呼び止めた。

「すまん、ディアだけ残ってくれ。少し話がある」

「ん? わかったわ」

 ウェインは自分の顔を指差した。

「あれ? 俺どっか行ったほうがいい?」

「いや、ウェインもいてくれ。三人で話がしたい」

 そういうわけで、男部屋にはレーンとディア、ウェインの三人が残った。レーンが口を開く。

「さて。ウェイン。まず俺たちがこの国に来た理由は、優秀な後衛が探せるかもという期待だったんだが、これは完全にうまくいった。まずウェイン・ロイス。黒魔法の威力、精度、バリエーション、体術、どれも理想以上だ」

「へへ。どうも」

「次に、今日認識を改めたんだが……エリストア・クリフォード。彼女の白魔法に驚いた。威力、射程、精度……申し分ない。当初、白魔法は軽視していた。怪我しなきゃいいと。だが体力回復の魔法を受けて、考えをかなり改めた。エルがいれば、俺は最初から全力で戦うこともできる。戦いの引き出しが増えたんだ」

「それは普段は全力で戦ってないってことか?」

「それに近いな。武器を持って走り回るんだ、俺が全力近くで戦えるのは1分から1分半くらいのものだろう。100mの全力疾走を想像してくれ。ほんの10秒で限界だ」

 そんなものなのか、と思った。確かにウェインも全力で長くは戦えない。スポーツ柔道でも飛ばせば2分経たないうちにヘバる。これは自分の体力のなさから来てるのかと思ったが……このフィジカルモンスターが言うのだ、嘘ではないだろう。

「だからウェイン。俺は、普段は8割、9割の力で戦っている。それならば5分、10分と長く戦うことができるから。ただエルの回復魔法を途中で受ければ、全力、あるいはほぼ全力の力で、もっと長く戦うこともできる……怪我した時の治療のことも考えると、そうそう多くは使えないだろうけど」

 ウェインは肯いた。

「なんにせよ、エルの能力を買ってるってことだな?」

「そうだ」

「むしろ俺達魔法使いたちのほうが、エルみたいなのを軽視しているかもしれない。だいたいは動き回らないし」

「なるほど。で、アヤナだが……正直、まだ普通の魔法使いにしか見えない。今は高く評価してないが、何せウェインの弟子だし、あれだけ動けて白兵戦ができて、黒魔法も白魔法も扱えるってことは貴重だ」

 ディアはふにゃっとする。

「将来性はあるってことかー」

「ああ。フェンシングも少しできたそうだし。だが体力面で言えば、問題はエルだ。彼女は運動全般が苦手。まあ魔法使いにしては珍しくもないが、この5人でチームを組むと最大の弱点はエルの白兵戦だ。彼女らに『瞬活』も教えようと思うが、乱戦になったら敵の迎撃が難しい」

「あぁ、だから帰ったら特訓するなんて言ったのね」

「そうだ。彼女の体力からして、アーマーを着けると行軍に支障が出る。だから身軽なままにする。後は特訓で、少しの間走り続ける体力と、多少の逃げ足を鍛えるつもり」

「そうね、それで生存性が上がると思う」

「後はチームだが……これ以上、つまり6人目以降の仲間を増やすかどうか。まあこれは柔軟に行こうと思うが、ウェインはどうだ?」


 6人目と聞いて、求める人材と完全に逆ではあるがモニカの姿がチラついた。

「うーん。増えすぎて連携できなくてもマズイが。ただ困ってるところは、前衛に重戦士がいないことだろう。弱点の一つだ。レーンが前衛でディアがフォローに入ると、もう人数がいない。レーンだって本来は機動力を使って駆け回るほうが向いているだろう? だから、できれば金属鎧と楯を持った重戦士が欲しいところだが……」

「そうだな。課題の一つとして考えておこう。当面は俺とディアが前衛でウェインがフォローに入る布陣になる。アヤナの白兵能力じゃ、まだ怖いから」

 アヤナの白兵戦は、まだ圧倒的に実戦経験が足りない。筋肉も体力もウェインほど高くはない。だが仮にも『フェンシング』で推薦された王国騎士である。それなりの腕はある。以前、フェンシングの大会でウェインはアヤナに負けたこともあったほど。


 だからアヤナは今後に期待。もともとがユーティリティ、あるいはオールラウンダー。尖ったところはないが、それは、どこでもある程度できると言うことだ。


 なんだか今の時点では想像がつかないけれど。




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